第134話 とよひさの水着
しまづのアイドル、美少年、男の娘と巷で評判のとよひさ!
彼がナニワ万博のトライアスロン的なものに出場するということで、しまづの社内はどよめきました。
彼がしまづ随一のアイドルである点に異論のある者はいませんでしたが、彼を見る視線はそれぞれ異なっていました。
まず、とよひさに仕えるおとよ隊の中でもいくつかの派閥がありましたが、彼が水泳をするということで俄然水着に関して論戦が始まったのです。
彼らの性癖について書いていくと、ページが幾つあっても足りないので、ここでは主張の紹介をすることにします。
1 男の娘なので、ワンピース派
2 男の娘なので、女性用競技水着派
3 貧乳はステータスなのでビキニ派
4 露出命でマイクロビキニ派
5 あくまで漢なので短パン派
6 武闘派として褌派
何しろ昨今は男女の区別に関してとても繊細な空気が漂っているうえに、おとよ隊の歪んだ性癖が絡んでくるので到底まとまるものではありませんでした。
また、とよひさは日ごろの訓練で体を鍛えているにもかかわらず、日焼けしずらい体質だったため、白く、また筋肉も目立たずすらっとした白魚のような体つきをしていました。
この事がますます水着の論戦に火を付けてしまいました。
そしてまたしても、おとよ隊の間で不毛の争いがおこり、おとよ隊の面々皆精魂尽きてしまいました。
しかし、今回の水着騒動はおとよ隊だけではなく、一般の女性や腐った性癖を持つしまづの女性たちをも巻き込んでしまいました。
いわゆる乙女フィルターが働いて、ある女性から見たとよひさはかわいい妹のように、ある女性からは弱弱しい弟のように、ある女性からは男と付き合う性癖を持つ美少年にそれぞれ見えてしまい、心を虜にしてしまいました。
こうして、騒動が大きくなることで思わぬ効果もありました。
今まで、ナニワ万博に対してしまづの民が抱いていたマイナス効果が吹っ飛んで、豊久に対する応援の気持ちに昇華していったのです。
思わぬ効果によしひろととよひさの父いえひさは喜びつつも、よしひろは「もっと早めにとよひさの件を宣伝しとくべきだったか~」と心底悔しがっていました。
さて、肝心のとよひさの水着の件、おとよ隊がまたしても壊滅したわけですが、その顛末は次回紹介します。
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