お菓子屋キャンディスイーツ

第22話 キャンディスイーツ開店

 午前8時。


 俺はキャンディスイーツへ到着した。店の鍵を開けて中に入る。

 売り場には商品が並び、いつでも営業できる準備は出来た。


 午前8時20分には全員出勤してくれた。病気で来れないときどうしようかと思ったが解決策がわからない。

「通信の魔法道具がありますよ」とユカリさんが教えてくれたので、用意しようと思う。


 午前9時に開店なので、埃もないが掃除をして、フルーツジュースの樽を準備する。フルーツジュースは、店に置きっぱなしには出来ないので、冷蔵の魔法道具を買うまでは、俺がスイーツ空間収納に入れている。


 外の庭にテーブルと椅子を並べて、フルーツジュースを飲むスペースを作る。外にはまだ客が一人も来ていない。



「あと5分で開店です。焦らないでいきましょう。」

 カウンターにユカリさん。売り場にシリカさんとジェーンさん。入り口付近にダンバルさんが立っている。ダンバルさんは、黒いスーツ姿で威圧感が強いが、本人はもじもじと落ち着かない様子だ。


 午前9時になりキャンディスイーツが開店した。



 俺が店の扉をあけると、コルトさんが一人並んでいた。


「うおっ!すみません。おめでとうございます。キャンディスイーツがついにオープンですね。まだお客様が来てませんが大丈夫です。宣伝は私がしておきました。トルマの宿では話題になっていたので、これから増えるでしょう。」

 コルトさんが入り口にいたダンバルさんに驚きながら説明してくれた。商業ギルドにキャンディスイーツの説明した紙を張っていたみたいだ。まだお昼前なので、買いに来る人は少ないらしい。


 ダンバルさんは、入り口から少し離れようか。


「イチゴジャムを一つとイチゴクッキーを2つ。オレンジジュースを一つ貰いましょうか。」

 ジャムとクッキーのビンをもってカウンターで会計している。

「商品も分かりやすくていいですね。クッキーも安いので、外でのんびりしてます。ありがとうございました。」

 コルトさんは、庭の椅子に座りクッキーを食べながらオレンジジュースを飲んでいる。購入した商品は、麻袋に入れて渡している。麻袋にはキャンディスイーツのマークが入った袋だ。

 商業ギルドの副ギルドマスターがここにいても良いのかな?まあ良いか。


 コルトさんを見て、道行く人たちが店に入ってくる。


「ここは何屋なんだい?」


「はい!お菓子屋さんです!色んなクッキーがありますよ!」

 おばあちゃんにシリカさんが説明している。


 おっ!クッキーを買ってくれた。ありがとうおばあちゃん。


「ここか!限定のジャムが売ってる店は!トルマの宿では金が無くて買えなかったからな、母ちゃんに買ってやるぜ!」

 声の大きいおっちゃんが来たな。トルマの宿で40個限定で売った時に買えなかったみたいだ。


「こちらの4種類になります。」


「何だと!4種類もあっては悩むじゃないか!」


「申し訳ありません。奥様はどれが好きですか?」


「母ちゃんは、リンゴが好きだな。よしリンゴのジャム1500エルに決めた!クッキーもリンゴのやつをくれ!」


「ありがとうございます。こちらへどうぞ。」

 ジェーンさんがおっちゃんの接客をしていた。

 うん。面白いおっちゃんだ。奥さんへのお土産なのか、気に入ってくれたら嬉しいな。


 ポツポツとお客さんがきて、商品を買っていく。

 ジャムは、1500エルのやつが一番売れている。最初だから様子見で買っているみたいだ。

 クッキーは皆買っていく。一番安い商品なので、買いやすいのだろう。飴玉は売れているが、子供用のキャンディは売れていない。

 フルーツジュースは外で飲む人と、自分で入れ物をもってくる人がいた。フルーツジュースは、1杯200エルでコップを返却すれば、20エル戻ってくるので、入れ物に入れた客は、1杯180エルで買えるのだ。


 宿よりも安くなってきたな。まぁ良いか。



「ダンバルさーん!お疲れ様です!」

 鎧姿の男達5人が店に入って来た。


「ああ。」


「流石ダンバルさんが働く商会だぜ!変な客はいねぇか!俺達が見張ってやるぜ!」


「うるさい。店に迷惑かけるな。」


「すみませーん!ギルドのやつにお土産を買っていきます!何がいいですか?」


「クッキーとジャムだな。パン屋でパンも買って帰れ。」


「分かりました!よしこのでっけぇジャムをくださいな!」

 男達はカウンターで一番大きなジャム全種類とクッキー全種類を複数買っている。フルーツジュースも買って一気飲みしている。あっ!おかわりしてまた飲んでいる。


「ごめん店長。冒険者達だ。」

 ダンバルさんを慕う冒険者達で25歳くらいの大人の男性達だ。Dランク冒険者パーティーらしく、森で一度助けたら好かれたみたいだ。


「ダンバルさん!また一緒に冒険しましょうね!」


「ああ。ありがとうございました。」


「よっしゃ!ダンバルさんにお礼言われたぜ!」とにぎやかに帰って行った。


「良い冒険者達だね。」


「はい。良い人達です。」

 口数は少ないけど、冒険者としてダンバルさんは好かれているみたいだ。まだ15歳なのに大人達に慕われるなんて、冒険者としてどれだけ強いのか気になるな。

 気が向いたらステータスを見せてくれないかな。



 こうしてトラブルも無く、順調に営業していく。


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