第11話
パーティー当日。
行く前はあんなに気楽だったのに、いざ目の前にするとなんだか不安になってきた。
馬車を降りて会場に近づいていくほどドキドキする。
「アリエッティ緊張してる?」
ケイトが私の肩を抱いてくれた。
「アリエッティの1番の魅力は笑顔だよ。こんなに可愛いんだから自信持って」
ケイトがいてくれて、本当に良かった。
ちらほらざわめきが聞こえる。私が来ているからか、隣国の王子が来ているからなのか、ケイトの整った顔やそのオーラに惹かれているからなのか。
いつのまにか彼のもとには人だかりができた。ここはシリウス・マリアの二人の婚約パーティーのはずなんだけど。彼の妻は私ですよー!もう。ちなみに私のところには人ゼロ。当たり前か。
ケイトの人だかりがなくなる様子は無いし、いいや先に一人で食べちゃお。
なんということでしょう。こんなに美味しそうな食べ物を食べている人がまったくいません。まあ婚約を祝うのが目的で、食べるのがメインではないけど。
まずはこのショートケーキから。パクッ…ん~美味しい!さすが一流のシェフが作ってるだけある。今度はこっちのチョコケーキ…次はモンブラン…
「アリエッティ嬢、よくもこれましたわね!」
すみません!食べ過ぎました!!
ビクッとして振り返ると、同年代くらいの女の子が5人いた。真ん中の派手なピンクのドレスを着た子以外は全員私のことを睨んでいる。
あれっ、食べ過ぎを注意されているわけではない…?
「マリア様に失礼だとは思わないのかしら」
あっこの子がマリアさんか!ごめんなさい忘れてて。でもピンクの目とか髪は可愛い。
「ちょっと二人とも、いいのよ。過去は過去の事ですもの」
マリアさんが優しく諭す。
「マリア様、さすがですわ!」
「マリア様はなんてお優しいのかしら!」
この人たちの声よく通るな~
「アリエッティ様、ちょっと外で二人だけで話しましょ」
「え、あ、はい」
マリアさんに連れられて私は城の外に出た。何の話だろう。
「あなたどういう神経をしているの?」
「え?」
開口一番マリアさんにこう言われてびっくりした。
「あれだけの事を私にして隣国に逃げたくせに、よくも平気な顔でのこのこ来たわね」
いや、あなた達が招待したから来ているんですが…
「あれだけシリウスの事を追っかけまわしておいて、学園を追放された瞬間結婚するなんて最低じゃない」
ああ、はい…?
「まさか私たちのパーティーをぶち壊しにでも来たのかしら」
いやマジで2人に興味ないのでその線はないです。
「ケイト様みたいな人気のある方がどうしてあなたみたいな方と結婚したのか甚だ疑問ですわ」
私の悪口を言われるのはどうでもよかったけど、ケイトの話をした瞬間に心がもやもやした。
「もしかして、怒ってますか?」
自分が怒られている、いないにかかわらず、誰かが怒っているのって好きじゃないんだよなぁ。
「あ、当たり前じゃないの!」
顔は可愛いんだからもっと笑ってほしいのだけど。
「学園での私の行いは謝ります。嫌だったんですよね?辛かったんですよね?」
アリエッティが何したのか詳しくは知らないし、今の私にとっては全くそんなことをする気持ちもないけど、でも今の私はアリエッティだし、アリエッティとしてこっちで生きている以上彼女の過去は私の過去でもあるよね。
「本当にごめんなさい」
マリアさんが目を丸くして何も言わずにこっちを見ている。
「こんなこと私が言うのもあれですけど、私は怒ってるマリアさんより笑顔のマリアさんの方が好きなので笑ってほしいです」
そう言ったら急にマリアさんが慌てだした。
「あ、あなた、ななな何を言ってるの!?も、もういいわよ!」
マリアさんが足早に帰っていく。
いいの?
あっ、そういえば言い忘れてた。
「ご婚約おめでとうございます!」
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