第2話 ある第一艦隊特務機関の一日 再び

 姫野まゆは、相棒のキティ・キャット・シャリエティプスに片手を引かれながら、と有る、実験用の宇宙ステーション内部中央にあるメイン通路を全力で走っていた。

 気分は最悪。最底辺を更に掘り下げたかという不機嫌全開状態。

「なんであんなのが宇宙ステーションに現れるのよーっ!!」

 全力疾走中である事も忘れて全力で叫んでしまう位に。

 相棒のキティと言えば、まゆが走る事の出来るぎりぎりの速度を保ったまま、彼女の手を掴んで走り続けている。

 予想通り、息切れで呼吸を乱し、足が縺れてしまうまゆ。

 あわや転倒か?と思われたが、キティの膂力で転倒する事なく其の儘引きずられる事となった。

 それまで、まゆの脚力に合わせ、それなりに遠慮して走っていたキティであったが、相棒の足が止まり、引きずられるに任せる様になったを見て取ると、全速力で奔り始める。

 止まって立て直すのを待ってもらえないかなと淡い期待を抱いていたまゆはと言えば、全力で奔り始めるキティの背中をぼんやり見やってから、あ。もういいかな?と、自分で走る事を諦めた。

 彼女たちの着ている衣類は、連邦宇宙軍正式採用のスペースジャケットを更に強化した特注品。自衛用のレーザーガンや、市販品程度の高周波ブレードナイフでは焦げるか表面に傷が付くか程度の影響しか無いほど強靱だ。

 壁やガードレールにぶつかれば多少痛いだろうが、衝撃吸収と防弾を兼ねた特殊ジェルの層がある。大きな怪我をする事も無いだろうし、何よりもう体力が続かない。引き摺ってもらえば楽ちんでいいや。と、もはや完全に開き直っていた。

 大体からして、今現在こうして必死の逃走劇を繰り広げている原因の大半は、まゆを引き摺り全力疾走を繰り広げているキティにあるのだから。

 各通路に設定されているはずの防衛システムを全て停止させておいて良かったなあ。

 そんな事をぼんやりと考えつつ、壁やら、通路に落ちている空き缶、何かのボルト、工具の破片などを足やらお尻やら背中やらで跳ね飛ばしながら引き摺られつつ、後方から追ってきている大型ロードローラーが、キティの速度上昇によって徐々に遠ざかっていくのをぼんやり眺めるまゆであった。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 星歴二千百十年。地球人類は、天の川銀河の外腕部のほとんどと、核恒星系の一部へとその版図を広げて居た。

 その先。他の銀河やその間の宙域へと進出するのは、まだまだ開発の余地が残る天の川銀河をさておいて手を出すには時期尚早と判断されている。研究目的や実験活動以外の目的で、天の川銀河を遠く離れる者はまだ居ないのが現状である。

 銀河系への進出当初は惑星単位、惑星を改造して各種生命体が生活できるようにするテラフォーミング技術が開発された後は恒星系単位で多数の国家が乱立する混乱状態がしばらく続いたものの、大きな騒動を纏めたある組織を中心として、天の川銀河連邦政府が樹立され二千余年が経過する。局地的な騒動や、色々な混乱は各地に残るものの、穏やかに纏められた国家集団として存在している。

 政府設立当初に於いては、覇権争い等のゴタゴタに対応擦る為、現在に於いては連邦の治安維持と警察権行使、対災害派遣などの福祉事業のために、銀河連邦宇宙軍が存在する。

 その第一艦隊、銀河中央付近の まだ生物が発生する前の若いG型恒星を安定させ、この周りに九十度間隔で巡る四つの惑星を二つの公転軌道に用意。合計八つの惑星を配置し、種族ごと生活しやすい環境を維持した人工の太陽系。天の川銀河連邦本部太陽系に駐屯するのが第一艦隊であり、その中に、研究特捜艦体所属の特務機関がある。

 姫野まゆとキティ・キャット・シャリエティプスの二人組は、此の機関に所属する軍属扱い民間人である。

 姫野まゆ。黒髪ボブで十六・七の少女にしか見えない女性。連邦宇宙軍第一艦隊特務機関所属の大将待遇軍属。登録された年齢は二十二歳。目は濃い茶色の黄色人種。テラ星系のモンゴロイド系と呼ばれる種族だ。この種族の特徴で、身長は百五十八センチと小柄。やや幼い感じの体型で容姿も幼い。

 そして、キティ・キャット・シャリエティプス。鮮やかなブルーグリーンの長い髪を頭の後ろでポニーテールに纏めた女性。大佐待遇の軍属で、登録された年齢は二十三歳。耳が大きく、エルフ属のように、笹の葉のようなとがった形をしておりかなり目立つ。目も大きく、白目に見える淡いグリーンの部分は瞳の虹彩。瞳に見えるのが瞳孔で、縦長である。テラ星系の猫型獣の目と同じ構造に見える。口元には大きな八重歯が覗く。肌は白く、身長は百七十五センチ。猫から進化したシャリエティプス種という、既に滅亡した文明種の生き残りである。

 二人を始めとして、特務機関に所属するメンバーの中で、ほぼ半数は軍人扱いの民間人である。これは、軍人では対応出来ない状況に於いて、民間人であれば軍記を超えた行動が取れる事を狙ったもので、此の部署が、宇宙軍における便利屋たる所以でもある。ぶっちゃけて言うと、命令系統に縛られる事がない。

 自由裁量で行動し、場合によっては軍人に命令出来るよう、かなり上位の官位待遇を与えられている。

 見た目通りの年齢ではその様な権限が与えられるはずもなく、実際の年齢はかなりのものとなる。まゆは高位のエスパーで、能力によって老化を止めている。キティは長命種だ。まだ寿命が尽きた個体が存在しない発見されてからの歳月が若い種族なので、何処まで生存するのかが判っていない。本人達も、孤児として保護され、約二十年で現在の見た目まで成長五郎かが止まっている。発見、保護当時がおおよそ三歳だったため。二十三歳で登録されている。

 そんな特殊な部隊を纏めている部隊長は、秋山信二上級大将。全身くまなくサイボーグ技術やバイオニック技術で改造された元サイボーグソルジャーで、老化が止まって久しい。二十八ぐらいの外見でかなり見目麗しい部類の男性。

その外見から、階級が上級大将などと言うとんでもないものと、本人を知らなければ考えもしないため、事前通達の行われている将官以上のものを除き、階位に関するトラブルがよく見受けられ、実は密かにその状況を楽しんでいる強者でもある。

 そんな秋山隊長から、二人が一通の依頼書を受け取ったのが、休暇明けで出勤してきた今朝方の事。

 内容はバグが発生して制御を失った宇宙ステーションの暴走を止めるというありきたりなもの。ところが、一般航路にほど近い場所での事故で現在通行が制限されてしまっている。

 最寄りの連邦艦隊駐屯地へと、対応の依頼が回ったものの、艦隊に処理をさせようとすると、書類の手続きが煩雑で時間が無駄に掛かる。更に実際に書類化して各部署を回るため、物理的にも時間が必要となるのだ。電子書類の捏造対策で、未だに書類が全廃出来ていない現状が弊害を生み出す実例である。

 関係各所の責任者自署によるサインが、電子ファイルの暗号化やコピー対策に対して、今もって複製対策として有効な事実が廃止の出来ない理由でもあった。

 その点。民間人の特務機関隊員であれば、軍人では無いため電子書類でも融通が利くよう、規律整備されており、対応が早いんじゃ無いかと、気を利かせた駐屯地の責任者から、秋山隊長の下へと回ってきたものだった。

 そして、ちょうどネギを背負った状態で出勤してきたのが件の二人である。即決で二人の担当案件と決定した。

 本人達にしても、特に複雑な内情も無く、速度優先であるだけの案件に二つ返事で了承し、其の儘緊急出動となったのが今朝八時三十分の出来事だ。

 二人の専用艦。ハイパージャンプが可能な恒星間航行用艦艇としては最小型に分類されるハミングバード級の[ペガサスⅡ]は、その全長二百メートルの艦体には完全に不釣り合いな、マーレオネス級ジェネレーターを二機搭載する特別仕様。

 本来それは、全長が五百から千メートルのスターリング級と呼ばれる中型恒星間宇宙船用で、通常一艦に一機が搭載されるジェネレーターである。

 本来必要なはずのほぼ半分。約一時間で現場に到着すると、直ちにステルス機能を巧みに使って、ステーションの外部監視機能を無効化して接近、ドッキングに成功する。

 その後も、軍御用達の欺瞞システムでステーションの防御機構を全て無効化し、中央コントロール室へと到着するのに約三十分。道中、防衛装置の接続を、中央コントロールに設置されたマスターシステムから切り離し、動作不能に処理しつつも、驚異的なスピードで到達している。

 そして、依頼にあったマスターシステムのコントロールコアを取り外し、メインジェネレーターを停止させる処理を開始した時に、その事故は発生した。

 キティが、手に持っていたアサルトライフルの銃床を、今、ジェネレーターの停止処理制御を実行中であるサブシステム本体のパネルに叩き付けたのだ。

 パネルは砕け散り、ひしゃげ、内部の電子パーツは辺りに飛び散り、派手な破裂音に伴ってスパークやら小爆発やらで盛大に黒煙と炎を噴き上げた。

 当然のごとく、停止処理に向かっていたはずのジェネレーターは一転。暴走を開始した。

 制御装置であるサブシステムが機能を失ったのだ。シャットダウンの指示だけ受けて、出力制御も監視もされず次のコマンドも来ないで放置されれば当然の結末である。

 辺り一帯、いや、ステーション全体に非常警報が鳴り始める。ジェネレーターの暴走を検知したセンサーが、システムに関わりなく知らせる警報である。

 最終警報とも言う。

 問題は、何故キティがこのような暴挙に出たのかであった。

 叩き付けられ、完全に変形したキティのアサルトライフルの銃床とそれが破壊したパネル部分に原因があった。いや原因の痕跡が残されていた。

 ちぎれた長い触覚。黒に近い焦げ茶色のぬらりと光る破片。飛び散った節足動物特有の足。地球が発祥地で有り、至る所で繁殖し増え続ける生物。英名の頭文字が[]、和名では[}若しくは一部に於いて[}から始まる、アレ。

 キティ最大の弱点であった。

 此の生物と、キティの相性は最悪である。理由はその遺伝子にあるらしい。何故か、これを見た瞬間、手に持ったもの、近くにあるもの、とにかく殴りかかる事が出来そうなものさえあれば全力で叩く。無ければ、鈍器になりそうな手近にあるものを何でも使う。さらには、手が届かないと判断すれば、投擲、銃撃、砲撃など、攻撃手段を加減しなくなる。それが、どのような場所で有っても重要な場所や物であっても。本人の意思は関係なく見た瞬間に叩く。又は撃つ。もはや条件反射であり、本能である。これはもはや事故である。

 まゆは、常々そう考える事にしていた、数年に一回あるかないかのこの事態を。

 そして、今思う事は、何で此所で出てくるかなーであった。既に、どう対処すれば良いかなど、考える事自体を放棄していた。

 一方で、それ・・が原型を失った事で攻撃本能から解放されたキティは、手に持っていたアサルトライフルだった物を放り出すと、まゆの手を掴み走り出す。まゆもその刺激を受けて現実に戻り、慌てて追従する様に走り始める。

 宇宙ステーションの使うエネルギー全てを賄っているジェネレーターが暴走を始めた。停止させようにも制御装置は全て破損。メインシステムにコアを戻せば、と一瞬考えた物の、サブシステムがコントロール権を持ったまま機能していない今、コントロールを取り戻す手段がない。残るは暴走の果てに限界を超えて爆散である。脱出するほか出来る事は無い。

 幸いな事に、ステーションに居る人間はまゆとキティの二人のみ。更に、キティの暴挙に呆然としていた間も、メインシステムの全データを収めたコントロールコアは手に握っていた。これがあれば依頼は失敗にはならない。依頼内容はコントロールコアの回収と出来ればステーションの全機能停止。そう、飽く迄出来ればなのだ。依頼者が言葉を選び間違えたのかも知れない。遠慮しちゃったのかも知れない。何か別の書類から確認せずにコピペしたのかも知れない。文章の前後から考えて、出来なくてもなんとかして欲しいと言う感情が溢れて来ていた様な気もするが、出来ればなのだ。そう書いてある。依頼書の内容を思い返しつつ、言い訳を考えるまゆだった。

 そんな事を考えて、まゆが現実逃避をしている間も、キティは、まゆが維持出来る絶妙な速度で走り続け、メイン通路に飛び出し、ちょうどそこに放置されていたロードローラを蹴り飛ばす事で方向を九十度変える。今度はメイン通路を走り始めるキティ。引っ張られたまま走るまゆも、当然の事同じ動きを取る事となる。そして、その衝撃で何故かロードローラーのモーターが起動した。メインパワーが落とされていなかった様だ。重ねて何故か二人の後を追う様に走り出した。最高速度は三十キロほど。今の二人の全速力にほぼ等しかった。

 そして、冒頭の逃走シーンとなった。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 どうしてこうなっちゃうかなーなどとぼんやり考えていたまゆの身体に、緊急加速状態で発信した際の、慣性質量制御装置イナーシヤルキヤンセラーが吸収出来る限界を超えた加速Gが襲いかかる。慌てて意識を現状把握に切り換えるまゆ。ぼんやりとキティに引き摺られていたはずが、既にペガサスのコクピットでシート放り込まれ、現在ステーションから緊急離脱の最中だ。イナーシャルキャンセラーの限界を超えた加速でステーションを離れている。いや、試作品の重力減衰装置イナーシヤルアブソーバーに加えて人工重力発生装置グラビティジェネレーターをカウンターモードに切り換えて追加で作動させているとパネルの表示を見て気付く。夫々、イナーシャルキャンセラーと同等、及び半分程度の慣性質量減衰効果があったはずだ。元々軍用のキャンセラーを改造し、五割ほど能力を増していたはずなので、合計すれば通常の三倍以上の減衰能力が得られているはず。

一体どれだけの加速を掛けているのかとデーターを確認しようとした瞬間。後方確認用のモニター画面がハレーションを起こしホワイトアウトした。

 直ぐにアイリス調整とフィルターの保護で映像が戻ってくるが、真っ暗な中で光が急速に広って行くだけの映像だった。 実験ステーションのジェネレーターが内圧限界を超えて、ついに爆発したのだ。数十万度を超える熱とエネルギーの拡散により、ステーションはほぼ一瞬で蒸発したはずである。巨大な質量がほぼ一瞬でガス化し、一気に全周へと拡散を始める。 一方、後方確認モニターがホワイトアウトした瞬間から、キティはペガサスの加速を一気にゼロに戻し、メインスラスターを閉鎖する。同時に二基のジェネレーターの全開稼働状態を保ったまま、シールド装置と、イナーシャルキャンセラー、イナーシャルアブソーバー、グラビティジェネレーターにほとんどのエネルギーを接続すると。残ったエネルギーでサブスラスターとサイドスラスターを使い、機体を百八十度反転させその姿勢を維持するために機体の自動制御を姿勢維持で全力作動させる。外部からの衝撃に対して一番頑丈な機首側を爆心部に向けて、衝撃波や溶け残った飛来物を避けるためだ。

更に、球形カプセル形状になっていて、非常時には脱出カプセルとなるコクピットユニットを機体内部で回転させ、乗員を衝撃から守る角度へと変更する。

 直後に亜光速で衝撃波が到達した。

 一瞬で通過する様な生やさしい衝撃では無い。爆発の規模から見て約二分。しかも、巻き込まれて吹き飛ばされる形になるので、実際には十分を超えて衝撃波の嵐にさらされる事になる。

 機体の各外部を映し出すスクリーンは、飛来するガスや衝撃波、ステーションの破片などを中和するために全開動作中の真っ白に光ったシールドを映しているだけだ。荒れ狂う電磁波やエネルギー波により、レーダーやセンサーも真っ白にハレーションを起こした状態で使い物にならず。外部の様子は全く判らない。そして、ついには次々に、表示されていた映像が消えて行く。外部モニター装置が全滅した。

 尤も、そのスクリーンを使用するパイロットであるまゆとキティは、シートベルトを着用する余裕も無く発進してきたために、現在、全身をエアバッグに包まれ固定されているので、見る事はおろか、身体を動かす事さえ出来ないのであったが。 やがて、十数分の悪夢の時間が過ぎ去った時、役目を終えて萎んだエアバッグにくるまれてぐったりするまゆとキティの姿があった。周辺では、ほぼ全てのモニタースクリーンが真っ赤に点滅し、各種アラームが様々な音階で鳴り響き、インジケーターで正常を表す表示は一つも無い状況である。現在、コクピットは閉鎖され、独自の補助エネルギーで生命維持装置が作動している状態。バッテリーで救難信号を発信しつつも、ペガサスのメインジェネレーターは沈黙し、自力で移動する事はもはや不可能であった。

 ややあって、のろのろと自分の身体を覆い、絡みつくエアバッグのなれの果てを丸めると足元に押し込み、身体を起こしてアラーム音とモニターの警報表示を止めるまゆ。其の儘機体の状況を判る範囲で確認し、再びシートに埋もれる。

 そこでキティがようやく動き出す。

「ふえぇぇぇぇぇぇぇ。怖かったよー」

 泣きながら自分のシートからまゆの埋まっているシートに移動し覆い被さる様に抱き付いた。

「なんでこんな宇宙の真ん中まであいつは現れるのよー。うえぇぇぇぇん」

 そっちが怖かったのかーとキティの頭をよしよしとなで始めるまゆ。

 彼女の[G}に対する異常性は、遺伝子レベルで何か書き込まれているという事までは判明している。異常な恐怖心を攻撃性に転換し、発見次第殲滅する性格が成り立っている。しかし、文明自体が残っておらず、僅かに生存していた猫型獣人が、何故遺伝子操作を受けているのかまでは判っていない。異常に強力な力や体力、四肢の欠損ぐらいまでは再生可能な治癒能力、並列思考による疑似身体加速能力など、生体兵器だった事をうかがわせる点は数多い。それらの能力により、彼女たちだけが、文明崩壊後も生き残っていたらしい事までは推測出来るのだが。今、僅かに発見された異物や記録の解析を待っている状態であったが、最初の発見から既に五百年。一向に進展していないのが現状である。

 さて、身動きの取れない現状、救難信号は既にハイパー通信網に今現在も発信継続中。ハイパージャンプ同様、異空間を近道するため、通信のタイムラグが起きない画期的な通信方法だ。これがなければ、一つの星系内、惑星間の通信ですら何時間もの待機時間が必要になってしまう、非常に便利な代物だ。やがて、発信源を探知したどこかの警備艦か近くの軍艦が拾ってくれるだろう。

 先ほど確認した機体の状況は判定[大破]。ペガサスⅡは、全長二百メートル、最大幅百八十メートル、最大高さ百十メートルの上から見ると二等辺三角形。横から見れば艦底後部に直角を持つ直角三角形に近いシルエットを持つ。

形状は、三角翼を持つ航空機を大きくした外観で主翼とX字尾翼、カナード翼が付いている。本来不要な翼が付いているのは、大気圏内での機動運用を想定しての事で、通常は冷却用の放熱フィンとして使用される。その外観での特徴である翼は全て破損。大気圏で飛行する際に使用するダクトファンも破損。サブスラスターも一基が欠損。外殻はほぼ全面が焼け焦げており、メインジェネレーターもオーバーヒートで焼き付いて破損停止。姿勢制御も当然失われており、現在複数の回転軸が絡み合った複合スピン状態。スピンの回転速度がゆっくりであった事は不幸中の幸いだった。

 まあ、実験用で、小型に分類されるとは言え、ステーションの爆発に近距離で巻き込まれたのであるから、寧ろ良く原型が残っていたなといった所だ。全長が千メートルを超える様な戦艦が持つシールドに匹敵する出力の特注シールドジェネレーターを搭載したペガサスで無ければ、コクピットユニット毎蒸発していても不思議では無い状況だったのだ。

 その様な被害を出した爆発の衝撃波も、爆心からの距離の三乗に反比例し、更にエネルギー自体の蒸発で一気に減衰していくため、問題になった現在通行規制されている近場の一般航路当たりまで離れれば、若干の横風を受けて進路が乱れる程度までは弱まっている事だろう。大きな問題が起きる事は無い。

 救難信号を見つけて誰かが拾いに来てくれるのはいつ頃かなーなどと、これ以上考えを巡らせた所で、変わる事も、改善する事も、対処する事も出来ないあらゆる面倒な考えを頭から追い出して、キティを慰めつつものんびり救助を待つ事にしたまゆであった。

 二人の乗ったペガサスが回収されたのは事故から六時間ほど経過してからだった。脱出時の速度に加えて衝撃波で吹き飛ばされた速度も加わって、結構な移動速度で慣性漂流状態だったため、探すのが大変だったらしい。複合スピン状態を止めるのにもやや時間が掛かり、更に一時間ほどが回収作業で費やされた。

 回収に来たのは、第一艦隊特務機関所属遊撃艦体に最近配備された新造の重巡洋艦だった。所謂テスト配備である。実際の実働艦隊に配備される前のモニターを兼ねている。艦長はベンジャミン・ウオルター大佐。まゆとは、何かと縁がある軍人の一人だった。

「お手間を掛けます。艦長」

「何、新造艦の慣らし運転と乗員の習熟を兼ねてのドライブですよ。お気になさらずに」

 艦橋に案内されたまゆが礼を言えば、そんな返事が返ってくる。

「それで、コントロールコアの回収は大丈夫なんだろう?嬢ちゃん」

「そっちは大丈夫。ジェネレーターがシャットダウン開始直後にサブシステムが壊れちゃってねぇ」

 お互いに挨拶を交わした直後から、口調がフランクな物に変わる。

「まさか、新造の実験ステーションで事故るとは思わなかったわよ。わたし」

 チラリとキティに視線だけを送るまゆ。

「え!?例の事故か?最近聞かなかったじゃないか。そうか。使用期間が長期にわたっているステーションならともかく、建設から間もないステーションじゃ、対策なんぞ、考えもしないわなぁ。建造から一年経って無かっただろ?あのステーション」

 気の毒そうに応え返すウオルター大佐。キティ達の事情も承知らしい。

「五ヶ月と二十日だったかな。まさか、もう入り込んでるとは思わないから完全無警戒だったよ」

 はぁ、ッと深く溜息を一つ溢すまゆ。

「まゆ、お疲れだねぇ。早く帰って休もうよ」

 疲れの原因のほとんどを占めるはずのキティは、その事実に気づきもせずにまゆに労いの言葉を掛ける。

 ますます落ち込むまゆ。

 二人の掛け合いを眺めるウオルター大佐も、困った様な苦笑いの儘、どう声を掛けようか悩み始める。

「大佐殿。お話中失礼いたします」

そこへ、通信担当の当直隊員が声を掛けてくる。

「秋山隊長から此の後の予定変更指示が参りました」

「こっちへ回してくれ」

 応えてから手元のスクリーンへ地指示内容を表示する大佐。確認を終えると、航海班へと進路の変更指示と直ちに移動開始と指示を出してから、まゆとキティに話しかける。

「隊長からなんだが、このまま依頼主の本星まで行って先にコントロールコアを渡すようにとの事だ。で、その間に二人は怪我の治療と放射線の被曝量検査のために船内の医療ポッドで隔離だってよ」

「わたし怪我な…ムームー」

 慌ててキティの口を両手で押さえたまゆが応える。

「了解です。たいちょーめ、始めから何か情報持ってやがったな」

「その可能性が高そうだな」

 二人で顔を見合わせて溜息を一つ。

「んじゃ、俺がコアをわたしがてら経緯の説明しとくわ。医務室まで案内するから一通り教えてくれや」

「手間掛けさせてごめんなさいね。ベン。此の見た目で無きゃわたしが行くんだけどねぇ」

「まあ、外見なら俺が行けば問題なかろう?丸め込んで見せるさ」

「有り難うございます」

「ベン大佐。かっこいいねぇ」

 まゆの礼に続いてキティが褒める。

「お。キティ嬢ちゃん嬉しい事言ってくれるねぇ。まあ、任せておきなって」

「お願いしまーす」

 因みにベンはベンジャミン・ウオルター大佐の相性だ。普段、まゆとキティは彼をベンと愛称で呼ぶ。大佐は、と言えば、まゆを嬢ちゃん。キティをキティ嬢ちゃんと呼んでいる。もちろん、二人の年齢が見た目とかけ離れている事も承知の上だ。

 二人を医療室に案内しつつ、事の経緯を教えてもらい、二人がポッドに入って検査とまゆの打撲治療が始まった事を確認後、艦橋へと戻るウオルター大佐。自分の席に着いた時には、超光速ドライブの準備が完了していた。

「それじゃあ、行ってくれ」

 直ちに超光速ドライブへと移行し、目的地の星へと飛行を開始する。約一時間ほどで目的の星の衛星軌道近くへ到達し、超光速ドライブを解除、衛星軌道上の大型ステーションへと接近を開始する。

 来訪目的の報告と、ドッキング許可申請を行い、ステーションの一角へ、艦の動きをステーションの動きに同期させた後ドッキングを完了させる。

副長を伴って、ウオルター大佐がステーションへと向かう。今回の依頼人であるメーカーから、依頼品の受け取りにやって来る責任者達と、ミーティングルームを借用して面会する事となる。

 二人が借りた部屋は、ちょうど大佐達の重巡洋艦がよく見える部屋である。今、重巡洋艦後部底面には、表面が焼け焦げて、見るからにスクラップと化したペガサスが固定、曳航されており、此方の様子も非常によく見える。

 準備を整えた二人の耳に、地上からの定期シャトル便が到着した旨のアナウンスが届く。

 副長が、出入り口近くに待機する中、ややあって来訪者が到着、インターホンの呼び出し音が鳴動する。

 大佐が、相手が予定の人物である事を確認し、副長がドアを開け、来客を部屋の中へと招き入れる。

「わざわざステーションまでお運び頂きお手数をおかけいたします。急ぎの任務中、ご依頼のコントロールコアを先にお引き渡しするようにと命が下りまして、慌てて進路変更の上、参上いたしました関係で地上まで降下する時間が取れませんでした。申し訳なく思います」

 頭を下げたままの様に謝罪する大佐に、慌てた来客達。

「いやいや。報告書と共にお送り頂く物とばかり考えておりましたので、このように迅速に御対応頂いて、帰って申し訳なく…」

 反射的に謝罪を返してしまう。来客達の後方から、大佐の横へと移動しながら噴き出しそうな顔になった副長を見て、自分も客に見られぬ様口元を歪めた後、真顔に戻って下げた頭を戻すウオルター大佐。

「ご了承頂けて安心いたしました。さ、此方へお掛け下さい」

 そう言って応接用のソファを示す大佐。来客は三名。

「連邦宇宙軍第一艦隊特務機関遊撃隊所属のウオルターと申します。お見知りおき下さい」

 三人が腰を下ろすのを待ってそう自己紹介した後自身も腰を下ろすウオルター大佐。

「こ、今回の依頼をさせて頂いたハイファット重工業株式会社で開発事業部長を任されておりますヤンと申します。隣が技術主任のウエンソン。もう一人が開発責任者のサワキです」

「彼方に停泊させて頂いております重巡洋艦の艦長の任に付いております。此方は副長のライアン中佐です」

 そう言って副長と、窓の外に見える自身の艦を紹介する大佐。

「立派な艦艇ですね…もしや、新造艦ではないですか?」

 釣られて係留中の艦体を見た後、圧倒された様に感想を述べるヤン部長。完全に大佐のペースに巻き込まれているが、会社側の三名は気が付いていない。

「艦の後方に曳航されておられるのは宙賊の艦を拿捕されたのでしょうか。就航早々お手柄ですね」

 サワキが、ボロボロのペガサスを見て反応した。

「あぁ。いや、此の艦はまだシェイクダウンが終わっておりません。曳航しておりますのは今回の依頼に当たった隊員の乗艦で、自力航行が不可能になったために回収に参りました」

 何でもない様に説明するウオルター大佐。しかし、技術関係の職に就いている三人は度肝を抜かれる。三人の所属するハイファット重工業でも戦闘艦の製造を行っている。彼ら基準で言えば、あの状態にまで破損した艦の乗員が無事で帰還出来たとは到底思えなかったのだ。自分たちの依頼を受けた者が殉職したのではないかと想像してしまっていた。ペガサスの外観はそれほどまでに酷い状態だったのだ。

「もしや、犠牲になられた方が…」

 恐る恐る問い掛けるヤン部長に対し、殊更何でもない様に答えるウオルター大佐。

「何、命に別状はありません。回収して直ぐ医療ポッドへ放り込んできました。現在治療と精密検査の最中でしょう。それで、此方が回収して参りましたステーションのコントロールコアです。ご確認下さい」

 大佐の言葉に合わせ、副官のライアン中佐が三人の前にコントロールコアを収めたケースを差し出す。

 ロックを解除して蓋を開けると、サワキが携帯型端末を取り出し、ケーブルを接続して記録を確認する。

「間違いなく、実験ステーションのコントロールコアです。有り難うございます」

 ケーブルを外し、端末を片付けて礼を述べるサワキ。

「それで、ステーションについてなのですが…」

 言いにくそうな様子で、主任のウエンソンが切り出す。ウオルターは、ウエンソンが言いよどんだ所で話を切り出す。

「医療ポッドに収納するまでにおおよそ話を聞いておりますのでお伝えします」

「お願い致します」

 一つ頷いて話を続けるウオルター大佐。

「まず、接近、ドッキング、内部への侵入に関しましては、問題なく進行したようです。軍独自のステルス機能を全開にした。と申しておりましたので、御社の索敵技術はかなり高レベルではと判断致します」

「お褒め頂き、恐縮です」

「次に、通路や内部核施設の防衛機能ですが、此方は隊員が、従来の技術を駆使して全て無効化したとの事です。今回担当した者は、連邦軍内に於いても最も技能の高い部隊に所属しております。此方も技術レベルは高度な物と判断致しました」

「有り難うございます」

「中央のマスターシステムですが、トランスポンダの読み取り回路に於いて、インジケーターランプの共鳴発信が見られたとの事です。コアを確認頂ければ原因は掴めるのではないかと申しておりました」

「その様な現象が…」

そして、ジェネレーターのシャットダウン作業ですが、メインシステムとサブシステムの切り換え、並びにシャットダウンへの移行までは正常に進行致しました」

 三人が頷く。

「しかし、シャットダウン開始直後、サブシステムが破損する事故が発生。システムは停止し、ジェネレーターが暴走致しました。破損時の状況ですが、ジェネレーターの監視中突然破壊音が響き、確認した所サブシステム本体の一部で破損と発火、放電が見られたとの事です」

「破損に至った原因については…」

「原因と断定は出来ない物の、破損箇所におきまして、某節足動物の体組織が一部確認出来ております」

「節足動物…ですか?」

「一般的に言う、昆虫です」

 昆虫、と言う言葉を口にした瞬間、部長以外の二人がピクッと身体を震わせた。

 それを見て、心の中でにんまりと笑うウオルター大佐。

「黒茶の甲殻の一部、長さ五センチほどの触覚と思われる組織、棘の生えた足の一部、と言った所を確認出来たようですが、ジェネレーターの爆発が迫ったため。サンプル取得は諦めて脱出したとの事です。」

 表情に出さず、事実(の一部)だけを告げる。

できるだけ・・・・・、ステーションを静止させて欲しいとのご依頼に関して、叶いませんでした事、担当者に代わってお詫び致します」

 そこまで話し、立ち上がって副長と共に再び頭を下げるウオルター大佐であった。

 ややあって頭を上げ、座り直して話を続ける。

「今回の対処につきまして、本部に戻り次第報告書としてまとめ、お届けさせて頂きます。依頼完了の確認につきましては、その際同封させて頂きますのでご確認午後返送をお願い致したいと存じます」

 そこまで述べて、話を終える。

 三人は、顔を見合わせた後、ヤン部長が代表して言葉を発した。

「隊員の方が生還された事が奇跡とも思える状況のようですし、最重要項目であるコントロールコアの回収は完了しております。報告書は後日でかまいませんが、依頼完了の確認は此所でさせて頂ければと思います」

 ハイファット重工業の三名、すっかりウオルター大佐の話術に飲まれ、これ以上の要求は出来ないと思い込んでいる様である。

「ご配慮、感謝致します」

 そう一言告げると、副官が一冊のファイルを三人の前、ヤン部長に向けて差し出した。開いたファイルの中は依頼完了確認の書類。ヤン部長が、サインと電子捺印を施す。反転して差し戻された書類に、ウオルター大佐も同じようにサインと電子捺印を打ち、確認書を剥がし受け取ると、残った複写部分をファイル毎ヤン部長へと手渡す。

「それでは、これで此所での我らの任は完了となります。わざわざのお運び、有り難うございました」

 立ち上がって応接セットの脇へ立ち、副官と並んで頭を下げるウオルター大佐。つられる様にハイファット重工業の三人も立ち上がって礼を返す。副官が出入り口を開き脇で待機すれば、三人が部屋から外へと向かう。それを追って大佐と副官も部屋の外へと見送りに。ん任が通路を進んで角を曲がった所で一旦部屋に戻りドアを閉じる。

「すっかり大佐のペースでしたね。嘘はないけれど、肝心な所はほぼ話していないじゃないですか」

「相手は納得しているんだからかまわんだろ?」

 ライアンが呆れれば何の問題が?と平然としているウオルター。

「あの様子だと、ペガサスの二人が大怪我してる、と思い込んでいるでしょうねえ」

「お見舞いが来るかもしれんな」

「ステーションの保証もして欲しかったんでしょうに。何も言い出せず帰って行くし」

「保険があるんじゃないか?言ってくれれば支払われたかも知れんが、一言もなかったしなあ」

「言わせなかったんでしょうに。悪い人だなぁ」

 ハイファット重工業の三人が聞けば爆発間違い無しの会話を繰り広げつつ帰り支度をする二人であった。

 やがて、大型ステーションを離れ、特務機関の本部へと向けてハイパードライブに入る重巡洋艦。

 その医療室から艦橋に戻り、その後案内された個室で机に突っ伏すまゆの姿があった。

 手元には小型の音声レコーダー。大佐とハイファット重工業が行った面談の全てが録音された物だった。

 後で齟齬があってはいけないと渡されたので確認したのだが、あんまりな内容に気力が抜けてしまったまゆである。

 キティは意味が分からないのか無事にお仕事終わったねーとご機嫌である。

 そこへ、ノックの音がドアから聞こえた。

 キティが小走りに近寄って開けてみれば、ウオルター大佐が立っていた。

「嬢ちゃん達、俺、頑張っただろ?」

 と、ご機嫌な様子。

「いや。なんと言って良いやら…始末書がなくなったんで、お礼を言うしかないんだけどね?」

「そうなの?ベン大佐。ありがとー」

 まゆの言葉に手放しで喜ぶキティ。

「どういたしまして」

「これ聞いちゃったら素直に有り難うが出てこないよ。ベン」

 小型のレコーダーをさして溢すまゆ。

「何言ってる。本気の嬢ちゃんだったらもっとあくどいじゃねーか」

「そうなんだけどね?」

 なにげに酷い事を言われた筈が、否定しないまゆ。

「連邦軍の余計な出費を防いだんだから。喜んでくれや」

「はいはい」

 普通にスルーした。

「んでよ?メインシステムの暴走ってのもやっぱアレか?」

 [G}が絡んでいるんじゃないのかと訊ねてくる。

「いやー、そっちはホントの事故じゃないかな。と思ってる。何処に潜り込んでたのかね?」

 まゆは否定的だった。

「なんか心当たりはありそうだったぞ?昆虫って言葉に反応してた。現場の二人」

 録音では分からない情報を渡すウオルター大佐。

「そっかー。何が気になるんだろう? とーぶんこの星系には近寄らない方が良いかもねー」

 にっこりと笑顔でお礼を返すまゆ。

「帰ったら他の連中にも伝えとくよ」

 話に区切りが付いた所でキティがウオルターに質問を投げる。

「此の重巡、綺麗だしおっきくって良いよねぇ」

「広い。確かに広いな。外寸に差がないってのに内部空間が五割増しだぜ? しかもハミングバードクラスの小型艦が二艦載ってるし、ホントは格納庫にペガサスも入るんだけどな」

 広いと言ってもらえて、かなり嬉しそうな様子のウオルター大佐。旧艦の時は、隊員の私室やメイン以外の通路の狭さに結構悩まされる事が多かったらしい。

「小型艦ってメインスラスターのちょっと前辺りにあるブースターのバーニアに見える奴?」

 キティの質問を聞いて、そんなの有ったっけ?と一瞬考えるまゆ。

「目が良いな。そうだ。アレ、ホントにブースターとしても使えるらしいッてんで機関部員が試したがっててなぁ」

 大佐も驚いている。ちょっと見には分離出来る小型艦には見えない造りなのだが。

「ペガサス、曳航にしたのは何故?」

 今度はまゆが訊ね、仕事の話に戻った。

「ステーションでの使い方も含めて隊長殿の指示」

 救助に向かい出港時する際に格納しないで曳航する様指示された事、回収後に来た指示で、先の面談で相手に見せる様指示された事を明かす。

「…やっぱなんか知ってるな。あの親父」

 上官に対する遠慮や敬意が全くないまゆである。

じゃねぇのか?」

 大佐も大概であった。

「残念な事に、腹がない」

 理由も酷い。確かに、秋山上級大将。モデル並みにスタイルが良い。

「なるほど。なんか余計に悪そうなイメージだな」

「合ってるでしょ?」

「確かに」

 笑顔を向け合う二人の周りに黒い物が見えそうな雰囲気である。

「ベン大佐、ベン大佐ー」

 それを全く気にしていないキティの呼びかけ。此方も大概大物である。

「なんだい?キティ嬢ちゃん」

「大佐、第三艦隊とお仕事する事ある?」

「当分予定はないはずだけどな。何故?」

 妙な質問に首を傾げながら答えるウオルター大佐。

「あそこの提督、姫野グループ敵視してるからさー。此の船、姫野でしょ」

 キティの指摘通り、普段軍艦受注をしない姫野が特注で受けた艦である。試験を兼ねての特注であった。まゆとキティのペガサスも含め、連邦宇宙軍では非常に珍しい存在の一つに数えられる。

「あそこの提督って、ディーアモント・インダストリアルの倅だっけな。気をつける。有り難う」

 納得した。と頷く大佐である。かの提督の実家が、艦船の受註に絡んで姫野重工、姫野インダストリアルを嫌っている事は関係する業界に於いて、非常に有名な話であった。

「嬢ちゃん達、連中と出会ったら大変そうだよな」

「とーっても大変。船は姫野重工製だしまゆは家名が姫野だし…」

「いつぞやもまぁ、階級章すら確認せずにねちっこく絡まれた事」

 二人揃って深く溜息をつく。

 大将待遇に絡んだ奴はどうなったんだろう?とか、なんと慰めたら良いんだろうか?とか、ウオルター大佐が考え込む。

 ちょうど、その話の切れた所でタイミング良くウオルター大佐の端末にコールが入る。

「おっと、艦橋でお呼びだ。それじゃあな」

「又後で」

「ありがとねー」

 二人の声に送られてウオルター大佐がいそいそと部屋を出る。

 まゆはと言えば、どうせ入港出来るまで、まだまだ時間が掛かるとみて、備え付けの端末を起動して報告書の制作に取りかかる。

 キティはソファで横になった。

「キティ、現場到着時刻何時だっけ?」

「十時四十七分三十五秒」

「トランスポンダに変調掛けて反応チェック始めたのは?」

「五十四分二十二秒」

「接近開始が十一時ちょうどで有ってる?」

「十一時一分十五秒」

 ……

 見た物は全て記憶しているキティは、まゆにとって便利な記録装置扱いの様である。

 キティの趣味嗜好に合わない案件は、思い出すのに非常に時間が掛かるという難点はある物の、連れて歩けば全てが記録出来るのだから大変便利だ。行動を起こした時刻を記憶する位は仕事のウチと判断している様で、ポンポンと返事を返している。その分。書類仕事は全てまゆが担当する事になっているらしい。

 今回の依頼に関して、現地到着の時点から順を追って記載して行く。接近のためのステルス対策や接近コース。ドッキングするまでに対応したセキュリティに対するハッキング。コントロールを検知されない様に奪い取る手口やステーション各部の状態をモニターしているセンサー類のジャミング。内部を移動する際の防衛設備の無効化と検出センサーの欺瞞。メインシステムに察知されない様にサブシステムと入れ替える手段など、使用した手段、装置を列挙する。

 どれもこれも、銀河中に張り巡らされた情報ネットワークに於いて検索すれば調べる事が出来る物ばかりで対処しているため、ぼかした表現をする必要も無い。逆に言えば、周知の技術だけで侵入出来ましたと言っているのだが、そこは全く気にしていないまゆである。報告書を読めば、担当技術者が頭を抱える事は間違いないだろう。対策が全く出来ていませんでしたと言われているのと同じ事なのだから、当然である。

 最後の部分にステーション消失に至った事故の状況を記載。実際にまゆが目にした例の生物が残したらしき残骸について書き添えて、何故事故に至ったかなどの考察を一切加えずに、時系列に沿った重大な事実を記載して報告書を書き上げる。

 必要最小限の表現で報告書は作成するべきだ。調査報告書ではないのだから、記載する内容は簡潔にして、何時、何処で、何が、どのようにして、どのような結果に至ったか、読み手側に必要な事を・・・・・・・・・・漏らさずに記載し、読みやすく簡単明瞭が良いのだ。

 おおよそ書き上げた報告書の推敲を終え、提出可能な書式で整えた直後のタイミングで、重巡洋艦の接岸完了が報じられた。

 キティはと言えば、まゆが報告書の推敲を始めた当たりで暇になり、現在は居眠り中だ。まゆに肩を揺すられて寝ぼけながらも起き上がる。

「本部、着いたの?」

「まだだよ。別の港。此所で降りるからね」

 キティが起き上がるのを見て、作業していた端末から、自分の携帯端末へと報告書を移動するまゆ。キティの応えながら二人の退艦準備を整える。

 荷物を持って、部屋を出るとまず、艦橋へと向かう。接岸が完了し、弛緩した空気の環境へ到着すると、まず艦長のウオルター大佐に挨拶を送る。

「色々とお手数をおかけいたしました、大佐。又面倒な事案でご一緒しましょう」

「お気を付けて、大将待遇殿。是非簡単な事案でご一緒したいですな」

「それじゃベン大佐。又本部で食事一緒に行こうねー」

「前回はキティ大佐待遇の支払いだったな。今度はおごるよ」

「楽しみー」

 まゆは艦橋の隊員達に一礼した後、キティは大きく手を振ったまま艦橋を後にする。通路ですれ違う隊員達にも礼を告げつつ乗艦口から桟橋へ降りる二人。

そこは、特務機関の本部にある格納エリアと違い、様々な種類の宇宙船に対応可能な各種装置が山の様な数で、しかし整然と並べられているエリアだった。桟橋には、二人を出迎えに来た人影がある。軽く右手を挙げて近付いてくるのは百七十センチほどの身長の女性。栗色で腰まで届く髪を首の辺りで雑に束ね、ポケットが沢山付いた作業用ブルゾンを引っ掛けて、ジーパンに丸首のシャツという極めてラフな出で立ちだ。化粧の気配はない。但し、切れ長の目の美人。

「久しぶり。又、派手に壊したね」

 といきなり本題に。ペガサスの破損の事で間違いはない。

「キティの機転で回収だけは出来たよ。最悪奥の手使わなきゃだった」

「衝撃波浴びるまでになんとか艦首を爆心に向けられたよ。ぎりぎりだったー」

 複雑な構造のメインとサブの巨大なバーニアが並ぶ艦の後方の構造は非常にもろい上、推進のためのタキオンジェットを通過させるシールドは、艦首のそれに比べれば極めて弱い。艦体を覆う特殊な装甲板も、圧倒的に艦首側に強度が振られている。爆発の衝撃波から逃れようと、全力の加速を続けた状態で艦の後方から受けていたならば、爆散していた可能性がかなり高い。その事を言っている。

「どの位まで離れられたの?」

「うーんとねぇ、一分位で爆発したから多分一光秒なんて、離れてないと思う」

 おおよそ三十万キロの距離が取れなかった。重力制御装置を三連フル稼働で加速重力約六千G相当を中和し、それを越えたGが人間の限界点と言う状況で加速を続けたのだが、超光速飛行に移る余裕すら取れなかったと振り返るキティ。因みに、九十秒で速度を速六千キロメートル(光の速度の二パーセント)まで加速した時、その加速度は六千七百Gを超える。その間に移動出来る距離は二十七万キロメートルほど。

「ほぼ爆心じゃん。それ」

 そう言って呆れる女性。

「ジェネレーターが姫野インダストリアルか羽根プラント製だったら蒸発してたよね。他社製で助かったよ」

 頷きながら応えるまゆ。

「ノースウエイブH・Mヘビーメタルのもやばいよ?」

 キティが追加したメーカーも危険だった。三社揃って、小型強力高性能。が謳い文句だった。

「逆に、それだったらステーション爆発してないから」

 憤慨した表情で訂正する女性。

 暴走した程度で爆発する様な柔な安全制御回路を作ったりしないと言い切る。最後まできちんと止めてこその安全装置だよ。との事。全くその通りだとは思う物の、なかなかそうならないのが現実なのではないかと考えたが、口にしないで置くまゆだった。

 さて此の女性、キティとまゆが到着した格納エリアを持つ巨大な人工惑星。姫野重工業所有の工場惑星で統括責任者を務める[西村小百合]という。見た目の年齢は二十七前後。もちろん、極々一部例外を除いて此の年齢で統括などという地位に就ける物でもなく、やはり長命化した人間である。まゆ同様、ESP能力に優れているが、学者肌で、物を作ったり弄り倒すのが好きという性格なので、専らそちら方面へと能力を使用している。微細な加工や組み立てがサイコキネシスを使えば簡単だとは本人の弁なのだが、まゆに言わせれば、そんなわけは無いんだそうだ。どちらの言い分が正しいのかに関しては言及しない方が良さそうである。

 ところで、何故此の工場惑星に寄り道したのかと言えば、目的の一つは破損したペガサスⅡを預け、修理してもらうためである。そしてもう一つ。基本、小回りの利く宇宙船、又は宇宙艦がないと、なかなかに回しにくい仕事であるため、代わりの艦を入手する目的もある。幸いに、と言って良い物か、ペガサスⅠの残骸から、復元が完了していると、以前話を聞いていたため、そちらを使おうかと考えている。

 ペガサスⅠは実働試験中に、ジェネレーター制御プログラムのバグで大破した過去がある。爆発四散したのはジェネレーター周りを中心として、機体の後方だった。前方は、乗員脱出のための脱出カプセルとして切り離し、発射したために残っている。自力での長距離航行は無理でも、今回の様に仲間の艦に回収してもらう事で帰還を果たした。データーや制御コア部分が無事だったため、フレームから新造して、改めて組み上げたという事だった。

 予備艦として保管しておくと伝えられていたので、破損した艦体の返納に合わせて受け取りに来たというわけである。

 回収された船体は、徹底的に解析し、船体構造に加えられたストレスや設計通りの強度が維持出来ているか、制御系の反応速度が適正だったのか、処理状況に不具合がないか、想定しているとおりに動作、反応、し、強度を発揮していたかなど確認される。その結果が、市販される船舶の設計にフィードバックされ、技術力や商品の性能を高めていくのである。

 技術者達にとって、宝の山である。係留が完了するや、直ちに群がってきた作業員によって、ウオルター大佐の艦に曳航されてきたペガサスⅡの機体は素早く搬送され、此の格納エリアにその姿は既にない。

 既に出港許可が出たウオルター大佐達は、離岸作業を開始し、時期に特務機関本部へと向け出発するはずだ。

重巡洋艦が桟橋から離れたのを手を振りつつ見届けると、ペガサスⅠの保管されている格納エリアへ向けて歩き出す三人。

エリアの扉を抜けて通路に出ると、小百合の乗ってきたと思しきコミューターが一台停車している。三人で乗り込むと直ぐに移動が始まる。

「ちょっと外観が変わってるわよ」

 走り出したコミューター内で小百合が話し始める。

 以前二人が使用していたペガサス(当時はⅡ号艦がなかったため、Ⅰは付いていない)は、バドミントンの羽根シヤトルコツクからその名を取ったと言われる、宇宙開発初期段階の一時期、某合衆国が使用していた再利用型宇宙船を其の儘大きくした様な外観を持っていた。リフティングボディに近い形状だ。大気中での操艦を想定し、三角翼を持っていた。それがどのように変わったのか。三十分ほど走行して到着した格納エリアにその答えがあった。

 上から見た形状は二等辺三角形。底辺よりも高さが三割ほど長い形状。底辺の両端が八十度ほど持ち上がって、ウイングレットを兼ねた垂直翼。垂直翼は此の二枚だけで、機体正面最後部に、タキオンジェット用の吸気口を持つ特殊形状のメインスラスターが中央に一つ、その両脇に、同じ形状で二割ほどサイズの小さいサブスラスターが左右一機宛。側面から見た形状は通常の航空機が持つ翼の断面に似た形で大きさは全長と全幅はⅡ号艦と同程度。高さが半分ない。機内の収納スペースはペガサスⅡの半分あるだろうかと思えるサイズ。博物館で写真などを見る事が出来るが、BWBブレンデツドウィングボディと呼ばれる構造の実験機、Xー48Bを大きくしたというイメージ。

「わおおぉぉぉ。かっこいいよおぉ」

 キティは一目で気に入った模様である。

「…もうこれ、Ⅲ号艦で良いんじゃない?」

「マスターコアとメインシステムが初号機の儘なのよ。機体が一号艦だって言い張るんで変えらんなかった」

 おや?と首を捻ったまゆ。

「メインシステムのAI、自我持っちゃった?」

「そんな感じ。まだあんまり積極的な接触はないけど、Ⅲ号艦だけは受け付けなかったわね」

「あ、そぉ。…こりゃぁ、ちょくちょく使ってあげないといじけたりしそうねー」

 いじける。と表現したまゆ。最上級のAIシステムでまれに見られる症状で、その個体が苦手な分野の指示を受けたり、拘りのある分野を否定された時などに命令の実行に異常な負荷が掛かり、処理に妙な遅延が発生する事があってそれを指している。思考ルートの選択対照が絞り込めない状況が起きていると推測されている症状だ。致命的な遅れではないものの、気にはなるものだ。処理の遅い、通常のAIでは見られない所が、自我を持つと表現される由来らしい。尤も、AIが進化した先と思しき機械生命体と呼ばれる人たちも、現在の一般社会で多数共存しているので、今さら感もあるのは否めない。

「上手く使ってちょうだい」

「判りました。最悪Ⅱ号艦をルナ達に使ってもらえば良いかぁ」

 と、キティと同様シャリエティプス人の同僚とその相棒を頭に思い浮かべるまゆだった。

 Ⅰ号艦はキティでなければ扱い切れそうもないという直感が働いていた。Ⅱ号艦は割と素直で、誰でも扱える所が特徴だった。多分これ、相当癖の強い機体だぞ、とまゆの直感はささやき続けている。キティに任せておけば大丈夫。と言う絶対的な信頼もあるため、心配するわけではないのだが、自分が代行する時がなー、と言う部分で引っ掛かっている様だ。

 頑張って欲しいものである。

「キーティーッ」

 まゆがキティに大きな声を掛ける。はしゃいだキティが、人工重力が作用した状態の桟橋を離れ、無重力の格納エリアでハンドジェットで飛び回りながら、艦体をあちらこちら見て回っていたのだ。キティと二人で、変更点や注意点を聞く必要がある。

 尚、ハンドジェットというのは、拳銃型等の圧縮空気噴射装置で、無重力空間を移動する為の反動推進ツールである。因みに、ボンベを内蔵しているわけでは無く、周りの空気をその場で圧縮しているだけなので、真空空間では使えない。気密シールドの効いたドック専用ツールとも言える。

「まあ、外形から判ると思うけど、前のⅠ号よりは良くなったけど、Ⅱ号ほど大気圏内では機動力がありません」

「羽根がないからだねぇ。なんでカナード付けなかったの?あればかなり動けそうだよ?」

「!!…発想がなかったわ。設計してみるわね」

「お願いしまーす。下反角付けてくれれば面白いかも」

「了解。次に、ジェネレーターはⅡ号より出力が上がってるから加速性能が更に高くなっちゃったのよね。バーニア減らしたのに…」

 困り顔で説明する小百合と話を聞いて困り顔のまゆ。

「なんで困っちゃった系なの?」

 出力が上がるのは良い事なのでは?と不思議そうなキティ。

「なので、重力制御を常時三重にしました。Ⅱ号の緊急用が常に作動してる感じになるわ」

「あのでたらめな加速が常に出来るって事?」

 嬉しそうに問い返すキティ。二人の表情の原因だった。

「しないでね?」

「はーい」

 まゆの制止の言葉が非常に残念そうな顔のキティだ。小百合は苦笑いの表情。

「後、積載量が少し減っちゃったから、乗っける物は考えて。それと、主翼…で良いか、先端近くまで色々おけるスペースがあるけど、高機動時に思いっきり振り回されるから覚悟する様に」

「重力制御が追いつかない?」

「センサー増やしたけど上手く安定しないの。まだ制御が下手なのね。ちょっとプログラムを見直し中です」

「判ったー」

「これは搭載スペースが関係するけど、電子ビーム砲が一回り小さくなっちゃったから、それとは別に開発中の陽子ビーム砲を付けてあります。口径に比べて発射出来るエネルギーが電子ビームの倍近いから取扱注意で」

「又難しい理論の兵器をポンポンと」

「最後、表面の装甲パネルだけど、新素材で軽いんだけども強度は二号と変わんないから気をつけてね」

「了解しました。後は判んない事が見つかったら連絡するね?」

「メールにして?、チャットや通話じゃ多分対応出来ない」

「了解でーす」

 手を軽く振って別れると、まゆとキティはペガサスⅠへと乗艦、小百合はペガサスⅡの解析を指揮するために解体が始まっているであろう修理用ドックへと向かった。

 コクピットに到着すると、周辺の確認から始める二人。

「Ⅱ号に合わせてくれてあるね。助かるよー」

 コクピット内の配置が、ペガサスⅡと同じにそろえてあった。Ⅰ号からⅡ号へ乗り換えた際、配置の違いに戸惑って苦情を言った記憶が甦るまゆだ。

 確か、あの時は「慣れて」とにっこりとした一言で終わったんだよな。と思い返す。頑張って慣れてみれば、Ⅱ号艦の配置の方が理にかなっていて遙かに扱いやすかったなぁと、今さら以前の配置に戻れなくなっている自分に気付く。

 手早く確認した後、休眠させてあるジェネレーターをアイドリングに切り換える。

 内部温度が順調に上昇していくのをモニターしつつ、航行に必要な装置を片端から起動させ、管制室へと出港の許可申請を送る。

 準備が完了するまでには許可されるだろうと気軽に、早めに送ったのだが、直ちに許可が帰って来たのを見て面食らうまゆだった。

「早。この前まで最低五分は待たされたよね!?」

「早い分には問題ないよー」

 キティにはすこぶる大好評の模様。熟々待たされるのが嫌いな奴だなー。と横目でにらみつけてみるが、全く効果が無いのだった。

「あれ?…まゆ? 超光速飛行ワープ機関と超空間飛行ハイパードライブ装置がバージョンアップされてるよ?」

 キティに告げられて確認するまゆ。ハイパードライブ装置は、精度の向上と、ハイパーレーンへの移乗速度が若干上昇している他もう一点。しかし、ワープ機関の改良は離陸速度が必要なくなっていた。これまで、ワープを行うためには、あらかじめ相応に飛行速度を上げておく必要があった。おおよそ、光速度の一パーセント。秒速で三千キロほどに加速しておかないと、ワープに移行出来なかったのだが、確認してみれば、静止状態からワープが可能となっている。一体、どんな技術革新があったんだ?と首を捻るまゆ。

 直ぐに、考えた所で判るわけもないという事に気が付くと、疑問は後で小百合にでも訊けばいいか、と棚上げしておく事にする。

「じゃ、安全な距離、離れたとこで試してみようか。マッハ十で百キロ移動した後W3xp(ワープスリー)で星系外まで移動してみよう」

「了解」

まゆの指示を受けて設定を修正するキティ。此所で、まゆの指定したワープスピードは三。光速×十の三畳で千C(光速の千倍)での移動、という事である。

 準備が万端整うと、ゲートのシグナルが青の儘である事を確認し、管制室へ出港の信号を送り、桟橋から格納エリア中央へと離岸する。

エアーシールドをくぐり抜けて人工惑星の格納エリアから、宇宙空間へとイナーシャルコントロールで移動。人工惑星の防御シールド範囲から外に出た所で艦首を九十度上方向に変更し、メインバーナーを噴射、飛行を開始する。

 其の儘百キロほど人工惑星から離れた所で、新しいワープ機関をテストしてみようとマッハ程度の速度からワープに移行するペガサスⅠ。メインスラスターから後方一万メートルにわたる噴射炎が伸びた直後、光の帯を残し、あっさりと、ワープして行くのだった。

 此所までの発進に伴う一連の動きだが、格納エリアから直接バーニアを噴射して移動連れ馬良い様に思えるのだがそうも行かない事情がある。

 それは、現在の宇宙船が搭載するバーニアのスラスターノズルから噴出されているのは、科学ロケット噴射やジェット噴射のような燃焼ガスでは無く、内部ジェネレーターによって生成されたタキオン系重粒子である事に由来する。

 此れ等は、ノズルから吐き出される際には光速を越えた速度を保持しているが、噴射後、急速にその保有速度を減じ、光速に至った所で崩壊する。宇宙空間では、この時に主には光波やエネルギー波、僅かな重力波などををばら撒いて消失してゆくのだが、周囲に空気程の密度でも物質粒子が存在すると、爆発的な熱反応を起こして数千度から場合によっては一万度を超える熱が発生する。格納エリア内部や、宇宙空間にでた所で其の儘噴射をすれば、ステーションや人工惑星に多大な被害を与える恐れがある。これを避けるため、安全な防御シールドの外まではイナーシャルキャンセラーや、港湾設備のトラクタービームで移動し、更に、機体の向きを九十度変更する事で、安全の確保をするのだ。

 但し、連邦軍には、緊急時のスクランブルがある。この時ばかりは、施設の破損にかまっていられなくなるのだが、これは専用の特殊な港湾施設が用意されており、スクランブル担当の機体が配備される事で解決している。具体的には、強力なシールドを、格納エリアと、そのゲート部分周辺に展開できるように設計されているのだが、噴射の吹き戻し対策として、前方後方両側にゲートを持つ、パイプ構造となっている。何処の格納エリアでもこれを採用すれば良い、とは行かないのである。

 ダクトファンという、空気をジェットエンジンの様に噴出する装置を使う事もあるが、推力が弱いので船体の大きな恒星間飛行可能な宇宙船ではほぼ採用例がない。太陽系内の移動専用のヨットと呼ばれる百メートル以下の宇宙船での採用が多い。

 さて、ワープでハイパージャンプ可能空域に近付くペガサスⅠのコクピットでは、キティがハイパーレーンへのジャンプアップ準備を終えていた。

 後はハイパーレーンへと飛び込むだけの状態で待っているキティ。苦笑いしつつ、ハイパードライブ装置のもう一つ改良された機能を試してみるか、と装置の確認をするまゆ。

 実は、ハイパージャンプを行う際、ワープ航法を修了し、通常航法に戻る必要がある。いや、あった。ジェネレーターのエネルギー供給が間に合わないからだ。しかし、此のⅠ号艦は其の儘ジャンプ出来る。

 超光速、超空間。どちらの機関も、ジェネレーターの能力をぎりぎりまで高める事で稼働している。しかし、ペガサスⅠのジェネレーターは、Ⅱ号艦のそれよりも更に出力アップされていた。Ⅱ号艦のそれは、マーレネオス級という、通常全長が五百から千メートルのスターリング級と呼ばれる中型恒星間宇宙船用で、通常一艦に一機が搭載されるジェネレーターと同等の出力を有している。そんなジェネレーターを二個搭載するというトンデモ仕様である。そのジェネレーター出力が、更に上昇していた。もはや、全長千メートルのクロウ級大型恒星間宇宙船に使用する、シール級と呼ばれるジェネレーターに近かった。いや、下手なメーカーのそれを越えている。しかし、サイズはハミングバード用のマーミンク級並というもはや何でもありだな、姫野重工はと呆れる以外無い状況の代物だ。

 試作機であり、安定性に保証はないに等しい。一般のユーザーが中出力領域以上を扱えば、恐らく数分で暴走させて大爆発となるであろう危険物ではある。調整を必要とするパラメーターが多すぎて、開発担当の技術者クラスでなければまともに動かせないレベルだ。仕事柄、出力が高いに越した事はないと、扱いを覚えたのである。だから搭載して扱う事が出来ている。頑張ったのだ。大変だったよなーとしみじみ回想にふけってしまう程度には。

 出来る事はやってみよう。と、試してみた。但し、速度がW3xp(ワープスリー=光速の千倍)は実験には少々早過ぎるので、W0xp(ワープゼロ)、光速で行う事にする。

 速度を光速まで落とすとペガサスⅠは、ワープ航行中の儘、ハイパーレーンへとジャンプアップした。

 レーンに進入すると同時に、キティの目がまん丸になるほどに見開かれた。

 ワープ機関を解除しつつ、同時に、其の儘超光速が維持されているのを確認すると、艦体前方下部と後方上部のサイドスラスター、艦体の姿勢制御や方向転換に使う小型バーニアだ。これを最大出力で噴射、艦体が九十度上を向くと同時の今度は前上部と後ろ下部を同様に噴射して百八十度反転した所で回転を止める。そしてメインスラスターを全力で噴射開始する。当然、重力制御が吸収しきれない加速度領域へ突入するのだが、これは、設定した限界船内Gに至るとリミッターが作動してそれ以上の加速をカットする。

 速度が速すぎた。そして、此の空間では、秒速三十万キロの速度が、ワープ機関を使用せずに維持できることが初めて確認された。通常空間のワープは、謂わば超空間を纏って無理矢理超光速を実現している。その為、ワープを解除すると移行前の速度に戻るのだが、ハイパーレーンでは超光速を維持出来るのではないかという学説があった。世紀の大発見ではあるのだが、当然それどころではない。

 ハイパーレーン。超空間と呼ばれるとおり、空間である。当然そこを移動する為には、移動速度が必要となる。ハイパーレーン自体は、筒状の帯として存在する超空間内の安定した領域となる。ジャンプアップすると、レーン空間の一番外周に近い部分から中心部分へと向かって、空間へ侵入する際に持っていた宇宙船の速度が速くなっていく。

 空間内で速度を上げる方向に変更すると、自然に中心部方向へ、下げれば外側へ変化する。同じ軌道にいる宇宙船は同じ速度と考えて良いのだが、中心部に関しては例外となる。一定以上の速度の宇宙船が全て集まってくる。実際は光速の半分を超えた宇宙船の通行する帯域が狭いので、ひとかたまりに感じてしまうのが理由ではあるのだが。

 今、ペガサスは此所に飛び込んできた。中心部付近を航行する他の宇宙船は、おおよそ光速の半分程度まで加速して飛行していた。そこへ光速と等倍とは言え、ワープ速度で飛び込んできた。前方に他の宇宙船がいれば追突する。と、船外センサーで近隣にいくつか見えた船影が、あっという間に後方へ消えていくのを見て判断したキティが大慌てで緊急減速を行ったのだった。

 重力制御装置の能力限界を超えた加速度が、(この場合減速度といった方がわかりやすいが)二人を襲い続ける。艦を振興法航行法へと反転させたのは、メインスラスターが最も加速力を持つからであり、上下に反転させたのは、艦の形状が三角の板に近い事から、上下方向のサイドスラスターの数が多く。反転速度が横に回転するよりも早いからである。

 やっと、周りの宇宙船と速度が同程度まで落ちた所でメインスラスターを止め、再度、今度はゆっくり反転し、艦首を進行方向に戻すキティ。

 速度を維持するために、メインスラスターを再度噴射する。真空とは言え、若干存在する気体や微粒子の抵抗で、徐々に減速していくのを補うためである。そこで、ようやく二人の緊張が解ける。大きな溜息が、同時に零れた。

 ややあって、

「ワープ中のハイパージャンプ禁止!絶対無し!!」

 叫ぶキティ。

「激しく同意!封印する!!」

 直ちに、ワープ中のハイパージャンプに関する機能を全て封印するまゆ。

「「吃驚したー」」

 全身から力が抜けてシートに埋もれる二人。これ以上無い恐怖体験だった様だ。

 その後は、精神力を使い果たしたか、管制官や港湾作業員に本気で心配される様な模範的操艦で祈祷、接岸作業を完了すると、特務機関事務室絵と帰着した。

「「ただ今」帰りました」

「お帰り、管制室と港湾事務局からキティどうかしたのかって問い合わせがあったんだが?」

 ヘロヘロになって戻ってきた二人に声を掛けたのは特務機関隊長職の秋山信二上級大将だ。

「いや、さすがにキティも今日はやんちゃする元気が残ってませんでしたよ」

「つっかれたよー」

 口々に答えを返すまゆとキティ。

「んで、隊長?何の情報掴んだんです?」

「いや、ハイファット重工業な、今回の依頼出すのと同時に大量の昆虫型ドローン購入してたんだよ」

 信二から、しれっと答えが返ってきた。

「「は!?」」

「ディーアマントテクノロジーのタイプCって奴。まゆは知ってるだろ?」

 タイプCのCは、cockroachのC。

「アレか!!」

 思い当たったまゆが床にへたり込む。

「なんか依頼の内容が引っ掛かったんで調べたら出てきたのが大漁購入の履歴。事故はホントだったんだろうが、軍の特殊な装備やら技術やら観察、記録する気だったんじゃないかなぁ。こつちには内緒で」

「それで昆虫の体組織って言葉に反応したのかー。あぁ、ハイファット重工業ってあのグループ傘下の企業だよ!ベンに伝えとかなきゃ…」

 色々合点がいって納得したまゆ。某企業グループに対する忌避感はますます増大している様子である。

「そうすると、此の報告書、良い感じにカウンターになりますかね?」

 そう言いながら、手元で携帯端末を操作して、帰りの道中仕上げた報告書を送る。

 デスクの端末でそれを開いて確認する信二。

「既存の装置と手段だけで対処か。今回に関しては、最上級なんじゃないか? 事故で近づくのも大変なステーションにドローンを仕込んだ件といい、ステーションの消滅といい、苦労と費用に見合った成果がゼロって言うのは」

 にやっと笑ってサインと承認印を押して送り返してくる信二。

「有り難うございます。多少溜飲が下がりましたね。依頼元へ送っておきます」

 ミュの報告書送付を確認し、依頼書の完了処理を行う信二。

「お疲れさん。んで、帰りに乗ってきた船、実験艦の三号艦か?」

 初めて見る機体に、各部署からも問い合わせが来ているのだった。

「いえ。船の外殻は変わっちゃってますけど、中身はペガサスⅠ号艦ですよ」

 それを聞いて納得したという表情を見せる信二。

「どうかしました?」

「いや、トランスポンダの情報と外観情報が一致しないって問い合わせが多数来てるんでな」

「あれ?姫野重工から情報届いてません?」

 疑問に思ったまゆが問い掛ける。

「いや?来てない…あぁ。今届いた…」

 溜息を溢しつつメールを確認し、関係各所へと船体の情報を配信する。

「小百合さんにしては珍しいね」

 いつも仕事の早い姫野重工統括の顔を思い出しつつ声を掛けるまゆ。

「まゆ宛になんか謝罪メールが着いてるんだが…身に覚えはある?」

 信二の問いに、一瞬何のことだ?と言う顔を見せたあと、はっとしてキティを振り返る。

 それまで自席で机に突っ伏していたキティも顔を上げてまゆを見ている。

「「ワープ中のハイパージャンプ!」」

 同時に叫ぶ。

「なんだその危険なワードは」

 いやそうな顔の信二。

「新しくなったペガサスに付いてたんですよ。ワープ飛行中にハイパージャンプ出来るって機能が」

「帰りに確認で試して死にそうになったよー」

 説明しつつ、信二の席に向かう二人。それを見て、まゆ宛のメールを此の端末で開けって事だと判断した信二がメールの開封をする。

「やっぱ小百合さん知らなかったのかー」

 文面を確認し、机に両手を置いたままへたり込むまゆ。

「ある技術者って、こんなの石沢夫婦のどっちかしかいないじゃんかー!! もーっ」

 キティは、犯人の目星を付けて怒りの叫びを上げる。

「リカちゃんだろうなー。龍はさすがに無断ではやらないと思うぞ?」

 頭を抱えつつも、旦那の方を擁護する信二。

「わたしも同意ー」

 まゆも賛同した。どうやら、姫野重工では暴走技術者として内外に有名な夫婦らしい。全くもって迷惑な話であった。

「今度の休日、高級スイーツ食べ放題!」

「リカちゃんに奢らせよう!」

「「けってーい!」」

 二人で息巻くまゆとキティだ。死にそうになったわりには安い慰謝料だなぁと思ったが、決して口に出さない信二である。 一応、テスト状況位は知らせておけよ、とアドバイスして、帰宅準備を始める信二。

 時計は、もうすぐ日付が変わる。

「明日は午後からでも?」

 昼まで半休を求めるまゆ。

「それでいいよ。明日は事務仕事ぐらいしかないだろうしな」

「「了解。お疲れ様」」

 二人揃って隊長を見送る。

 日が変わって二時間ほど、キティの記憶を頼りにワープ機関とハイパージャンプ装置に関するレポートを纏めて、小百合の元へと送りつける二人だった。

 その後、姫野重工が所属する姫野グループ本部から、銀河連符政府に当ててハイパーレーンの特殊性についての論文が提出される事となる。

 内容は大雑把に記すと、

 一つ。ハイパーレーンにおける、移動物体の持ち得る最高速度は、光の速度までである。これを超える速度でレーンに進入した場合、その速度は光速にまで、減速される。

一つ。ワープ航法にて飛行中にハイパーレーンに移乗した艦船は、ワープが解除され、先に述べた様に最高速度の光速に減速される現象が確認された。ワープ機関自体は稼働状態を維持しており、タッチダウン後に再度ワープ航法に移行する事が確認されたので、厳重な注意が必要である。

 一つ。ハイパーレーンに於いて、追突、接触といった事故は、その移動物体同士の持つ速度差が、秒速十メートル以下の時にしか起きえない。レーン空間の特殊性で、速度差が秒速十メートルを超えた物体は存在出来る空間の階位が違っているためと考えられる。これは、一ヶ月にわたって実験と観測を重ねた結果から断定した事象である。レーン移動速度が速い艦船ほどレーン中央を、遅い艦船は外側を使用するよう、自然に区分される現象も此の事象が原因と考えられる。

 以上の現象報告は、辺境星域の他の艦船が使用していないハイパーレーンにて、当グループテストパイロット及び観測技術スタッフと、市販の恒星間宇宙船十艘を使用して行われた試験の結果から結論づけた物である。

 と言った物であって、同時に公開された二つの映像、百分の一光速で航行する船の後方から光速の九十パーセントの速度で追突コースを進む船の映像と、速度差秒速五メートルと十二メートルで、態と接触するコースを進む映像も大きな反響を呼んだ。

 一つ目は、追い越す船、追い越される船、俯瞰から様子を観測する船の三艇から見た映像が並べられており、夫々の観測結果が違っている。という物だった。

 追い越す船の映像は、只ひたすら直進する自船の前方にいた追い越される船が、自船に進路を譲る状況の映像とレーダー観測結果が。

 追い越される船の映像は、直進する自船を、光速で避けながら追い越して行く船の様子とレーダー観測結果が。

 観測する船の映像は。後方から追い越す船が近づくと、予備動作無しで進路が変化して。安全に追い越される位置を航行し、追い越された後、元の進路へと、やはり予備動作無しで復帰する様子とレーダー映像が。

 もう一つは、速度差秒速五メートルの場合、接触して火花を散らしながら互いに弾かれる二艘の船が、速度差秒速十二メートルの場合、ぶつけようと互いに近付く様な動きを取っても一定の間隔からは消して近付かない船の映像が映っている。特にぶつけようとしても接触しない映像では、互いに近付くために側面のスラスターを全開で噴射させている様子がハッキリ記録されているし、夫々の船内では、どちらの艦でも互いに近付く方向へ進み続けているデータが記録され続けているのだ。

 此れ等の事象を持って、空間自体が移動物体の速度に応じて、又、速度差のある物体の切り分けを行っていると結論づけている。

 論文の提出を受けた連邦政府は、今後、専門の研究委員会を設けて検証確認が済むまでは、此の現象を積極的に使用する艦船の製造は待つ様にとの見解を付けて発表したのだが、その様な船を作る事が出来る企業が実験を行ったメーカー以外無い事は連邦全体で共通の認識であった。

 そして、政府が論文公表と見解の発表を行ったのも、論文作成のヒントとなるレポートを作成したまゆとキティに対して、姫野グループから謝礼として、本来の納期の半分で仕上げられ、外観の各部が変更されたペガサスⅡ号艦が納品されたのも、二人が、慰謝料として動けなくなるまで高級スイーツを堪能した日から数えて一ヶ月後の事だった。

 連邦政府の見解では、既に存在する艦船について、一切の言及が為されていない。

 そうなると、まゆとキティはペガサスⅠ号艦で、特務機関所属で同僚の、ルナ・キャット・シャリエティプスとルアン・ルアーブルのペアが修理されたペガサスⅡ号艦を貸与されて、ハイパーレーンを爆走するのが通常日課の今日この頃。

 因みに、ルアンという一見十五歳ほどの金髪碧眼のポニーテール少女。小将待遇軍属。キティの艦船操縦技術を指導した教官だったりする。キティ以上の空間把握能力を持ち、連邦随一の操艦技術を持っているのだが、キティの起こした大戦艦閉じ込め事件の当時は有休消化で行方不明だった模様。やらかしそうなのを察知して逃走していたとの噂もちらほらと聞く。技術は凄いが性格がキティを追い越しているため為、以下略…

  ルアンの相棒はルナ。大佐待遇軍属で、名前から判るとおりキティ同様シャリエティプスの生き残り。キティに遅れて数年後に保護された。発見時が五歳ほど、成長の停止がそれから21年後なので登録年齢二十六となっている。丸顔のキティに対し、面長の美人。やはり、並列思考を常時展開しており、キティの反対で冷静沈着。但し、事故は同様に起こす模様。

 第一艦隊特務機関は、新しい技術をいち早く導入活用し、キャラの尖った多数のメンバーの活躍で、今日も世間をお騒がせ…もとい、問題の即解決に尽力するのが日常なのである。

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