第55話 ミリアとカリナの日々。part.4

 大通りは夜道といえど、店の明かりによって視界がとれるようです。

私(ミリア)はカリナさんを探して、賑わう通りへと来たのですが……。

ママとパパに、後でなんて謝まればいいのでしょうか?

勢いで出たのはいいものの、あんな啖呵を切ってしまうとは自分でも不覚でした。


「お、そこにいるのは微笑みの女神ミリアちゃんじゃ〜ん。

かわいいのに、そんな落ち込んだ顔してどうしたの?」


 あー、ブルーな気分の時にナンパされてしまいました。

はぁ、カリナさんを探さなきゃ行けないというのにどうすればよいのでしょうか?


「ねぇねぇ、そんな悲しい顔しているならさ俺の家来ない? きっと楽しいよぅ?」


 今はシュンさんが助けてくれないんだ。

ここは大通りだし、自分で解決しなきゃいけないんですよね。


「あの、私は今忙しいので邪魔しないでください! これ以上絡んでくるようなら、大声出しますよ?」


「ちぇっ厳しいなぁ。

あーあ、どこが微笑みの女神だよったく」


 そう愚痴を漏らしながらも、男は去って行きました。

やった!

自分だけで男の人を断ることができました。

私も成長しているんですよだから!

さ、彼女の捜索を続けなきゃ。


◆◇◆◇◆


賑わう通りから少し外れ、住宅の小さな窓からポツポツと漏れる光のみが当たりを視認させていた。

ここは、来たことがないです。

更に進むと、何かに躓いた。


「すいません。見えなくてつい」


 そう謝ると、うずくまる子どもの姿がありました。

見たところ、衣服も汚れていて迷子になったのかも知れません。


「大丈夫ですか? お家がわからなくなったのですか?」


 そう聞くと、子どもはこちらを見ようとはしませんが、首を横にふった。


「お姉ちゃん、ご飯くれない?」


 この子もしかして......。

どうしましょう、持ち合わせもないし。


「これをどうぞ? 少ないですが」


 私は食べ物が買える額のお金を彼の手前の地面に置いた。

すると、彼はすぐにそのお金を掴みとり逃げ出しました。

正直、始めて実体を知りました。

この国は貧富の格差が開いていると聞いていましたが、まさかあんな小さな子どもが苦しんでいるなんて。


「お姉ちゃん、俺にもちょうだい」


「私もお願い! 妹がお腹空いているの」


 心の中で嘆いていると、月を遮る雲が消えて月光が強くなりました。

それにより、辺りが明るくなると奥に何人もの浮浪児がいました。

彼らは、藁にもすがる思いで私に近づいてきます。


「ちょっと待って、今これしかないの。てっきゃあ、服とらないで」


 数分後、私は彼らに洋服を剝ぎ取られて下着のみにされてしまった。

うぅ、寒いしカリナさんも見つからないしどうすれば。

途方に暮れて立ち尽くしていると、背中にちくりと小さな痛みが走る。

振り返ると、男の人がナイフを持って私の口を塞いだ。


「へへっ、そんな恰好して誘ってんだろ。ひっく」


 笑みを浮かべる男は、酒臭い息を吹きかけながらそう話かけてきた。

どうしましょう、人気がないこんな場所じゃ大声出しても。


「いい胸してんじゃねえか変態女! どれどれ、下の方も」


 うぅ、助けて誰か......。

あぁ、やっぱり私って1人じゃ何もできないのかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る