第2話 殺人調査

 「人を殺す手順を教えてください」と問いかけて、相手の反応を見る。そういう心理調査があった。

 R先輩は実験に興味を示し、実際に実験を行ってみた。

 応募の実験協力者は百人も超えた。しかし、この学校に限って、少しへんてこな回答があった。

 そのせいでR先輩は不吉な胸騒ぎがして、実験をやめた。

 ぼくは気になって、心理調査の結果や、中止となった経緯についてR先輩に尋ねた。

「変なことがあったんだ」と彼は言った。

「なんのことですか?」

「人を殺すのに、準備段階は何をすべきか、と、学校の生徒何十人も聞いたが……まあ、それはさて置き、君の回答を聞きたい」と先輩は逆にぼくに問いかけた。

「それは、なんだろ、金属製のバットを買います?」

 あれ? なんでそういう答えが出るんだろう。

「ナイフ、カッター、ハサミなど、色々答えがあったのに?」

「……当てずっぽう、かな……」

「ふむ、それでいい。次の質問、殺す場所はどこにする?」

「学校の後ろの森……だとか」

 学校の近くに森があったっけ? いや、西方面の竹林をくぐり抜けると確かに森があった。

「凶器はどこで買ったんだ?」

「ネットで、青色のを」ネットで買い物をすることは一度もなかったはず。青色も好きじゃないし、なぜ質問をしかけた途端すぐに答えられるのが、それも変だ。ぼくはますます嫌な気分になった。

「屍体の処理方法」全然質問じゃなく、まるで書類リストの上に載っている一行の項目を読んでいるだけだ。

ぼくは答えるつもりはなかったが、口が勝手に動いた。

「直接にあの場所で」

「埋める?」

「いえ、燃や、す」

「時間は?」

「夜、1時16分」

「誰に見かけたか?」

「クラスメートの女の子に、でもうまく誤魔化した」ぼくは報告するように言う。

「そう」

「こ、これは一体、いや、ぼくは人を殺すことはありません。信じて」

「でもなんでだろう、誰でもそんなに覚えている」彼は無表情のままぼくを見つめた。

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