第3話
私がこっちの世界に来るようになってから1週間ほど経った。
いつも寝たらこっちの世界にいるので、オールしてみたのだけど、途中で寝落ちしてしまって防げなかったうえに、睡眠不足は体に良くないし、つまらない先生の授業は眠くて地獄なのでもうオールはしない。
もしかしたら「入れ替わってる!?」のような事が起こっているのかと思ったけど寝て起きたらしっかり翌朝なのでそれもなかった。
最近は、「ご飯が美味しいね」とか「天気がいいね」とか言ってニコニコするのほほんとした時を過ごしている。平和だ。
しかし、こんな緩い生活でいいのだろうか。
なんかもっと、破滅を防ぐために試行錯誤して色々となんかをした方が日々が充実しそうだけど…
まあ、いっか。
今考えても分からないし、もし襲われたら「なんだあれは!」と上の方を指さして目線を逸らした隙に逃げて、国外追放とかにされたらその国でバイトしよー。せっかく令嬢になったんだからこれを利用しない手はないでしょ!
ということで、スイーツを食べに街に出てきた。普段は常に金欠な上に、推しのCDや映像作品、雑誌とか買ってるからショッピングするお金が無いけど、私は令嬢。
お小遣いだけで大量にCDを積めるくらいの金額を貰った。
何食べよっかな〜
定番のショートケーキ?クリームとフルーツが沢山乗ったパンケーキもいいし、フレンチトーストも美味しいらしい。私が行くお店は雑誌でもよく取り上げられるほどの人気店で、予約がいるのだが、シャルル家の名前を出したらすぐに予約が取れた。
さすがシャルル家。
たしか、大通りを通るより路地裏を通った方がかなり早く着けるって話だったよね…
路地裏は大通りと違って人がかなり少なくなる。
すると、ガタイのいい数人の男が目の前に通せんぼをするように現れた。
慌てて後ろを見ると、後ろにも同じような男が何人かいて、全員腰に剣をぶら下げている男たちに私は囲まれている。
すごく、かなり、とても、まずい気がする。
どうしよう…
…そうだ!
「あー!」
目の前を指さし、大きな声を出す。
「なんだあれは!」
男たちがよそ見をした隙に逃げる。
まさかこんな古典的な技が通用するとは。
追いかけてくる男たちに追いつかれないように全力で走ると、通りに出た。
すぐ近くの路肩には馬車が停めてあり、扉が開きかけている。
「すみません!入れてください!!」
馬車の中に入った直後、外から走る音が聞こえ、遠くに走っていく男たちが見えた。
はあ、よかった…
「いきなりすみません。正体の分からない男たちに追われていたので助かりました」
馬車の持ち主と思われる人は、若い男の人で、艶のある黒髪に一つ一つのパーツが整っている顔をしている。
めちゃめちゃイケメンだった。
「いえ、お気になさらないでください。きっと金品目的の盗人でしょうが、丸腰の1人の女性を狙うなんて許せませんね。ご無事で何よりです」
しかもめちゃめちゃ優しかった。
「何かお礼させて貰えませんか?」
お金はあるので。
「たまたまここのお店に来ただけなので、そんなそんな」
彼は目の前のお店を指している。
あれっ、ここって私が予約した店だ…
「予約がいるみたいで食べれませんでしたが…」
ならちょうどいいかも。
「私もこのお店に来たんです!予約しているのでよかったら、一緒に食べませんか?」
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