第4話

「やめろ···もう···見せないでくれ···やめろーー!!」


 俺は叫びながら目を覚ました。あの日の夢を見てたからか、冷や汗をかき、喉と唇は乾いてた。それとは別で、あの日死んだステラ姉さんを抱きしめた時に感じた重みと、手にまとわりついた姉さんの血の感覚があった。


 俺は、重たい体でベットから起き上がり、水差しの中に入ってる水を、グラスに入れて飲んだ。その後、宿にある簡易的な風呂場で体を洗い流した。出る頃には姉さんの感覚も消えていた。


 空が薄らと明るくなってたから、俺はそのまま起きる事にした。


 朝ご飯を食べてた時、宿の人から『晩御飯の時、降りてこないから声をかけたけど、反応がなかったから、そのままほっといた』と言われた。


 部屋に戻り、鞄から今日から着る制服を取り出し、着替えた俺は、他の荷物を鞄に詰めて学校へ向かった。


 校門を通り殺風景な敷地内に入る、その瞬間一瞬視界が歪んだ。歪みが収まった先には、先程までの、殺風景な景色から、大きな校舎と左右にも大きな建物がたってた。それにさっきまで他の学生がいなかったのに、目の前には沢山の学生や先生が、視界に映った。


「なっ···なんだよコレ!」


 俺は思わず思った事を、そのまま口に出してた。


「なんやアンタ? ここの事なんも知らん新参者なんか?」


 俺が独り言で言った事に反応して、1人の女性が話しかけてきた。––後ろで一つに纏めた綺麗な黒髪が背中までありどこかお嬢様の様なオーラを発してた


「えっと···」


 俺は、彼女の独特な話し方に戸惑ってたら、何を思ったのか、いきなり笑いながら謝ってきた。


「あはは♪ いや、すまんすまん♪ 人に尋ねる時には、まず自己紹介せなあかんね♪ ウチはユーリって言うんよ♪ ユーリ=イズナ、王虎百神国おうこびゃくしんこく出身やで♪ アンタの髪の色とか見ると、ウチと同じか思っとったけど、喋り方がちゃうし、気になったんよ?」


 自己紹介を急に始めたユーリは、俺にも自己紹介をして欲しいということか?


「俺はレイジ=グローレイン。出身はブルゴン州連国出身だ。ここには、昔姉さんも卒業してたんだが、半年前に亡くなってな、それで何も聞いてなかったから、驚いたところだったのさ。あと髪の色なんだけど、君が言うなら、きっとどこかで王虎百神国の人の血も、入ってるのかもしれない、まぁ物心ついた時から姉さんしか身内がいなかったから、分からないけどね」


 俺は小さく微笑んで言った。その話を聞いた彼女は何故か泣き出した。


「うわぁーん!! すまんかったレイジ!! ひっく…アンタずっと大変やったんやね。うぅ…っせや! 卒業するまでは、ウチが仲ようしたる! 安心しぃや、もう1人やないからな!! …ぐずっ」


 何故俺は、初対面の子に、いきなり名前を呼び捨てにされ、泣きながら、いつの間にか友達認定されてるんだ?


「な…なぁ…えっと…」


「ウチの事は、ユーリって呼んでくれてええよ?」


「わかった。ユーリ俺は別に、村で寂しい思いしてなかったからな?色んな人が傍に居てくれたからな。確かに姉さんが、亡くなったのは辛かったけど、それでも、こうやって前に進むことが出来たのも、村の人のおかげなんだ。」


 瞳に水滴を溜めながらユーリは話を聞いてた。


「ほんまええ人に···恵まれとって···良かったよ…ほんま……良かったわぁ……レイジ!!ええ話聞かせてくれて、ほんまありがとな♪」


 そう言ってユーリは両手で涙を拭き、弾けるばかりの笑顔を見せてきた。


「せやった!受付行かなあかんのやった! ほらレイジ行くで!」


 ユーリは俺の手を、グイグイ引っ張ってきた。


「ま…待ってくれユーリ、そんなに引っ張らなくても俺も、受付に行かないといけないんだからな?」


「そんなんわかっとるよ♪ それでもな、新たな生活に新たな友人やで? こげん心躍る嬉しい時は、何事も早い方がええねんよ♪」


 やっぱりユーリの言葉は、独特すぎて理解する迄に、一瞬考えてしまうが、とても嬉しそうなのは、見ててわかった。俺もそんなユーリを見て、期待に胸を躍らせた。


 受付場所に行くと、たくさんの人が並んでた。俺とユーリも、その長い列に並び、待ちながら色々話した。好きな物とか、趣味とか他愛も無い話だったが、とても楽しかった。気がついたら列もかなり進んでて、俺たちの番になった。


「ほなレイジ、また後でな♪」


「あぁまた後で」


 そう言って俺達はそれぞれ受付をしに行った。


「名前と出身国それに、出身地と得意武器を教えてください」


「名前はレイジ=グローレイン。出身国はブルゴン州連国、出身地はマール村です。得意な武器は剣です。 特に片手剣が得意です」


「少々お待ちください」


 そう言って受付の人は書類をパラパラめくってた。


「お待たせしました。はい、確かにありました。それでは改めて…ようこそ調律師養成学校TTSへ♪ これから切磋琢磨に頑張って、立派な調律師チューナーになってくださいね♪」


「ありがとうございます!! これからよろしくお願いします!!」


「それでは、あちらの大戦型大修練場にみなさん集まってるので、そこで待っててください。」


 ユーリと合流した俺は教えてもらった場所に移動した。大戦型大修練場は、ただ広いだけの何も無い場所だった。そこでこれから簡単な入学式が行われるのだ。

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