第14話 こ、これが朝チュン…!
──ずっと一緒にいてくださいね、幸人さん。
頭の中に、透き通った声が響き渡る。遠ざかっていた意識が、少しずつ鮮明になっていく。
誰の言葉だったっけ?
何だか、ふわふわした感じだ。生ぬるくなった海に、首から下を疲らせながら波間をたゆたっているような、そんな心地よさが全身を包み込む。
「幸人さん、素敵です」
ふと、しっとりとした女性の声が、俺に耳にそよいだ。
ぬるい吐息、語尾に残る女の色香の残滓、ふわりと香る艶めいた匂い……
あまりにも現実的過ぎて、俺はそこで気づいた。
これ、夢じゃない?
ば、と体を持ち上げ、俺は自分の状況を再確認した。
俺は、裸だった。全くのすっぽんぽん、衣服はベッドの側に脱ぎ捨てられている。
そして思い出していた。昨夜、俺がここでどういう状況になっていたのかを。
「れ、麗衣……?」
俺は続いて、広いベッドの上、俺は頭を抱えられていることに気づく。ふっくらとした二つのふくらみが、俺の頭を挟み込んでいる。大きすぎず、かといって小さくもない柔らかなふくらみ……それは、男なら誰しもが大好きな、乳房だった。
「起きましたか?」
どうということもなさげに、聞きなれた声が頭に降り注ぐ。俺は顔を上げる。
そこにあったのは、想像していた通りの顔だった。
「とても可愛い寝顔でしたよ。幸人さん」
おしとやかに指を唇にあてがい、可憐にほほ笑む。流麗、美麗、まだ十代だというのに円熟味すら感じさせられる美をたたえた少女が、そこにいた。
その少女、麗衣は、服を、身に着けていない。
箱入りお嬢様そのもののおしとやかさに、俺は、ぐっと唸った。
「……」
「私は後悔していませんよ」
麗衣は恥じらいの表情の中にも、すがすがしさを浮かべていた。
「むしろ、幸せです。幸人さんのような方の伴侶に、なれるのですから」
伴侶? 伴侶ってどういう意味だったっけ。あれ、俺、頭が混乱してるな。
俺が口をパクパクさせて、何を話していいのかを思案していると、麗衣が矢継ぎ早に言葉をつないだ。
「私のことも構ってほしいのですが、涼音とイリアを、どうかよろしくお願いします」
「か、家庭教師を?」
「それもそうですが……あの二人には、それぞれ悩みがあるみたいなんです」
「年頃の子だもんな。俺みたいなおじさんには分からない悩みなんて、たくさんあるんだろうな」
麗衣は、俺の脇腹をつつく。くすぐったさに俺はビクっとしてしまう。
「私に手を差し伸べて下さった幸人さんなら、きっと、あの二人を導いてくれるでしょう。信じています」
俺は、麗衣の言葉にうなずきながら、その姿を改めて凝視した。
まだ少女と言っていいほどの女の子だが、その身のこなしは洗練されていて、美を凝縮したような様だ。
ほどほどに豊かな乳房は、谷間を刻み、その整った形を誇らしげに見せつけている。腰のあたりのくびれも、女っぽさを表している。
お嬢様の純粋さと、女の色香が混ざり合うと、こんなにもエロティックな姿になるというのを、俺は強烈に感じていた。
そんなものを見せられれば、男の本能が昂るのは当然だ。
ムクムクと鎌首をもたげ、シーツを押し上げて高い山を作り上げる。
俺は隠そうとしたが、麗衣は半眼でおしとやかにほほ笑む。
「うふ。おじさんなんて言ってるのに、とっても素敵」
ふぁさ、と髪をかき上げて、麗衣がしなやかな体を持ち上げる。
無駄な肉の一切ない肢体は、上半身だけでも女の瑞々しい肌の艶を存分に表現している。
クッキリとくびれた腰、そのお尻の肉が、ベッドの上でたわむ。
重力に負けずに持ちあがる、おわん型の美乳は、ツンと立ったピンクの突起を誇らしげに見せつけていた。
「幸人さん、私、あなたが求めてくれるなら、いつでもお相手できますから」
流し目で誘う麗衣は、わざとらしくゆっくりと、白い下着を拾い上げ、身に着けようとする。
どうする? とでも言わんばかりの彼女の肩に、俺は手を置いた。
「うふふ。よかった。私、魅力がない子なのかと思っちゃいました。女の子にだってエッチな気持ちはあります。むしろ、女の子の方がエッチかも」
麗衣は、隣の俺にしなだれかかる。
「この気持ち……もっと幸人さんに、伝えたいです」
麗衣の唇が、間近に迫る。
そして、味わった覚えのある甘い果実味が、俺の唇いっぱいに広がる。
こうして、俺は朝一から麗衣と愛し合うのであった。
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