第5話 あやまち
みこが帰ったあと。
私は布団に潜り込み、頭を抱えていた。ああ、やってしまった……欲望をごまかすためとはいえ、みこに、
実の妹に手を出してしまった。なんで、なんでそんなことをしてしまったんだろう。
「ううぅ……」思わずうめき声が漏れる。みこのあの言葉を思い出す。
――はじめてだけど、いいかも。
そう、みこのはじめてを私はうばってしまったのだ。
いつかみこにも恋人ができるかもしれない。そしてキスをするかもしれない。でもそのキスははじめてではない。
「ごめんね、みこ」伝わるはずもない独り言を呟いてしまう。
私は私に嘘を付く。あのキスはおやすみのキスだったのだと、言い聞かせる。そんな張りぼての嘘など理性に通じるわけもなく。後悔の念が押し寄せる。じたじた、じたじたと。私は布団の中で暴れながら眠れぬ夜をつづける。
一時間ほど、そうしていただろうか。きぃ。ドアが開く音がする。私はそちらを向く。
そっと、みこが顔を覗かせる、半分だけ。「ねむれないの」と私にそう告げる。「いっしょにねていい?」
昔、それこそお休みのキスをほっぺにしていた時。私とみこはちょこちょこ一緒に寝ていた。みこが眠れない時や、私が眠れない時もあった。でも不思議と二人で寄り添って寝ればぐっすりねむれた。でも最近は、とんとやらなくなっていた。
どきん、と心臓が跳ねる。どうしよう。いつもの私なら快く「いいよ」と言っていただろう。みこを甘やかすのは好きだから。
……でも今日は、今日だけは。私はかたまってしまう。
みこはゆっくりと私の方へ近づいてきた。明かりを消した状況ではどんな表情をしているかはわからない。
「いい、よね?」とみこは布団をちょっとめくりながら首を傾げる。その声は少しふるえてるようにも感じた。
……私は黙って布団を開く。拒否することなどできなかった。
「ありがとう」そう言ってみこは私の布団に身体を潜り込ませる。
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