第21話 開店準備3日目
明日はついに、キャンディスイーツの開店日。
今日は最後の準備期間だ。
従業員の4人には、店の合鍵を渡しており、午前8時30分までに店に来てもらう様に言っておいた。営業時間と同じ流れを経験するのだ。
俺は午前8時と少し早めに来たが、もう皆来ていた。
「おはようございます。まだ8時ですよ。」
皆さん挨拶を返してくれた。もうすでに掃除も終わらせたみたいだ。
今日は鍛冶屋に行ってビンや看板を取りに行く予定だ。マジックバッグもあるので、注文の品を入れれば重さも気にならない。
鍛冶屋に皆で行くとジャムのビンや看板。クッキーやキャンディの型やクッキーと飴玉のビンなどを受け取っていく。注文していた鍋やフライパン、包丁やまな板などの料理で必要な物も受け取っていく。ジェーンさんが欲しい物も買って上げる。昼食に料理を作ってくれるらしい。
「ダンバルさんごめんね。看板重くない?」
【スイーツショップ キャンディスイーツ】と書かれたキャンディのマークが目立つ鉄の看板は、100キロを越える横長の看板でマジックバッグに入らないので、ダンバルさんが1人で担いでくれた。
空間収納に入れようとしたが、「持つよ」とダンバルさんが持ってくるたのだ。
「大丈夫。軽いから。」と片手で丁寧に持ち上げて肩にのせて、街を歩いていくダンバルさんは、街の人から注目されて顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。
「ダンバル君は凄いですね!強い男の人がいれば、店も安全になりますね!」
シリカさんがダンバルさんを褒める。
「そうね。冒険者は、ガサツな男も多いけど、ダンバル君は優しくて強いので信頼できます。」
「今はCランクですが、今後はもっとランクが上がるでしょう。」
ジェーンさんとユカリさんも褒めている。
店舗に戻ってきて、入り口に看板を飾る。
店に入り、各種のビンを出していく。ジャムのビンとクッキーのビン、飴玉のビンが大量に厨房のテーブルに並んでいる。
ビンをスイーツ空間収納に入れれば、瓶詰めのジャムが完成する。クッキーや飴玉の型が完成したので、早速作ろう。
瓶詰めされたジャムを大量に売り場のテーブルにだして、商品棚に並べてもらう。ジャムの種類と大きさに分けて並べてもらい、値札も張って分かりやすくする。
空になった瓶を店に持ってきてくれれば、ジャムの値段の1割返還する様に分かりやすく壁に張っておく。フルーツジュースのコップと飴玉とクッキーのビンも同じだ。
「どれだけビンとコップが無くならないかが勝負ですね。お金に余裕があればもっと増やしましょう。」
会計担当のユカリさんが真剣に考えている。カウンターでお金を数えている。お釣が足りなくならないように、多めに用意しておいた。
従業員の皆が話をしながら、作業している。ダンバルさんも口数は少ないが、ちゃんとコミュニケーション出来ているみたいだ。
「厨房で作業してますので何かあれば呼んでください。」
声を掛けて厨房に向かう。
クッキーと飴玉の型をテーブルに並べてさっそくつくろうか。
鉄の型に流し込み1枚で50個ほどできる型が各5枚ある。普通は魔法道具で焼いたり、冷やしたりするが、俺は魔法で完成するので、特注で大きくしてもらった。
クッキーをまず作ろう。小麦粉とミルクを混ぜて、型に流し込み火魔法で焼けばミルククッキーが完成だ。50個が2分ほどで完成する。
黙々と作り果汁入りのクッキーも作っていく。型を2枚3枚と増やして行って5枚同時に作る事が出来るようになった。250個が3分ほどで完成していく。
スイーツ空間収納に入れて瓶詰めされたクッキーが、完成した。
「これも並べてください」と伝えてダンバルさんが運んで、皆が並べていく。
「店長!私も厨房に行ってもいいですか!」
ジェーンさんがワクワクした目をして、厨房に入ってくる。
まだ許可してないけど、陳列は3人でも大丈夫そうだな。
「どうぞ。もうすぐお昼なので、昼食を作ってくれませんか?」
「任せてください!」と胸を張り、食材をマジックバッグから取り出している。
俺は飴玉を作ろうかな。
水に果汁を溶かし魔力を込める。型に入れると、飴玉が完成した。取るのはスイーツ空間収納すれば、割れる事なく収納された。
「店長!それで飴玉が出来るのですか!」
「そうですよ。ユニークスキルがあるので、砂糖も無くできますよ。」
「ユニークスキルですか。選ばれた人だけが持つスキルですね。私も負けません!調理スキルはレベル2まで上がっているのでレベル10まで頑張っていきますよ!」
ジェーンさんに、ライバルにされてしまったが頑張って欲しい。ジェーンさんが店をもったらぜひ美味しい料理を食べたいものだ。
調理スキルか。店に余裕が出来たらスキルブックでも買おうかな。自分でスキルを覚えるには限界があるからね。
飴玉も完成し、子供用のキャンディも作っていく。シフォンケーキはまだ作らない事にした。新商品として今後発売する予定だ。
開店祝いとして、ケーキを作ろうかな。
スポンジケーキをシフォンケーキの型でつくり、横から3等分に包丁で切る。生クリームを作り、イチゴを小さく切って、スポンジケーキに生クリームとイチゴ挟んでいく。スポンジケーキの間に生クリームとイチゴが挟まったケーキの周りを薄い生クリームを塗っていく。
「凄いですね。こんなに早くケーキが完成するなんて。」
昼食を完成させたジェーンさんが物欲しそうに見てくる。
ケーキは3時のおやつに食べようかな。
生クリームでコーティングされたケーキは、白い円柱になって物足りないので、イチゴソースをかけていく。
イチゴソースはジャムと違って果肉を液体になるまで煮込んで完成する。イチゴソースの細い線を何本も振りかけていく。白いケーキに赤い細い線が入り見栄えが変わった。
あとは、イチゴをヘタをとってのせていく。
これで完成だな。イチゴのショートケーキが完成した。
「ちょっと大きく作っちゃったな。」
一人分が手のひら2つほどの大きさのショートケーキになってしまった。
「大丈夫です!食べれますよ。むしろ足りないくらいです!」
足りないだって?これはちょっと多いと思うけどな?
「これを5分で作る店長は凄いですね。売れば10000エルでも売れますよ。」
「10000エルか。店が赤字になったら考えようかな。」
「いやいや、この店が赤字になることはありませんよ。あるとすればロイヤルスイーツ商会に目をつけられない限り大丈夫ですよ。」
ロイヤルスイーツ商会ってなんだ?
「ロイヤルスイーツ商会といえばケーキ販売を専門にしている商会です。独自のケーキを販売しているのでもし店長のケーキの方が美味しかったら、打撃になるでしょう。」
村にロイヤルスイーツ商会の店がなかったから知らないな。今度買ってみよう。参考になるケーキがあれば真似してみよう。
「それなら大々的にケーキは売らない方がいいですね。」
「でもロイヤルスイーツ商会はAランクの商会で、貴族様にジャムを売ってますよ?キャンディスイーツのジャムは、ロイヤルスイーツ商会よりも美味しいジャムなので、時間の問題だと思いますよ。」
知らなかった。ロイヤルスイーツ商会はライバル商会になりそうだが、こんな弱小商会なんて気にもしないだろうな。
「まあ、大丈夫でしょう。それよりせっかくジェーンさんが作った料理が冷めてしまいます。皆と休憩にしましょう。」
陳列作業をしていた3人も作業が終わり、店に商品が綺麗に並んでいた。
「ありがとうございます。これで明日の開店に間に合いました。お昼になるので、2階に行きましょう。」
2階は居住スペースなので、テーブルや椅子を並べて、休憩スペースにした。
テーブルにジェーンさんが作ってくれた、料理を並べていく。
料理は、野菜のスープと豚肉のショウガ焼き。生野菜のサラダに丸パンだ。フルーツジュースもある。丸パンにショウガ焼きとサラダを挟んで食べると美味しかった。
会話をしながら、食事をしていたが、皆嬉しそうに食事をしている。従業員の距離も近くなり、ダンバルさんも話を出来る様になってきた。
「午後2時からは、フルーツジュースの練習をしてみましょう。」
休憩も終わり、カウンターにフルーツジュースの樽を出していく。
フルーツジュースは、オレンジ、グレープ、リンゴの3種類にした。パイナップルとバナナもあるが数がたりないので、この3種類にした。
樽はコップ300杯入る大きさで、無くなったら俺が追加していく予定だ。
1杯200エルで販売する。宿屋と同じ値段にしていこうと思っている。
俺が注文して流れを確認したが、問題なさそうだ。
ユカリさんがカウンターで会計担当。
シリカさんとジェーンさんが接客と品出し、フルーツジュースの用意担当。ジェーンさんは昼食も作ってくれるみたいだ。
ダンバルさんは、品出し担当だ。トラブルがあったら対応してもらう仕事も受け入れてくれた。
全員流れを確認できて、無理をしないように頑張ってもらおう。もっと従業員が増えてくれたら休憩を交代で出来る様になるので、今後考えようと思う。
「冷蔵の魔法道具も買いましょうよ!」とシリカさんに言われてたが売上次第で考えよう。
こうして、午後5時30分になり、労働時間が終了した。
「明日はキャンディスイーツの開店です。明日からもよろしくお願いします。問題があったらすぐに言ってください。店を休みにしてでも解決します。それでは、お疲れ様でした。」
「「「お疲れ様でした。」」」
4人は帰宅した。
店に鍵を閉めて宿に帰り、食堂で夕食を食べて、早めに就寝する。宿のフルーツジュースを追加しておくのを忘れないようにしよう。
明日は8時には行こうかな。寝坊しないようにしないとな。
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