第130話 よしひさの意外な一面!

よしひろとよしひさ、一対一での面談は久しぶりの事です。

しかも今回は酒が加わってよしひろの視点ではますます、先が読めません。

よしひさは内心はどうか分かりませんが、表向きは無表情です。


よしひろが先に話をします。

「今日は最高級の酒を用意してきたので、どうぞお飲み下さい!今夜はお互い本音を語りましょう!」


こう言われてはよしひさもお酒を断るわけにはいきません。

初めはゆっくりと飲んで、よしひろの話を聞きます。


よしひろ曰く 「ナニワ万博についてしまづの割り当てが遅れています!それも全国一の遅れです!!このままではしまづの面目が立ちません!!!今からでも応援をどうかお願いします!」


「みつなりもしまづの状況をよく理解していろいろ便宜、協力してもらっています。ですが、もししまづの工期が遅れてサンサン商事の顔に泥を塗ったならしまづの名折れ、それだけでなくひでよしからの嫌がらせがあるやもしれません!」


よしひさははじめのうちは無機質な態度でよしひろの話を聞いていましたが、ひでよしの名前が出て、急に機嫌が悪くなり、酒をのむペースも急に上がってきました。

よしひろは今のしまづの苦境を思ってか、どうしても抑えきれずにこの後もしまづの社内の苦労や社員の不満などをくどくどと話していきました。


これはよしひろの悪い癖で、本人は丁寧に説明しているつもりなのですが、聞かされる方はそのくどさに参ってしまいます。

ついに、よしひさの感情が爆発します。


「くどいぞ!よしひろ!!おぬしの言わんとすることはそげんくどくど説明せんでもわかっとるわ!!だがそれでもひでよしの思うがままでは腹の虫が収まらんのじゃ!」


そして、しばらくしてから泣き出してしまいました。

沈着冷静なしまづの頭領であるよしひさがここまで取り乱す、よしひろは初めて見た光景でした。


そこまで、ひでよしが嫌いで精神が追い詰められていたとは、よしひろにとってショックでした。

この日以降、よしひろとよしひさの接触は少なくなり、よしひろはさらに兄よしひさに対して気を遣うことになります。


よしひろにとってよしひさのこの変わりようは、一時的なものなのか?それとも老いてしまった結果なのか?判別が尽きませんでした。

ただ、しまづのために兄といさかいを起こし、それが社内に広がることだけは何としても避けなければならないと固く誓ったのでした。


※史実で義久が泣いたり、サシで酒を飲んだという描写はありません。

しかし、この時期から明らかに兄弟の間で距離を取り、兄を追い詰めないように義弘が特別な配慮をしていたことは記録にあるようです。





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