第5話

 俺はユーリと、受付でされた質問の得意な武器について話してた。


「レイジって剣が得意なんやなぁ♪ ウチも剣と答えたで♪ まぁ…ウチの場合ちいっと特殊なんやけどね♪」


 そう言ってユーリは、腰に刺さってる木の棒に手を置いた。


「えっと…ユーリは木刀が得意って事なのかな?」


「レイジ絶対ウチの事、バカにしとるやろ?」


「そんなんじゃないよ!! でもそうやって木刀に手を置いてたら……さ?」


「レイジは見る目ないなぁ~ コレ木刀やなくて、仕込み刀っちゅうねん♪」


 そう言ってユーリは木刀を握りしめ、少しスライドさせた。中から、一瞬煌めいた片刃の剣が見えた。


「初めで見た剣だな。それにしても、普通の剣より細いし、何より片刃って大丈夫なのか?」


「コレなぁ、王虎百神国では、よぅ使われとる武器なんよ♪ まぁ確かに、普通の剣より耐久性は劣るんやけど、その分軽いから、素早く、そして鋭く斬る事ができるねん♪ それにな! ……まぁ手の内を、初日で全部見せるんは、やめとこか♪」


 そう言って仕込み刀の話を、暑く語り出そうとしてたユーリは、一瞬考えてからそれをやめ、納刀した。


「それに、もうすぐ倫理的歯車エシックスギアが手に入るさかい、この刀を使う事も、のぅなるやろしな…」


 どこか寂しそうに刀を撫でるユーリに、声をかけようとした時


「これより!入学式を始める!新調律師志望者は、速やかにそこの椅子に座るように!」


 突然大きな声が場を支配した。


「ほな行こか♪」


「…そうだな」


 さっきまでの寂しそうな顔はもう無くなり、それまでの様子と変わらないように見えた。


 その後俺たちは学校長の…なんだっけ? そうそう! ありがたいという話を、眠気と戦いながら聞いた。唯一覚えてるのは、『卒業1か月前に上位20名は優先的に自由に滞在地を決めることが出来る!』との事だった。上位に入れば確実に村に帰れる。それがすごく魅力的に感じ、そこだけはしっかり聞いて覚えてた。


 長く過酷なありがたいお話と言う、学校長の修行に耐えた俺達は、10組のグループに分けられた。俺は、名前を呼ばれ8組のグループの方へ行った。グループ内を見たがユーリの姿が無く、せっかく仲良くなったのにと思い、少し残念だった。


 全員のグループ分けが終わり、1人の先生が魔法陣を展開させ、全体に聞こえるほどの声で話し始めた。


「それでは今から入学試験を開始する!」


「「「はぁ!?」」」


 いやいや待ってくれ、今までのは一体なんだったんだ?


「静かに! 確かに驚くのは無理もない。各国の試験に合格し、やっとの思いで今日の入学式を、迎えたものたちばかりだろう。だが!! 実際の実力がどれくらいか、ちゃんと見ないことには、正式な合否は学校側も出せないのです。ですから、今からその入学試験を行います。試験内容はノアを守る現役の調律師と、模擬戦をしてもらいます。 ですが安心してください負けたら失格ではなく、あくまで実力を見る模擬戦ですから。それでは、頑張ってください」


 それだけ言い終わると、俺の居るグループに1人の調律師が現れた。誰かと思えば、昨日会ったトールだった


「8組の担当になったトールだ! みんなよろしく!!」


「「「よろしくお願いします」」」


「それでは、やりたいやつから順番に前に出てきてくれ!!」


 そう言って仁王立ちしたトールだが、すぐには誰も、前に出てこなかった。そりゃそうだろ…普通に考えたら何も手の内が分からない相手と、一体誰が我先にと前に出るのか……少し考えたら分かるだろうに……


「おーい! 試験不参加で不合格になってもいいのか?」


 そう言われたらやるしかないよな……俺は覚悟を決め自前の片手剣を握り、前に出た。


「おっ? やっと来たなって、 レイジじゃないか!? そうか8組に入ってたのか、それなら昨日教えとかなくて正解だったな」


「俺的には、教えて欲しかったんですけどね」


「それじゃ、早速武器を構えな」


 そう言ってトールは背中に背負ってた大剣を両手で構えた。


「安心していいぞ? 能力と武器は使わないから、コレもどこにでもある普通の大剣だ」


「あはは…それって安心要素になります?」


 正直構えは適当に見えるけど、経験の差なのか隙がないように感じる。


「初手は譲ってやるから、好きなタイミングでかかってきな」


「それでカウンターで終わりは、避けたいものですね」


「それはレイジの実力次第だろ?」


 トールはニカッと笑って左手を上げクイックイっと挑発してきた。


 俺は深呼吸して無駄な力を抜きトールめがけて駆け出した。

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