第18話
いきなり話しかけてきた上にケイトのことしか見ていないこのすっごい身支度に時間かけてそうなお方は誰?
「あぁ、うん…久しぶり…?」
「ケイト様も来ていらしてただなんてぇ〜まるで運命のようですわね!」
「いや、ただの偶然だと思うけど…」
さっきまであんなにニコニコしていたケイトが、女の人に話しかけられた瞬間めちゃめちゃぎこちない反応をしている!
「アリエッティさん、こんにちわぁ。ケイトの元カノのアンナで~す」
「え!いや、ちょ、ちが」
あぁ、なるほどね…
「ちょっとお茶取ってくるね!」
思わず走って外に出た。
別に嫌なわけじゃないし、不安とかそういうのじゃないもん…
そりゃあケイトのことだから元カノの一人二人三人それ以上いたくらい別にどうってことないし…
けど、けど…
はぁ、私なにやってるんだろ。別にそのまま気にせずあの場所にいればよかったのに。あーあ…
気づくとさっきいたお城から離れて比較的人もまばらな庭の方に来ていた。
お茶を取ってくると言った以上はどこかでお茶を貰わないといけないわけだけど、ここに飲み物は置いて無いだろうから戻らなきゃ…
「きゃあ!蜂!」
蜂!?
びっくりして周りを見渡したが蜂はいなかった。
声が聞こえたの遠くからだったしいないみたい。良かっ…
ブーン…!
って、蜂の大群が私に向かってきてるんですけど!?
助けてー!!
思わず走り出して逃げたけど、ここどこ?
もう疲れちゃった…
ああ、今日は全然ツイてない…
蜂って刺されたら痛いのかな。痛いの嫌だな。あんまり腫れないといいな…
その時、目線の先に建物の扉が見えた。
そこだ!
急いで駆け込むと、そこはバーのような場所だった。多くの人がお酒を飲んでいる。
こんな場所、式会場にあったっけ?でも丁度良かった。もう汗ダラダラで喉カラカラだからお茶貰お…
「すみません。お茶下さい」
「どうぞ」
バーテンダーがお茶を出してくれた。
令嬢としてはちょっとはしたないけど暑いし良いよね…
腰に手を当て上を向いてお茶をガブガブ飲んだ。
空になったグラスを机に置いた瞬間、目の前がグラっとした。
あれ、何これ貧血?
「大丈夫かい?外に涼みに行こう」
知らない男性が私の腕を掴む。その手を振り払いたいのに、力が出なくてどんどん感覚が無くなっていく。
「いい場所があるんだ」
穏やかじゃないと思いながらも、意識を手放した。
*
「きて…起きて…起きて」
まだちょっと寝かせて…
「起きろ!」
はいっ!なんでしょう!
起きるとそこはまた夢の世界だった。
「良かった、やっと起きた」
ああ、おはようございますアリエッティさん…
「朝じゃないわよ。お月様が煌々と夜道を照らす真っ暗な夜よ」
あ、そうなの?ここ最近はいつも朝に起きてるからなあ。
「…。」
なぜか何も言わず私のことをじっと見つめている。
「はあ…」
なんでそんな「やれやれ」みたいな感じで頭を抱えているんですか!?
「この前言おうとしたこと。残念だけど、そろそろあなたがこっちの世界にいられなくなると思うの」
え…?
じゃあもう私ここの世界でケイトと過ごせないの?お別れ…?
「本当は好きなだけ悲しんで欲しいんだけど、同じくらいもう1つの方の要件も重大なのよ」
これと同じくらい重大って?
「私達、誘拐されたの」
えっ誘拐!?
「今あなたは干し草を詰んだ馬車の中に乗せられてるわ。でもおかしいのよね、身代金がかかった大切な人質を干し草の中にぶち込むなんてありえないし、移動しなくてもお金さえ要求すれば、シャルル家なら飛んでくるはずだから…」
確かにあの家なら大騒ぎしながら大金準備して助けに来てくれそう…
「移動距離から考えて国境の近くまで来てるとなると、これは令嬢を狙った身代金当ての誘拐じゃないのかもしれないわ」
凄い…どこぞの名探偵並みの推理力。
「一応妃教育はみっちり受けてたから近隣諸国の地形図から緊急事態の対処法まで把握してるつもりよ」
自慢げに言うアリエッティさん可愛い。
「でも、身代金目当てじゃないとしたら逆にまずいわね」
真面目な顔のアリエッティさんにつられて緊迫した気分になる。
「身代金目当てならある意味商品みたいなものだから安全も確保されるし、お金さえ渡れば元の場所に帰れる可能性が高い。でも、そうじゃない場合。という多分そうだけど、このままだと最悪手荒な真似をされた上に人身売買される」
どうしよ、本当に大変な事になった…
「1人じゃないんだから安心しなさい。私がいるでしょ?2人いれば何とかできるはずよ」
アリエッティさん…
「なんとかこの状況を脱出してケイトに抱き締めて貰わなきゃね!」
うん、そうだね!
ケイトに会えないままこの世界とさよならなんて絶対嫌だ!
「じゃあ作戦を考えましょ。まず…」
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