第4話

しばらくすると、部活終わりは雄達先輩と帰るのが日常になっていた。

 有名な演奏家のこと、吹いてみたい曲、おススメのオイル。いろんな話をした。

これまでずっと、誰とも共有できずに独りで抱え続けたことを、雄達先輩に聞いてもらった。

 真っ赤な夕日が、青いトロンボーンケースを照らして、先輩の黒い髪が、シャツの白にくっきりと浮かんだ。

 私の世界に、まぶしいくらいの光が溢れた。

「さっちゃん。」

前を歩いていた先輩がこちらを振り返る。

「誰ですか、それ。」

「君のあだ名。気に入った?」

 先輩が目尻に皺を寄せるのがわかった。

「ありがとうございました。」

私が立ち止まったから、先輩も立ち止まった。

「私、ずっと勘違いしていたんです。周りの人みんなが敵なんだと勝手に思い込んで、独りの世界に閉じこもっていた。先輩が教えてくれなかったら、私はずっと変われないままだったと思います。」

もう前を向いた先輩の背中が、道に大きな影を作った。

「俺は、何もしてないよ。」

今度は先輩が、歩き始めた。

「君が変わったから、世界も変わったんだ。」

私も先輩も、もう止まらなかった

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