第16話

気づくとよく分からない空間に女の人と2人っきりだった。床も天井も無く、暗くて奥行きも何も分からない。なのに自分と女の人だけははっきりと見えた。




「これは夢よ」




夢…?


確かになんかふわふわするし、言われてみれば、夢、かも…




「寝るな!」




は、はい!


この人お腹から声出てたけど演劇部かな…


誰だろう。なんか見覚えがあるような。見た目は少しキツそうで悪役令嬢みたいだけど、目鼻立ちがハッキリしていて可愛い。


…私だ。アリエッティだ!え、なんでアリエッティが目の前にいるの?




「夢の中でも寝ようとするなんて、だから毎日寝坊して学校に遅刻しかけるのよ」




す、すみませんでした…


なんで私夢の中でアリエッティに怒られてるんだ…?


まあ、夢だし、なんでも、あり…




「寝るな!」




は、はい!


私めちゃめちゃ夢の中でアリエッティに怒られるじゃん…




「このままだとあなたが寝てしまうから手短に話すわね」




まさか悪役令嬢からお気遣いいただけるとは思いませんでした。ありがとうございます。




「まず、成人おめでとう」




成人?いや、私はまだピチピチのJKなので未成年だし、誕生日もまだ先…




「あなたじゃなくて私が!この国だと私たちは成人なの。私たちの誕生日は同じ日だからここで成人になるタイミングは一緒よ」




この国の成人早いなあ。まあ幼少期から婚約して10代で結婚がおかしくないこっちの世界ならそりゃそうか。しかも私とアリエッティって誕生日同じなんだ。




「成人の日にお城で成人式があるから私の分まで楽しんで」




この国にも成人式ってあるんだね。




「それと、もう一つ目…いちば…重要…じつは…」




え?なんて?




「接続が悪…みたいね…話はまた今度…するわ」




今じゃなくていいんですか!?




「仕方な…じゃない…あな…起きそう…から」




寝たり起きたりなんかすみません…




「成人式…招待状…ポストに届…てる…か…ちゃんと確認するのよ~」




最後の方は途切れるというより小さくなって聞こえた。






はっ!


目が覚めるとそこはアリエッティとしての私の部屋だった。


横にはケイトがまだ寝ている。




なんか、変な夢見た気がする…アリエッティが、つまり私が成人おめでとうって言ってたような…なんだったんだろう…




その時、外で郵便物が届く音がした。




そうだ、ポストに招待状届いてるか確認しよ。




寝ぼけて階段を落ちかけながらも家の外に出た。




ポストまで行くと、「少女の行方不明事件多発」という不穏な見出しの新聞がポストからはみ出ていた。それを抜いてポストの中を確認すると、成人式の招待状が入っていた。








                   成人式のご案内




この度は成人の日を迎えられますこと、誠にお慶び申し上げます。つきましては、下記の通りにて成人式を挙行致します。なお、ご婚約ご結婚されている方はお相手の方と共に参加することも可能です。軽食の準備もあります。式への参加は直接のご来場をもってご出席となりますので、当日はこの招待状を必ず持参してご参加ください。






という文章と日時、会場はセシーランドのお城で、差出人は王様からと書いてあった。




王様って全部の手紙で☆つけてるんじゃないんだ…


そりゃあ国民に向けた手紙に☆とかつけてたらこの人大丈夫かなって思うよね。当たり前か。




あれ、私なんで招待状が来てるの知ってたんだっけ…


っていうか私って成人なの?


いや、成人のはず…


成人でしょ!招待状も来てるし。




それにしてもお相手も一緒に参加できる上に軽食の準備もあるってかなりの大盤振る舞い。凄い…


スイーツあるかな…いやでも軽食だからサンドイッチとかご飯系じゃないかな。結論美味しかったらなんでもいいけど…




最終的に今日の朝食の事を考えながら家に入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る