第17話

こちらでの成人式は、夜通し踊ったりしながら成人してない人も含めて数日間みんなでドンチャン騒ぎしながら祝う一種のお祭りみたいなものらしい。成人式に向かうタクシーの窓から見える市民の様子は、狂喜乱舞と言っても過言ではなかった。みんなお酒を飲み、そして酔っ払い、すでに完成されていた。




お酒って怖い…


元々飲むつもりはなかったけど、式会場で絶対お酒飲まないようにしよ。




この国では、平民も貴族も関係なく成人した人はお城に招かれて、本人に加えて婚約者などパートナーも一緒にパーティーする。


つまり、この国で成人した人とパートナーが一緒に入れるだけの広さがお城にあるという訳で…


外観しか見たこと無いけどそんな広さ、お城にあるの?


と、少し疑問を抱きつつお城に行きました。




ありました。




すっっっっっごく広い!


まず庭がだだっ広い。そしてお城が大きい。シャルル家よりも全然大きい。東京ドームも普通に超えている広さ。


そしてライブ終わりに一気に会場外に出たオタク並みの人の多さ。


庭のあっちでは踊る人、こっちでは楽器で音楽を奏でる人、向こうでは気持ちよさそうに歌う人、飲み物を飲む人、食べる人、堂々とイチャイチャする人、人、人、人。




広間も凄かった。天井にまで施された細かい装飾はとても綺麗で、ずっと見ていられる。


というか天井しか見れない。


人が多すぎるから!




ギリギリ見えるのは広間の奥にある高い場所。そこに座っているのは綺麗な女性と、貫禄と威厳があって少し怖そうな男性の男女2人。次々と来る上流階級の人たちと挨拶してる。




「あれが僕の両親だよ」




つまり国王陛下と女王陛下!


国王はああいう手紙を書く人だからもっとフレンドリーな人なのかと思ったけど意外と国王らしい雰囲気なんだね。


女王の目鼻立ちがハッキリしてるのはケイトに似てる。




「僕たちも挨拶しようか」




「ちょっと待て」




中年のおじさんに止められた。


顔怖っ!目つきは刺すように鋭いし、この人マフィアの人なんじゃ…




「サイモンさん、お久しぶりです」




ケイトの知り合い?




「我が国の財務大臣のサイモンさんだよ」




彼の格好はとても立派だった。絶対マフィアではない。




「よくも我が国と言えたな。のこのこと城に帰って来やがって」




別にそこまで言わなくても…




言いすぎだと思ってつい口を開こうとした瞬間、青い髪に眼鏡をかけた若い男性が近づいてきた。




「サイモンさん、さっき誰かが向こうで呼んでましたよ」




こんなに人がいたら誰かが向こうぐらいの情報じゃ分からないのでは…?


この人も目鼻立ちがハッキリして美形だ…




「どうしたんですか早く行かないと」




怖っ!サイモンさんを見る目が氷のように冷たい…


そんな目にひるんだのか、サイモンさんは渋々人ごみの中に消えていった。




「ありがとうお兄ちゃん」




あっケイトのお兄さん!




「別に、お前のためじゃない…年寄りの説教じみた話は直接言われてなくてもうんざりする」




そう言う割にはちょっと照れてるけどツンデレか…?




「ケイトの兄のヘンリーです。うちの弟がお世話になってます」




「あ、アリエッティです。こちらこそお世話になっております」




「お兄ちゃん来てたんだね」




お兄さんに会えて嬉しいのかさっきとは打って変わってリラックスしてて可愛い。




「式で乾杯の挨拶やらされるんだよ。ったく、式典で挨拶なんて聞いてるやつ誰もいないだろ」




確かに私も学校の式典の挨拶は長すぎていつも寝てました…




「本当はこの時間も研究したかったんだが、親父の命令だから仕方ない」




研究者さんなのかな?




「彼女さんもつれてくればよかったのに」




「あんなやつ彼女じゃない」




食い気味に即答した。


ヘンリーさんの他称彼女さんってどんな人なんだろう。




「そんなことより、今混んでるから挨拶は後にした方が良いと思うぞ。ありゃ30分はかかるな」




たしかにライブ前のグッズ列並みに長蛇の列が…




「挨拶の準備があるから俺もう行くわ。まあ、一言で終わらせるつもりだから準備も何もいらないが…。じゃあ、アリエッティさん、楽しんでね」




他称彼女さんには厳しいけど、私には優しめだなぁ。なんて思いながら去るのを見ていると




「やだぁ〜!ケイト様じゃな~い!お久しぶりですわぁ!」




びっくりして見ると全身ふりふりバッチリメイクの女性がいた。

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