第7話

「きみも見ていくか? 今夜19時から『がぁこちゃんねるっ!』の生配信」

「あの……親が心配するから」

「だよな。悪かった」

 お兄さんは、小さなペットボトルのお茶をくれた。まだ冷たい。

「ありがとう。がぁこさんに気づいてくれて」

 お兄さんも、自分のペットボトルのお茶を飲む。

「がぁこさんは、京都の神職の家系だったんだけど、出世コースから外れたり、天災や人災に巻き込まれたり、ヘッドハンティングの話を潰されたり、色々あって出家したんだって」

 それ、聞いたことがある。

「がぁこさんの人生って何だったんだろう」

 お兄さんが呟いた。

 蝉の声が小さくなる。日が傾いていた。

 メーデル・ハーデルが静かだと思ったら、彼は目を閉じて、琵琶の弾き語りに合わせて何かをそらんじていた。テンションの高いマシンガントーク野郎だけど、実は思慮深く知識教養もある。お世話になった人が亡くなったときに能を舞って供養したという話もあるくらいだ。

「がぁこさん、楽しそうですね」

「だろ? 琵琶を琴の名手だったらしいよ。それに、今はきみみたいな人に気づいてもらえる。がぁこさんは、それが嬉しいんだよ」

 お兄さんは、眼鏡の奥の目を細めた。

「よかったら、『がぁこちゃんねるっ!』を見てあげて。気に入ったら、チャンネル登録をよろしくね」

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