第121話 偉そうに見えても実質管理職

よしひろが歩いていると、いきなりサッカーボールが飛んできました。

彼はとっさにそれを思い切り蹴り、ボールは星となって遠くへ飛んでいきました。

ガハハと笑いつつ、息子のただつねのいたずらを見逃したわけですが、このいたずらはよしひろにとっても良い作用を及ぼしていました。


何故かというと、彼は優しいので不満があってもぶつける相手がいません。

なので、とっさにボールが来て、不満のエネルギーをボールにぶつけ、少し気持ちがスッキリしたのです。


ただつねの心境はともかく、結果としては親孝行をしたというわけです。


では、よしひろの不満とは何だったのか?

それはズバリサンサン商事のひでよしから来る宿題でした。

それは部下のみつなりを通して伝えられていましたが、とにかく指示が細かいのです。


アレをやれ、これをやれ、無駄が多い、現状が把握できてない、財政が悪化してる、など、会社組織で必要なアドバイスがマシンガンのように降ってきます。


これらの指示は、ひでよしやその弟ひでなががしまづに対する圧力、もっと言えば嫌がらせの意味でしていることもありました。

しかし、言ってることそのものは正論なのでよしひろは従うしかないと腹をくくっていました。


彼の気質にあわないことも多かったですが、よしひろの基本スペックは優秀です。

彼の出来る範囲であれば彼の部署では何とかサンサン商事の指示に従うことが出来ました。


しかし、しまづはよしひろだけのものではありません。

多種多様な人材がいて、基本田舎のしまづの県出身です。

なので、都会のサンサン商事から出る指示の意味が分からない社員が続出しました。


加えて、今でも実権を握る兄のよしひさ、弟で専務だったとしひさ、どう見てもサンサン商事と相性の悪そうな野生児いえひさとその配下は一致団結してサンサン商事の指示を無視、または反発していました。


よしひろはサンサン商事の前ではしまづの代表でしたが、しまづの県に戻ればただの一役員にすぎず、しまづという会社のごく一部しか管理出来ていなかったのです。

そんな四面楚歌の中で相談が出来る相手がサンサン商事のみつなりしかいなかった!

これが当時のよしひろのおかれた苦しい立場でした。


そのよしひろに対してみつなりはどうしたのか?

それは次回ご紹介します。

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