第4話

ということで、向かい合って一緒にスイーツを食べることになった。




「そういえば、名前を言っていませんでしたね。ケイト・ガルシアです」




「あっ、私も。アリエッティ・シャルルです」




 ケイトさんはお隣の国のセシーランドから来たらしい。


 さすが人気店だ。




 私はチョコパフェ、ケイトさんはマスカットの乗ったケーキを頼んだ。


 散々迷ってチョコパフェにしたわけだけど、マスカットが光り輝くケイトさんのケーキもとても美味しそう…




「食べますか?」




 どうやら気づかれてしまうほど私はケーキを見つめていたらしい。




「いいんですか?」




 いや、まてまて。助けて貰ってお礼しているのは私の方なのにケーキを貰うなんてズルくない?




 すると、ケイトさんが私のパフェを1口食べた。




「迷ってそうだったから。アリエッティさんのパフェを食べてしまったので僕のケーキ食べてください」




 や、優しい…




 ということで遠慮なく1口いただいた。


 パフェも美味しかったけど、ケーキもマスカットの甘さが引き立っていて美味しかったのでまた来ようと思う。




 *****




 紅茶を飲むケイトさんの姿は、それはそれは絵になっていて、美しかった。


 そして店にいる人たちは彼をジロジロ見ている気がする。


 そして私をチラッと見てすぐにケイトさんを見ている気がする。


 店員さんまでもが彼の虜で、お盆に乗ったものを落としそうになっている。


 気をつけてください。




 アリエッティは普通に、結構、かなり、可愛いと思うけど、それを超える美しさを彼は持っているのだ。




 なんか、ケイトさんって龍人に似てる気がする。


 顔がそっくりとかではなくて、雰囲気や話の間、表情の動き方とか優しいところが似ている。




 オタクって推しの顔はもちろん大好きだけど、顔の造形だけじゃなくて顔の動く様や、性格、声、歩き方、パフォーマンスだったりそういうの全て含めて好きなんだよね。


 顔だけでオタクはなかなか出来ない。






 お会計の時、ケイトさんの分も払おうと思ったのに逆に奢られてしまった。




「女性に奢らせる訳にはいけませんから。アリエッティさんと楽しい一時を過ごした事が十分なお礼です」


 王子様か。




 ちょっとドキドキしてしまった。




 藤島龍人みたいだ。


 本物の王子であるアリエッティの元婚約者とは大違い。




 しかも帰りが危ないからと馬車で送ってくれるらしい。


 このままだと人の馬車に乗り込んで助けて貰ったあげく、美味しいスイーツをご馳走になり家まで送ってもらった図々しい女になってしまう。




「私もケイトさんと楽しい時を過ごしたのは同じです!自分ばっかり得して…もっとお礼させてください!」




 ケイトさんは少し考えると、急にふっと微笑んだ。




 その笑顔にドキッとしてしまう。




「何でもいいんですか?」




「も、もちろん!」




「では、アリエッティさん」




「は、はい…」




 何を言われるんだろう。


 あ、何でもって言ったけど、さすがに車とか家とかは買えないです。


 ってケイトさんはそんな物ねだらないか。




「僕と結婚していただけますか」








 …!?






 ケッコン…?






 けっこん…






 結婚。






 僕と結婚…!?










 こ、こここここここここ、これってプロポーズ!?!?










 出会ってまだ0日なのに!?




 0日どころか数時間なのに!?




 え、結婚ってなんだっけ?




 待って驚きすぎて結婚が何か分からなくなっている。本当に記憶喪失になっちゃダメよ。


 結婚って紙にいろいろ書いて役所に提出するやつ?なんかズレてる




 ドラマとか映画の結婚だと、結婚式をしたり、同じ家に住んでラブラブ♡みたいな話だ。






 私とケイトさんがラブラブするの?






 こんなに早く結婚相手を決めてしまっていいのかと思ってしまう。




 でも、カッコよくて性格も優しい人にプロポーズされるなんて今後あるのか。




 現実の私は告白されたこともないし、卒業式の日に人生初の告白をしたら全てのボタンが揃っているのに一番下のボタンを貰った事があるくらいだ。




 現実の最近の私は一生独身なんじゃないかと考えはじめているし、この私にプロポーズしてくれる方がいるのなら、異世界だけでもこのチャンス逃さない方がいいのでは?






「ふつつかものですがよろしくお願いします…」


 差し出された手を、私はゆっくり掴んだ。




「いいの!?本当に!?」




 なぜかケイトさんがびっくりしている。




 こちらもびっくりですよ。




「ではまた後日」


 手にキスをされ、私のドキドキは止まらなかったのだった。

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