第8話
琵琶の奏でに聞き惚れるメーデル・ハーデルと現地解散し、僕は家に帰った。
スマートフォンを起動し、動画サイトで『がぁこちゃんねるっ!』を検索する。
『がぁこちゃんねるっ!』は、すぐに見つかった。クラスメイトが噂していたから話題なのかと思ったが、閲覧数も登録者数も少ない。
最初から視聴してみた。木漏れ日の下で琵琶を奏でながら何かをそらんじる、がぁこさんがいる。伸び伸びと、活き活きと。そんな、がぁこさんを見ていたら、僕は一度くらい爽快に学年1位を目指してもいいかな、と思ってしまった。
そらんじている文章が何なのか気づき、動画を早戻しする。本棚代わりのカラーボックスから本をを出して、確認した。
「……ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」
動画の中の、がぁこさんに合わせて、僕も口ずさむ。
報わない人生に幕を下ろさざるを得なかった、がぁこさん。
もしも、現代に生まれていたら。現代でなくても、違う時代に生まれていたら。がぁこさんは、充実した人生を送れていただろうか。
がぁこさんの心境は、本人にしかわからない。
でも僕は、がぁこさんのことを見ているよ。
本人がオンラインで自著の弾き語りをするなんて贅沢な時間を噛み締め、夜のとばりが下りる。
【「がぁこちゃんねるっ!」完】
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