ホラー短編小説集
小友幸
第1話 高校新入生
入学したばかりのことだった。
寮のルームメートにはあんまり喋ってくれない引っ込み思案な性格の人がいた。ちょうど入学して一ヶ月過ぎて既に馴染んでいた頃、ぼくはルームメートともっと仲良くしたいので、カラオケでも行こうかなと誘ってみた。
「カラオケでも行く? この六人で」
すると、皆は呆れた顔をして、
「五人だけじゃないか、お前、変なこと言うな」と言った。
でも、確かに六人だったんじゃない?いいえ、何言ってんの、絶対六人じゃん。ほら、いち、に、さん、よん…あれ?
僕を加えて、五人だけだった。
「でも寮に六人用のベッドと机があったよね」
「空いてんのよ、入学以来誰一人も使っていないぞ、その机」
でも確か…
その机へ目をやると、いつもそこに座っていたルームメートがゆっくりとこっちに向いて微笑んだ。
僕も笑顔で…
でも彼は大笑い顔になった、そして歪んだ。それは笑い顔とも言えない顔だった。
あれは、決して人間の笑い顔じゃない。まるで糸で口元の両サイトを強く吊り上げたように見える。
僕は恐怖を覚えて青ざめた顔になった。
「どうしたの?」
ルームメートの声で我に返ったぼくは「いえ、なんでもない」と言った。
気づいたとき、寮には五人しかいなかった。あの怪しいルームメートはもういなくなった。
あの一ヶ月間、ぼくは一体何者と一緒に住んでいるのだろう。
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