第3話 - 指がくっついて離れない!?
「それじゃ城山さん、どっちの手でも構わないから、OKマークを作ってもらえないかしら?」
町田さんの言葉通り、私は右手の親指と人差し指でOKマークを作る。
「今から、貴方の指がくっついて離れない催眠術を披露するわ。」
「指がくっついて……離れない……?」
「ええ、そうよ。私が貴方の親指と人指し指を、私の指で切った瞬間、指がくっついて離れなくなるわ。城山さん、今この親指と人差指は、自由に離したり出来るわよね?」
「うん、普通にくっつけたり、離したりできるよ。」
「ええ、大丈夫そうね。それじゃ、進めて行くわね。」
町田さんは、人差し指を私の目の前に出して、ゆらゆらと動かしていく。
「こうやって、私の指の動きを追ってみて頂戴。目だけで十分よ。」
町田さんの指が、あっちこっちに動く。ひとしきり動いたあと、指が私のOKマークの内側に差し込まれた。
「さて……聞くわ。私が貴方のOKマークを切った瞬間……どうなるかしら?」
「えっと……くっついて離れなくなる……。」
「そう……!貴方の指はガチッとくっつく……っ!」
一瞬の刹那、町田さんが一気に私のOKマークを切り裂いた。
直後……。
「……えっ!?な、何!?ゆ、指が、指が動かない!!」
まるで、本物の接着剤が塗られたように、私の指は全く動かなくなった。
離そうと思っても、指は私の意志に反して、ガッチリと固定されている。
「ふふ……無理に離そうと思っても、離れないのが分かるはずよ。何故ならその力は、私の意志で強くなるの。ほら、どんどん強さが2倍・3倍・4倍……!」
町田さんがそう唱えると、私の指は強力な磁石で食い付くように、指の力が強くなっていく感じがする。
「う、うそ……!!こ、こんなことってあるの!?」
目の前に、ありえない光景が広がっている。なのに私は、この光景を楽しんでいた。
これが、催眠術なの……!?
「そう……こんな不思議なことが起きるの。催眠術って、不思議でしょ。」
そういう町田さんは、ニコニコと私を見ながら、心底楽しそうにしている。
「さて、城山さん。このままだと生活に不便だから、そろそろ解きましょ。私が3つ数えた瞬間、貴方の指は自由になるわ……。3・2・1……!」
パチンッと町田さんの指がなった瞬間、私の指は何事もなかったかのように、あっけなく離れてしまった。
「……す、凄かった。」
「楽しんでくれて、私も嬉しいわ。城山さんって、中々良いリアクションしてくれるのね。」
「だ、だって、本当に指が離れなくてビックリしたんだよ!?」
「でも、だからってこっそり接着剤を塗ったわけじゃないわ。それなのに、城山さんの指が離れなくなったのは、それは城山さん自身がそう思ったから、なのよ。」
「わ、私が!?」
「そう、そしてそれを城山さんは楽しんだ。違うかしら?」
「た、確かに私、楽しかった……。」
「催眠術は、楽しむことが全てに繋がるの。覚えて頂戴。」
催眠術の片鱗を味わった私。でも、全く怖いという感覚は無かった。
むしろ、こんなに楽しいことがあったなんて、という新感覚が私の体を支配していた。
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