第11話 完全に不審者である
翌日。俺は外出をすることにした。目的地は、麗衣の通う学校である。
麗衣は学校まで徒歩で通っている。近くの学校に通っているから電車や自転車を使う必要がないのだそうだ。
その登校中の彼女を一目見てみようと、俺はこっそりとつけていた。
「麗衣は、と……」
俺はきょろきょろとその場を探す。麗衣の通う高校は名門の女学園で、警備も厳重らしい。俺は警備の人に見つからないように、慎重に周囲を探った。
麗衣はどこだ。どこにいるんだ……?
そうやってひとしきり探していたら、見慣れた姿を発見した。
いた、麗衣だ。どうやら帰り道のようだ。
麗衣の周りには女子生徒が何人か取り囲んでいる。どうやら麗衣は、その女子グループの中心的存在らしい。
遠くにいるから何をしゃべっているかまでは分からないが、にこやかに笑顔を振りまいている。
今まで俺が見たこともないような輝く笑顔だ。上品で実直な笑顔は、見るものを魅了する美しさだ。
が、俺はその笑顔に違和感があった。
なんと表現したらいいのだろう。例えるなら、そう。造花のような、という比喩があっているだろうか。作り物めいているのだ。彼女の笑顔は。
俺の前にいる彼女が、機嫌よさそうにしているのを見たことがない。
「? 何してるんだ?」
俺が様子を窺っていると、少女グループが去っていく。そしてポツンと取り残された麗衣は、手を振って彼女たちを見送ると、一人でポツンと佇んでいた。
麗衣は、遠くにある何かをぼんやりと眺めていた。
何だ? 何がある? 俺はその視線の先をたどる。そこには、何の変哲もないカフェがあった。店先のウインドウに、食品サンプルでできたメニューが陳列されている。
?? 寄り道していきたいのかな? 一人で?
そう思ってじっと眺めていたら、やがて麗衣はくるりと身をひるがえし、道を歩き始めた。
帰り道についたらしい。俺は少し離れた場所から、麗衣を見守るが、その後は特に何を見るでもなく自宅の屋敷へと到着するのだった。
屋敷についてすぐ、涼音の部屋の前に行き、そのことを話した。
麗衣は外食したがってるのかもしれない、というような話をした。が、涼音は首を傾げた。
「麗衣ちゃん、べつにそんなのきにしないんじゃない? お茶くらい、お友達と一緒に、普通にいってるし」
「え、そうなの?」
「うん。麗衣ちゃんと喫茶店に行ったるするし、そんな飢えてないっしょ」
ありゃ、そうか。友達と普通の付き合いに行けないから、そのことで悩んでるのかと思ったんだが。
「そういえば、麗衣ちゃん、昔、なんかの作文で賞をとったことがあったんだよねー。あれが原因かもしんない」
何かを思いついたらしい涼音が、ぽん、と手をたたいた。
「賞? え、何が関係してるんだ?」
「まぁまぁ、見ればわかるって」
涼音はそういうと、俺を待たせて自室の奥に戻っていった。
「これこれ」
涼音が持ってきたのは、アルバムだった。
「ここらへんじゃなかったかな」
涼音がアルバムをパラパラとめくる。すると、神楽坂麗衣の名前が書かれているページにたどり着く。
そこに書かれていたのは、好きな芸能人やあこがれの人など、子供の夢あふれる項目だ。
そして、そこには将来の夢も書かれていた。
神楽坂麗衣の将来の夢、それは、俺にとって意外なものだった。
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