第3話 決意
あっという間に七月に入り、夏休み目前となった。
ここのところ毎日、父と母は荷造りに追われていて、家中には段ボール箱が山のように積み重なっている。
片付けが終わり少し寂しくなった部屋でごろんと大の字になってみた。
ひんやりとしたフローリングを感じながら、遠くで鳴くセミの声に耳を澄ます。夏の暑さが嘘みたい。
天井を見上げて、先日のお別れ会の帰り道のことを思い出していた。
クラスのみんながお別れ会を企画してくれて、ビンゴ大会や出し物をしたり、人気のうたを歌ったり、最後まで楽しい会だったなと余韻を味わっていた。
そのお別れ会の後、いつのもの三人で帰っていた時のことだ。
「ねえ、うち夏休みに入って三日後に引っ越すから、それまでに思い出に残ることをやりたいな。できればすっごく面白くて、びっくりするようなこと」
あややが呟くと双子が不安な顔を見せた。
「出発までの三日間を思いっきり遊べたらいいなと思ってさ」あややが二人に微笑み返す。
「びっくりするようなことをやりたいって」
「面白いこともやりたいって」とうららがきららの言葉に付け加える。
「今年の夏休みは一度きり。大人に邪魔れず思いっきりどきどきワクワクしようよ」
二人の表情がはっとなり、三人で顔を見合わせた。
「…やりたいこと沢山ある!!」
「ということで」
「まずは作戦会議しよう!」
ノートを広げスペシャルプランを次々と書き出していく。
わたし達を見守るように大きな入道雲がいくつも出来ていた。
― 夏休みが始まる ―
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます