ラムネ

nikaidoAtoZ

第1話

高校の購買で普段は見ない瓶のラムネが並んでいる。

「最近、お祭りが軒並み中止で余ってるらしくてね…」


言われてみればそんなニュースを見た気がする。せっかくだから1つ買っていこう、ラムネを飲むのは小学生以来だし。


昼ご飯のお供には合わないけど暑い日なので大丈夫だ。今年は分散登校で夏休みは短いし、お祭りも無い、気軽に外にも行けないし…


教室に戻って机の上でラムネの蓋を開けようとするが塞いでいるビー玉がなかなか下に落ちない。

こんなに固かっただろうか?


「あ…あんまり強く押すと溢れてしまいますよ。」

友達の綾香がラムネと格闘していた私を可笑しそうに見ていた。可愛いお弁当はいつも手作りで美味しそうだった。


「大丈夫だよ、そもそも開かないし、これ」


暑さも相まってなんだかイライラしてきた。こうなったら体重をかけて…


「貸してみろよ、俺、結構開けるの得意だから」

「開けてくれてもあげないよ」


幼なじみの亀山がわたしからラムネを取り上げた。私の机に購買で買ったパンを勝手に広げてピンクの蓋をぐっと押した。

炭酸が弾ける音がしてビー玉がコツンと下に落ちた。

だがすぐに手を離したのが不味かった。

溢れた炭酸がバタバタ私の机に落ちてきた

ヘタクソ…


「うわっ!?お前これ振っただろ!」

「違うよ!ビー玉を落としたら少し蓋を押さえてないとダメなの!」


机にあった綾香と私のスマホを炭酸から避難させて咄嗟に近くにあった亀山のマスクで机を拭いてしまった、しかも口がついてるほうを掴んでしまった。


「俺のマスク!」

「あ、ごめん!」


もうめちゃくちゃだ、両手が塞がった亀山は溢れたラムネの蓋を押さえる。

私は慌ててマスクをハンカチに取り替えて机を拭く。


「文ちゃん、スマホ大丈夫?」


私は退避させてスマホをチェックする、私のスマホは大丈夫そうだ。綾香のスマホも無事だ。

けど確認した時に綾香のスマホの画面のチャットを見てしまった。


かっちゃん[放課後、うちくる?]


けどいまは机の惨事を片付けよう。


「何やってんだよ、ホレ、俺のも使え」

亀山の友達の甲斐がハンカチを私の机に投げる。助かる〜。


やっと拭き終わった。でもハンカチは炭酸でベトベトだ。

こんなことになるならラムネなんか買わなければよかった。

恨めしそうに亀山を睨む、亀山はバツが悪そうに少し減ったラムネを私に返した。


「す、すまん。」

「あとちょっと反応が遅かったら私と綾のスマホが…」

「ほんとごめん…山崎さん、フミノ」


珍しく素直に謝ったな、だけど許さん。


「じゃあお詫びに今週の土曜日にご飯奢りね!」

「なんでそうなるんだよ…お前も俺のマスクで机拭いたじゃん!」

それは不可抗力だ。致し方ない犠牲だった。


「綾もちょっとラムネ掛かってるし綾の分も奢りねー」

「ごめん、ふみちゃん。私、土曜日予定入ってるの」

「悪りぃ俺も土曜日予定あるんだ、埋め合わせは必ずするけどその日は無理だ」

「仕方ないなぁ、貸し1だからね」

「あいよ」

「勿論、俺も奢るよな克也?」

「まぁしゃーねぇな。俺ちょっと手洗ってくるわ、炭酸で手がベタベタする。」


亀山は立ち上がって教室から出た、ベタベタなのにながらスマホだ。こんどはだれかにぶつかるぞ。アンポンタンめ。


綾香のスマホがなったので私は綾香にスマホを返した。ほんと無事でよかった。


私はやっとラムネに手をつけた。

ビー玉が瓶の口をつっかえて、あまり一気に飲めない…

こんなに飲みにくかっただろうか?

私は何度もビー玉を転がして炭酸を飲む、傾けるたびにビー玉が口を塞いだ。



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ラムネ nikaidoAtoZ @Matilda

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