第3話 イレギュラー
「さ、採用だ、です。」
あの大柄で強面な男がアルファに怯えながら言った言葉。そして彼らは続けざまに
「私は、ラムザラ。WPOの第3偵察隊の隊長だ。よろしくおねがいたします。」
「僕は、アレン、第3偵察隊の隊員です。」
敬体と常体が混ざる自己紹介を聞いて、アルファは、彼らの焦りを感じた。
そして、アルファは反射的に自己紹介を仕返した。
「俺は、ア、アルファ。ここに住んでいる者です。よろしく。」
軽い挨拶をしたあと、アルファ達の会話はピタリと止まった。彼らは、まるで、嫌いな学校の先輩と話しているときのように、少し嫌がっているようにも見える。それを悟ったアルファは場を和ますために口を強引に開く。
「採用?ってなんのことですか?」
「あっ、あなたを偵察隊の一員として採用する、ということです。」
ハッとして"採用"の意味を説明するラムザラ。
「失礼ですが、あなたは何者ですか?」
瞬きもせずに、早口になってアレンが問をかける。何かあったのか。アルファには何もわからなかった。
「何者ですかって、さっき紹介したとおりですよ。俺はただのここの住民で、、」
「いや、そんな事はありません!本当に何も知らなくてもあなたは特別です!」
数分前、話していたあの紳士はどこに行ったのか。とても興奮した状態でアルファの言葉にかぶせて訴えるアレン。アルファが少し困惑した顔をしていると
「落ち着け、アレン。正直私も動揺を隠せない。だが今は彼に少しずつ説明するのが正解だと思う。」
「はい、、」
落ち着けと、アレンの頭を冷やすラムザラ。そして、ラムザラはアルファに少し近づき、目を鋭くし、真剣な眼差しで説明しだした。
「んんっ、魔力検査の結果ですが、、、レベル10でした。」
「レベル10?」
「その反応からして、本当に何も知らないようですね。」
「はい、、、」
「レベル10というのは異例中の異例です。隊長の私がレベル7。レベル10はWPOの最高戦力級です。」
「最高戦力か。」
「そうです。レベル10の人物はWPO内では、あなたを含め3人しかおりません。」
最高戦力。WPOに3人。アルファは信じられなかった。少し走るだけで息が上がってしまい、魔法すら使えたことがないアルファが最高戦力など。
「ま、魔法が使えるんですか、俺に。」
憧れがあった魔法が使えるのか、気になった頃には口が動いていた。
「恐らく、、、」
そうアレンとラムザラが口を揃えて肯定する。
「どうすれば、魔法が使えるようになりますか?こう、手に力を込めて、、」
そう妄想するアルファ。憧れの魔法が使えることがしれて、興奮してお喋りが止まらない。
「ちょっと失礼」
そういったのはアレンでもラムザラでもない。スーツ姿の大男を隣につけている、白髪で白いスーツを着た男だ。その姿を見たアレンとラムザラは深く頭を下げた。
それを見たアルファは少し動揺し、反射的に黙礼する。
「いいんだよ、頭なんて下げないで。君と僕は同じ立場なんだから。」
透きとおる声でアルファの緊張をほぐすと、その男が手を伸ばして言う。
「さぁ、手を握って。」
「え?」
「いいから、僕は怪しいものじゃないよ。」
そう言われると逆に怪しく思ってしまうが、ボーッと立っていても何も起こらなそうなので手を握ってみる。
《続く》
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