第24話 カリナ、後始末を行う。視点、カリナ
私は、ギルド制度を構築したイヴァンという貴族に飼われる奴隷だ。
主人の命により、シュンとシュエリーの冒険者2名の監視任務に当たっている。
「じゃあカリナさん、またお願いね」
そう私に挨拶するのは、シュエリーと呼ばれる金髪の少女。
私より2つほど歳が離れているが、大人びた立ち振る舞いだ。
もう1人の細身の方は、シュンと呼ばれる冒険者。
勇者パーティーにいた時は雑用係だったと聞いたが、スマインを倒すほどの実力があるというのは事実のようだ。
数々の敵を葬ってきた私だが、あのような威力の魔法は身に覚えがない。
「では、お気をつけて」
私が深く挨拶をして少し後、2人は山道を下って行った。
後を追うため、本当の引き渡し人に合図を送る。
「待てカリナ! イヴァン様からの命だ」
木に登った私にイヴァンの使者が声をかける。
「かしこまりました」
使者が2人の居場所を後から教えるとのこと。
私は先に後始末をするように命じられた。
屋敷に入り、手足を拘束された盗賊たちを確認した。
主人の命は、アシアの抹殺だ。
私は小刀を抜き、彼らに迫った。
「おい待て! ふざけるな! 俺は好き放題やっていいってイヴァンに言われたからしてたのに。
なんで、なんで殺られなきゃいけねんだよ!」
そう、アシアはイヴァンに命じられ貴族権威を維持するために略奪行為を許可されていたのだ。
民や村人冒険者だけで脅威に立ち向かえない。
貴族の助けがなければ国は守れない。
そう信じ込ませ、上位貴族たちは自らの豊かな暮らしを守っている。
だが私には関係がないことだ。
私はもう、仲間も家族もいない。
こいつの命乞いなど、聞く道理もまったくない。
「く、くるな! 気色悪い耳しやがって、テメェみたいな奴にやられてたまるか!」
アシアは手下の1人を自身に被せ、身を守ろうとした。
それでも私は淡々と歩を進める。
「どけ、お前らは殺せとは言われてない。
そいつを差し出せば手を出さない」
淡々とそして冷静に脅す私を見て、手下たちはアシアから離れた。
所詮は烏合の衆か。
仲間でも家族でもない。
ただ、汚い欲を満たすために寄せ集まった集団。
アシアが再び口を開き、何か発しようとしたが聞き取れなった。
話す前に私が彼の首を刎ねたからだ。
まぁ、聞く気もないのだが。
「後任にスマインという者を派遣する。
貴様らは場所を変えて賊を続けるがいい」
私は小刀に付着した返り血を拭い、その場を後にした。
彼らの目には私はどう映っただろう。
きっと、耳長の化け物だろうな。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
監視任務が始まって唯一の癒しである入浴が出来ていない。
どうせあの2人も始末しろと言われるのだから、早く終えて湯に浸かりたい。
この血の匂いがとれるのも、今回はいつになるのやら。
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