第22話
夢の中にいた。
もうね、3回目だから驚くこともな…ってなんでケイトと龍人もいるの!?
しかも私の姿はアリエッティじゃなくて普段の私のだ。
アリエッティが私の手をぎゅっと握った。
「私、あなたみたいに自由に生きていこうと思うわ」
急にどうしたの?
私そんなに自由だったかな?
「私がしてしまったことが変わることはないし、私はそれを背負って生きていかなきゃいけない。だけど、だからこそプライドとか捨てて好きにいてもいいと思ったの。彼とならね」
アリエッティがケイトに微笑みかけた。可愛い。
「俺はアリエッティに出会って、本当に愛しい人と過ごすことの喜びを知った。これからは2人で生きていく。全て君たちのおかげだ。ありがとう」
ケイトがお辞儀をした。
「今まで本当にありがとうね」
なんでそんなお別れの挨拶みたいな…
「もう俺たちがこっちに来れないってことか」
本当にそんな日が来ちゃったんだ…
すると、空間がボロボロと崩れだした。
「そろそろ時間だわ」
龍人が私の手を両手で包んだ。
「出会えてよかった」
「うん」
「一緒にいれて嬉しかったよ」
別れるなんて受け止めたくなかった。
「私の事わかる?」
わざと笑っておちゃらける。
「見た目違うからびっくりするでしょ」
「なんで?だって見た目がどうだろうと君は君でしょ?」
拍子抜けしてちょっと泣きそうになる。
私の満たされなかった部分が一瞬で埋められた。
この人何回私の事幸せにしたら気が済むんだろ。
「私ね、なんかまた会える気がする」
コンサートとかそういうのじゃなくて、不確かだけど強くそんな気がする。
「俺もそう思う。絶対会おう!約束」
差し出された小指と私の小指を絡ませた。
空間がどんどん崩れる。
「私を見つけてくれてありがとう!」
離れて行く彼に向かってそう叫んだ。
*
キーンコーンカーンコーン
休み時間を告げるチャイムと同時に机に突っ伏した。
眠い…眠すぎる…
でも寝れなかった。
授業中は眠くてたまらないのに休み時間になるとそこまで眠くなくなるのなんなんだろう。
そういえば最近夢見てないなぁ。
いや、見たような気もする。どんなだっけ…?
思い出そうとすればするほど、どんどん何もわからなくなっていく。
やっぱり見てないか。夢に龍人が出てきたらいいのにな。
龍人…なんか情報出てるかな。
スマホでSNSをチェックする。
特に何も無いなぁ…
そのままフォロワーの投稿を流し見して閉じた。
最近なにかが物足りない気がする。毎日変わらずオタ活してて幸せなんだけど、そうじゃなくて、なんかもっとこうダイナミックな肌で感じる何かが足りない…
なんだろ、恋人?
彼氏か…
でも龍人以外の男に興味が持てない。そもそも私がモテない。
仕方ない。勉強しよ。
自分の中のモヤモヤとした気持ちを抑えるように参考書を開いた。
「ねぇねぇ、あのゲームもうクリアした?」
隣の席でゲーム好きな女子のグループが乙女ゲームの話で盛り上がっている。
いやいや今日テスト前日ですけど?
と思いつつ、多分私はテスト前日でも龍人がテレビに出てたら見るし、話せる機会があるならも当日の直前だろうが気にせず興奮して話しかねないのですぐに心の中で撤回した。好きな事について話せるって楽しいよね。オタクって本当に楽しい!
などと化粧品のCMみたいなことを考えていたら、彼女達が話してるゲームの話が耳に飛び込んできた。それはシリーズ物で、舞台は前作の隣国セシーランドらしい。
本当は目の前の勉強に集中しなければいけないのに、そうしたいのに、なぜかそのゲームの話から耳が離せなかった。
前作で国外追放となってしまった悪役令嬢も出てくるそうで、彼女がその国の第5王子と結婚して改心しているのが凄いことなのかとても盛りあがっていた。
主人公達の話は全く分からなかったのに、何故だかその2人の話を聞いた時、そのゲームを知っているような、凄く身近なものに感じる。
今はゲームなんてやってる場合じゃないし、乙女ゲーム自体に興味は無いのに、その時だけはなんだか強く惹かれてしまった。
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