魔力量最強のMP回復係が勇者パーティーを追放されたが、実は最強すぎて魔法を発動させると地球がぶっ壊れる【累計30000pv•200フォロワー達成!】
第23話 シュン、シュエリーの鬼畜さにドン引きする。視点、シュン
第23話 シュン、シュエリーの鬼畜さにドン引きする。視点、シュン
俺はシュエリーさんに言われるがまま、魔法を発動させた。
屋敷の天井をくり抜いて見せると、盗賊の手下たちの足が止まる。
どうやら、彼女の作戦は効果があったようだ。
「やーやー悪党ども、控えろ! このお方をどなたと心得ているのかしらぁ!」
彼女は杖を振り回しながら、足を止めた盗賊たちに声を張り上げる。
どうやらまた、彼女の寸劇に付き合わされる雰囲気。
「お頭! あいつ、とんでもない威力の魔法を...勝てっこないっすよ」
手下の誰かがそういうと、アシアはその1人を睨みつける。
「お前ら、頭使えや! こいつがそんな強いなら何故この女に戦わせた」
「な、なるほど! ハッタリなんすね」
息を吹き返したように、盗賊たちはゆっくりと近寄ってくる。
おいどうするんだよシュエリーさん、やっぱりバレてるじゃないか。
俺は目を泳がせながら彼女の方へ顔を向ける。
「まだまだ奥の手! とりゃあ」
「うわぁ、シュエリーさんのスケベ! なにすんだよ」
俺はシュエリーに風の魔法で無理矢理上着を破られ、上半身を半裸にされた。
恥ずかしくて思わず2つの点を手で塞いでいると、周囲の盗賊は再び足を止めた。
俺の裸を見てなんで止まるんだ?
「こ、こいつ背中になんて深い爪痕」
爪痕? そんな怪我した覚えが......て、なんだこれ?
背中を見ると本当にモンスターに負わされたような深い傷跡がある。
しかし、それがすぐに裏に糊(のり)の付いたリアルな絵だと俺はわかった。
接近すれば偽物とわかるが、遠目では見間違うのも無理はない。
「この傷はなんと! お師匠がドラゴンと戦い、勝った証なのです! 火を吹き、空を飛翔するドラゴンをお師匠様は先ほどの正式名称、ウルトラ最強ハイパーウルトラウルトラバスターでね!」
シュエリーさんは決め顔と共に、人差し指を盗賊たちに指した。
「頭! あいつのウルトラウルトラウルトラなんちゃらヤバイっすよ! あの魔法の威力に背中の傷! 本当にやつと戦って大丈夫なんすか!」
アシアも流石に気圧されたのか、膝を着く。
「だがぁ、俺の頭を見られた以上このまま引き下がるわけにはぁ」
その様子を見たシュエリーさんは「あと一押しね」と、言わんばかりにいつもの不気味な笑みをしながら口を開いた。
「その件なら問題ないわ。
あなた達がちゃんとお縄に縛られたら、お師匠様の力で髪の毛を増やしてあげましょう。どう? 悪い話じゃないでしょ?」
そういうとシュエリーさんは残ったリンゴの芯をアシアに投げ捨てる。
アシアは自分に跳ね返ってきた皮肉な言動への屈辱感を数十秒かけて押し殺すと、鋭い目でこちらを見る。
「ほ、本当だろうな?」
もちろん俺にはそんな能力はないのだけれど、彼女の目配せから「空気読めよな?」という心の声が聞こえてきた。
「あぁ、弟子が悪いことをしたお詫びだ。
君の髪の毛を元に戻してあげよう」
そういうとシュエリーさんは駆け寄り、俺の腕にくっついた。
「流石師匠! お優しいですわ。
さぁ盗賊さんたち! 師匠の慈悲が消えないうちに早く、自分たちでお縄につきなさい!」
「くそぉ、やれ」
__数十分後__
盗賊たちは自ら縄に拘束され、芋虫状態になっていた。
「さぁ、髪の毛を元に戻せ!」
アシアは俺に怒号を浴びせる。
もじもじしている敵の前でシュエリーさんは腰を下ろし、中指を立てた。
「お・ば・か・さ・ん! 髪なんて増やせるわけないじゃない! やーい引っかかってやんの~べろべろばぁ!」
うわ、性格悪っ!
と口から思わず漏れそうになったが、手で口を塞いでなんとかそれを防いだ。
「くそぉ! ふざけんなクソ女! 縄を解けぇ!」
「シュン、あれやっちゃって」
シュエリーさんは髪を耳にかけ、そう言い放つ。
またしても敵ながら同情せざるを得ないぜ。
すまんなアシアよ、俺は髪なくてもイケてると思うぜ。
そう心で話しかけ、盗賊たちを気絶させた。
「ふぅ、終わったよシュエリーさん」
俺がそういうと、彼女は両腕を上に伸ばした。
大きく息を吐き、目を輝かせてこちらを見つめてきた。
なんだあの笑顔は?
いつもの邪気がある顔ではない、けどなんかこっちに迫ってきてやっぱ怖いな。
後ずさる俺をシュエリーさんは徐々に駆け足で追ってくる。
「シュエリーさんやめて! 俺にも何かする気なのか!」
目を閉じると女の子の甘い匂いが鼻腔を通る。
身体を柔らかく、温かさを感じさせる何かが覆いかぶさった。
目を開くとシュエリーさんが華奢な身体で抱き着いていた。
「え、何! 怖い!」
俺は恥ずかしさといつもの彼女の性格を考え、思わずそう口にした。
すると、胸のあたりから見上げる小さな顔はムスっと頬を膨らませていた。
「はぁ、初クエスト達成よ! なんで喜ばないの馬鹿!」
「いや、あんな悪逆非道なことした人が抱き着いてきたら誰だって......」
「ふん、もう知らない! 帰るわよ!」
シュエリーさんは抱き着いたかと思えば、俺の身体を軽く押し飛ばした。
そしてくいっと身体を反転させ、そのまま屋敷の入り口へ歩き始めた。
「待ってよ! こいつらどうすんの!」
「もうカリナさん呼んどいたから大丈夫よ!」
こうして俺たちのパーティー初クエストは見事達成したのであった。
何故アシアが貴族の剣術をマスターしていたのか、と気がかりは残る。
しかし、後の始末はギルドがやるから俺たちの出る幕ではない。
はぁ。
役に立たず邪魔になるんじゃないかと懸念していたが、少しは役に立ったのかな。
本当は抱き着かれた時、褒められたみたいで若干嬉しかったのだが、言ったらまたシュエリーさんになんかやられる気がするから黙っておこう。
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