第2話

  俺は村を出て、近くの町から乗ることができる、鉄騎馬車と呼ばれる乗り物で、ノアまで向かった。

  先頭にある巨大な黒い鉄の乗り物が動力として、お客や荷物が乗る専用の馬車を大量に引っ張って走る。

  ただ、専用の鉄で作られた道しか走れないから、乗降所が決まってるのがちょっとめんどくさかった。 それでも、普通の馬車を経由してノアに行くより断然早く、ノアには2日後には着いてた。


  ノアに着いた俺は、まず最初に調律師養成学校T T Sに向かった。入学手続きは済ませてるが、俺は早くどんな所なのか見たいと思ったからだ。

  ノアは少し特殊な国で、国の国土は街1つ分しかない。 まぁ、1つ分と言っても、街全体を歩こうとしたら、一日じゃ回りきれない大きさだ。街の中心にそびえる壁の中に、俺が明日から通う学校がある。

  それにノアには、鉄騎馬車でしか出入りができない。その理由は、各国から毎年沢山の調律師候補生がノアに来るのだが、それに紛れて悪事を働く人も紛れ込んでくる。そんな人達を、街に入れないために、警備をしやすくする為、と言う事らしい。なので東西南北と、4カ国は決められた出入口からしか入国できない。コレも、どこの国の者かすぐ分かるようにするためらしい。


  学校に到着した俺は、少しでも中が見れないかと校門前で、キョロキョロと覗き込んでみた。

  それにしても、まさか校門からですら中をよく見えないなんてどんだけ警備が厳しいんだよ!? 仕方ないか、明日には中に入れるから、今日は我慢して先にやらないといけない事を、済ますとするか。


  明日からは、寮区で用意される部屋で寝れるが、今日は寮に入れないから、自分で宿を取らないといけなかった。だから今から、今日泊まる宿を探すことにして、校門を去ろうとした。


「そこの君!! そう黒髪の君だ!! ちょっと止まりなさい!!」


「えっ俺!? なんですか?」


  俺は突然呼び止められた事に驚き、振り向くと警備兵がコチラに駆け寄ってきた。


「君!! さっきから見てたら、校門の前をうろうろと、何をしてたんだ!」


「いえ! 別にやましい事とかは、ありませんから! 明日入学するので、その前にどんな所か見たくて覗いてただけです!」


「本当かどうか、今から認証するから、名前と出身国を言え!!」


「名前はレイジ=グローレイン、出身国はブルゴン連州国です。入国はほんの1~2時間前に到着した鉄騎馬車で、来ました」


「少しここで待っててくれ。不審な行動したら即、捕縛させてもらう」


  そう言って警備兵は、黙り込みコチラを睨みつけてた。暫くすると、警備兵の表情が変わり、申し訳なさそうにしてた。


「ふむ、認証した結果、言ってる事が本当だとわかった。疑って悪かったな、レイジ君」


「いえ、誤解が解けて良かったです。それにしても、どうやって認証したんですか?ずっとコッチを睨んでただけだったのに」


「それはだな······明日、分かることになるから、今は黙っとくか。俺はトールだ、これからも会うことがあるだろう。その時は、よろしく」


「こちらこそ! 俺の事は、レイジと呼んでください。これから2年は、ノアで住みますので、よろしくお願いしますトールさん」


  お互いに軽く自己紹介をして、別れた俺は、今日泊まる宿探しを、再開した。宿を探しながら俺は、さっきの事を考えてた。

  それにしてもさっきのアレ、なんだったんだ? 特殊能力だとしたら、あまりにもスムーズだったし······それに、誰かに念話できるのだとしても、一方通行で、相手も念話が使えないと返ってくることは無いはず······まぁ、気にしてても仕方ないか。


「いらっしゃいませ♪食事は晩と朝が付いて、1泊銀貨20枚です」


「はい、これ銀貨20枚」


「ありがとうございます!! 部屋は、階段昇って、左の1番奥の右のドアです」


「ありがとう」


  それよりさ······今思ったんだけど、宿の値段高くね!? 払えないことは無いけど、1泊で村での食事何食分の値段だよ······

  それでも、一番安い宿を探して、部屋が空いてるか聞いて、どうにか、たどり着いた筈なんだけど·····逆に1番良い宿って、いくらするんだろ?

  俺は、部屋に行き、荷物を置いてからベットに横になった。街1番の安い部屋だけあって、部屋はベットと机しか置いてなかった。まぁ、今日1日だけだし、それでもいっか。


  そんな事より、明日からの事を考えたら、内心ワクワクして、凄く楽しみだった。世界中からすごい人達が、調律師になるためここに集まってくる。そんな人達と一緒に学び、そして、強くなれるのが、凄く楽しみで仕方なかった。


  確か、ステラ姉さんも凄く強い調律師だったみたいで、特別な呼び名······2つ名を貰ってたとか······まぁ、どんなのかは、結局最後まで『恥ずかしいから』って、教えてくれなかったんだけどな···


  もし、もう一度会えるなら······沢山話したいな。この半年の事、俺の知らないステラ姉さんの事、それから学校の事······


  そんな事を考えてたら、2日の移動による疲れからか、猛烈な眠気が襲ってきて、それに抗えず俺は眠りについた。

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