第9話 初依頼

 今日は、冒険者として初依頼だ。


 時刻は午前7時。宿の食堂で朝食を注文して受けとる。


 四角いパンに、ベーコンエッグ、サラダの朝食だ。


「今日はトマトソースでもかけようかな。」

 味気ないパンにトマトソースをかけると、酸味と甘味の美味しいパンになる。チーズを溶かせばさらに美味しいだろう。よし買っていたチーズをリュックから取り出して、パンにのせる。火魔法で指先から小さい火を出して焦げないように、慎重に溶かす。


 ふわふわのパンに、カリカリのチーズが乗ったパンが完成した。

「うん。美味しい。」

 一口食べれば口の中にトマトソースとチーズの風味が広がる。パンが味が薄いからとても合う。


 ベーコンエッグをのせたら更に美味しいと思い、のせてチーズを追加する。


 やっぱり美味しい。


 けど居心地が悪いなあ。

「なんだ?他の客から睨まれているな。昨日の夕飯にもいた人達もいるし。何か悪い事でもしたのか。」

 チーズをカリカリ音を出しながら、他のお客に睨まれながら完食した。


「ふう。食後のオレンジジュースでも飲もうか。」

 リュックから木のコップを出して、スイーツ空間収納からオレンジジュースを出し、ジョボジョボ音がなる。オレンジの香りが漂うと他のお客から鋭い視線が飛んでくる。

 オレンジ果汁100%のオレンジジュースだ。不味い訳がない。


 ごくごく喉を鳴らし飲み干す。


「うん!上手い!」

 村のオレンジよりも良いオレンジなのか、以前よりも美味しく感じる。冷やせば更に美味しいだろうが、冷蔵の魔法道具は高いし、大きいので買えない。



 俺は満足したので、食堂を出ていく。

 食堂では冒険者達が店員に何か聞いているが、俺には関係ないだろう。



 部屋に戻り、依頼の準備をする。空間収納Lv1を覚えたので、剣と盾を空間収納出来るようになった。

 時間はまだまだあるので、野菜と果物のミックスジュースを作って時間を潰す。



 そろそろ行こうかな。


 少し早めに冒険者ギルドへ向かう。途中で多めに四角いパンを買って空間収納しておく。

 昼食は外で食べるので、多めに用意する。


 待ち合わせ10分前に冒険者ギルドに到着した。



「キャンディこっちだ。」

 冒険者ギルドに入ると、ジェットさんが手を挙げて呼んでいた。鉄鎧に大きな斧を装備している。


「おう、おはよう。こいつらが俺のパーティー疾風の火炎のメンバーだ。」


「おはようございます。キャンディと言います。今回は荷物持ちの依頼受けました。よろしくお願いします。」

 疾風の火炎は、4人パーティーみたいだ。


「おはようございます。魔法使いのカリンよ。よろしくね。」

 青いローブに木の杖を装備した、金髪女性だ。


「俺はジルだ。剣と盾を使う剣士だ。」

 細身の男性で、俊敏が高そうに見える。


「おはようございます。私は回復魔法使いのクララです。回復と強化魔法を使えます。」

 教会服の様な服装の小柄な女性だ。子供の俺と同じくらいの身長だ。


「今日は、森の中で討伐依頼をする。グレイトボアの討伐目的だが。他の魔物も討伐すれば金になるからキャンディもがんばれよ。素材の剥ぎ取りも教えてやるから心配するな。」

 ジェットさんが笑顔で話す。


 グレイトボアは、大きな猪のCランクの魔物だ。


「はい。初依頼なので、わからないことばかりですがよろしくお願いします。」


 疾風の火炎の皆さんと一緒に森へ向かう。街を出て整備された道から外れると、魔物が多くいる森があるのだ。



 ジェットさんを先頭に進んでいく。


「森についたぞ。ここから魔物が襲ってくるから注意しろよ。魔物が来たら俺とジルが攻める。キャンディは盾でガードしていろ。ゴブリン6匹くらいなら余裕だが、魔法や弓を使うゴブリンがいたら注意しろよ。」


 森に入ると狼の様な魔物に遭遇した。


「フォレストウルフか。2匹だな、俺とジルがいくぜ。」

 ジェットさんとジルさんがフォレストウルフに斬りかかる。


 1分もしないでフォレストウルフは、動かなくなっていた。


「よし倒したぞ。魔石だけでいいか。肉は不味いし、毛皮は安いからな。」

 1匹をジェットさんがさばき、体内から魔石を取り出した。


「キャンディも魔石を取ってみろ。」


 俺も見よう見まねで捌いていく。


「これですね。」

 剣がフォレストウルフの血だらけになりながら、体内から魔石を取り出してリュックにしまう。


 森を進みフォレストウルフやゴブリンなどの弱い魔物しかいない。

 魔石の取り方は覚え、フォレストウルフの皮を剥ぐのも経験できた。


「キャンディ、ゴブリンと戦ってみるか。」

 ジェットさんとジルさんがゴブリンを1匹だけ残してくれたので戦ってみる。


「盾でガードして、剣で斬れば倒せる。ゴブリンも錆びた短剣を持ってるから注意しろよ。」


 俺は1人ゴブリンの前に出る。

 ゴブリンは短剣を振り攻撃してくるが、盾で受ければ問題ないので、盾で受けて剣で斬りつける。


 5回斬りつけたら、ゴブリンを討伐できた。


「はぁはぁ、倒せました。」

 思ったよりも疲れた。


「キャンディは、これからもっと鍛えた方が良いな。1人で森に入るには、力が足りないな。剣を素振りでもして筋力をあげろよ。」


 俺は戦闘向きではないみたいだ。これからもっと強くならないとな。

 ゴブリンから魔石を取り出してリュックにしまう。



「そろそろお昼にしよう。」


 森の開けた場所で昼食を食べることにした。




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