第129話 よしひろとよしひさとお酒

ナニワ万博の開催が近づく中、よしひろの奮闘は続いていました。

よしひろの味方の社員たちを叱咤激励し、ナニワ万博におけるしまづのパピリオン建設を急いでいました。


しかし、よしひろ派は残業残業また残業の厳しい日々が続いていてもはや能力的に限界に近づいていました。

としひさ派は相変わらずサボタージュをしていてとても協力する体制ではありません。


なので、残る最大派閥であるよしひさ派の説得が急務でした。

よしひさ派はとしひさ派のように表立っての反抗は少ないものの、明らかに非協力的であり、賢明に頑張る他の社員の手前、是非とも協力してほしい勢力でした。


そこで、いつもは兄であり、しまづの棟梁であるよしひさに意見をしないよしひろでしたが、一か八かの賭けに出ることにしました。

それは、酒を持って兄と対峙し、お互いの本音を語りあおうという方法でした。


よしひさは酒が弱いので、よしひろはいつも遠慮して酒を注ぐことはしないのですが、もはや手段を選んではいられないと腹を決めました。

こうして、よしひろは兄よしひさとサシで飲むよう提案しました。


このころのよしひさは、どうもうつ気味だったのか、覇気がありませんでした。

正直、弟のよしひろに会いたくないというのが本音でしたが、断る覇気すらなかったので押されるように弟の提案を受け入れました。


当然のことですが、弟であるよしひろの方が格下というのが当時のしまづの常識なので、よしひろの方がよしひさの家に向かいます。

お酒は焼酎の霧熊ではなく、しまづの県で最高の日本酒を用意しました。


もっとも、よしひさはお酒その物が苦手なので、高いお酒を喜ぶわけではありません。

でも、やはりこういう場合、格式というのがあるので他に選択肢はありませんでした。


さて、お互い緊張しつつよしひさの家で対面しました。

そして、この事がとんでもない事態を引き起こすのですが、それは次回に紹介します。


※鹿児島のお酒のというと霧島という焼酎を思い出す方もいるでしょうが、霧島ブランドは厳密には宮崎県都城市のメーカーのお酒です。

鹿児島には規模は霧島酒造に及ばないものの、幻の酒と言われる銘柄があり、一部のお酒好きには高い評価を得ています。


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