第15話
ピピピ!ピピピ!
ねむい…まだ寝かさせて…
ピピピピピピ!!!
うるさいなあ!もう。
今何時よ…え?
時計の時刻を見て固まる。
ち、遅刻だああああ!
慌てて飛び起きると急いで制服に着替え、リビングに向かう。
「もうお母さん!なんで起こしてくれなかったの!?」
「起こしたのにあんたが起きなかったんでしょうが」
ぐぬぬ、何も言えない…
お腹空いたなあ。時間は無いけど朝食は諦めたくない。
仕方なく口に詰めれるだけ食べ物を詰め込んだ。
「今日もハムスターみたいになってるな」
ニュースを見ている父の呑気な声が聞こえてくる。
「ふぃっふぇひまーす」
マンションの階段を駆け下り、駐輪場の自転車まで走る。急いで自転車を漕ぐのはいつも通りなので、いつも通り考えごとしよ。
私、昨日の夢で何見たんだっけ。
最近夢をすぐに思い出せない。
あっちに行ったらすぐ思い出せるんだけどなぁ。年かな。一応ピチピチの女子高生でやらせてもろてるんですけど。
そういえばなんかキスとかしてたような気が…
…
…
…
…
…
はぁああああ!?
びっくりしすぎて自転車がぐらついた。
危ない危ない。こんなところで異世界転生とかしたくない。
え、本当に…?
こちらの世界で寂しい私が作り出した虚妄ではなく?
疑えば疑うほどドンドン本当の夢だったような気がしてきた。
しっかり座って考え込みたくなってきたところで学校に着いてしまった。
仕方ない、この件については一旦保留にしよう。
*
「…E判定でしょ?それじゃその大学は難しいんじゃないかなあ」
なぜこんなことになってしまったんだろう。ただ係として進路室に来ただけなのだけれど。
「は、はあ…」
なぜこの先生は世間話のテンションで進路の話を聞いてきたんだろう。つまんないよ。はよ帰らせろ。
「せめてD判定はあった方が良いよね」
わざわざ言わなくても自分で一番分かってるのよ。
「なんでこの大学に行きたいの?大学でやりたいことってどんなこと?」
推しが行ってるからって言ったらめんどくさいことになりそう…
「えっと、尊敬してる人がここの卒業生で。私は色んなことに興味があるのでまだこれっといったのは決まってないです」
「誰かがとかじゃなくてやりたい事を決めないとダメだよ。そんな生半可な気持ちでいたら、社会に出た時生きていけないよ?」
*
はぁ〜なんなのあいつ〜!!!
駅地下の端にある自販機がある場所は誰もいないので、不機嫌全開でいさせてもらう。
「『そんな生半可な気持ちでいたら、社会に出た時生きていけないよ?』何よ!」
ボタンを思い切り押す。
「モラトリアムくらい楽しませろ!」
ICカードをタッチ面に叩きつけた。
「そういう考え方の人間がいるから、社会人の皆が意味の無い掟に縛られて困るんだよ…」
ピッという音の後にガタンとジュースが出てきた。
もう今日は一気飲みしてやるからな!
と意気込んで飲んだはものの、途中で飽きた。そんなにいっぱい飲んだらお腹チャポチャポになっちゃう。
やっぱり私には無理なのかな。いや、そんなわけないけど。諦めたらそこで試合終了だし。諦めないでってあの女優さんも言ってるし。
キャップをしめて本屋に向かった。
私の地元で一番品揃えが良い本屋は駅地下の商業施設の中にある。
今日は龍人の連載が載ってる雑誌の発売日ですからね。買わないという手は無いでしょう。
お目当ての雑誌を手に取ってレジに向かおうとしたけど、我慢できなくて立ち読みした。
連載は毎回スタッフさんが設定したテーマでの撮影とインタビューが8割で、残りの2割は読者からのお悩み相談に答えるというコーナー。今回のお悩みは挫折してしまって夢を諦めようかと思っている人からだった。
真摯に答える龍人のファンに対する愛が伝わってきて、立ち読みなのに読み込んでしまう。
「座りこまなきゃ立ち止まってもいいんだよ。後で走れるようにゆっくり休みな。僕らがついてるよ。」
最後にそう締めくくられてるのを読んですごくドキっとした。今までにないくらい。
推しの言葉だからドキッとするのは当たり前か。でも、似たようなことを言われたことがあるような気がする。
そんなはずはないんだけど…
昔龍人が言った何かに似てるだけだよね。きっとね…
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