第38話 しまづの宴会その3 よしひさの演説

最近上り調子のしまづの会社です。

会社主催の宴会も熱気があります。

まず最初は社長の挨拶なわけですが、この挨拶を用意したのは専務であり三男のとしひさです。


もちろん社長のよしひさは渡された原稿を読む以外に選択肢はありません。

では、その挨拶の内容を聞いてみましょう。


「日本のお菓子業界全体に比べ、我がしまづの売り上げは30分の1以下である。

にもかかわらず今日まで戦い抜いてこられたのは何故か?

諸君!我がしまづの企業努力が正義だからだ。これは諸君らが一番知っている。


我々の先祖は京の都を下り、辺境しまづの民となった。

そして、一握りのエリートらが全国にまで膨れ上がったお菓子のシェアを支配して50余年、

西の辺境に住む我々が自由を要求して何度踏みにじられたか。

しまづの掲げる社員一人一人の会社のための戦いを神が見捨てるはずはない。


新しい時代の覇権を選ばれた会社が得るは、歴史の必然である。

ならば、我らは襟を正し、この戦局を打開しなければならぬ。

我々は過酷なしまづの県を生活の場としながらも共に苦悩し、錬磨して今日の文化を築き上げてきた。


かつて、しまづただよしはしまづの革新はしまづの民たる我々の世代から始まると言った。

しかしながら都のモグラ共は、自分たちがお菓子の支配権を有すると増長し我々に抗戦する。


我々は今、この怒りを結集し、全国に叩きつけて、初めて真の勝利を得ることができる。

この勝利こそ、わが社で勤め上げた全ての社員への最大の慰めとなる。

社員よ立て!悲しみを怒りに変えて、立てよ!しまづの民よ!

我らしまづの民こそ選ばれた民であることを忘れないでほしいのだ。

優良種である我らこそ人類を救い得るのである。ジーク・しまづ!」


よしひさの挨拶が終わり、静寂の後、会場に大きな声がこだまします。

「ジーク・しまづ!」「ジーク・しまづ!」「ジーク・しまづ!」

会場はめっちゃ盛り上がってしまいました。


演説を行った社長のよしひさ自身がドン引きしています。

そんなことはお構いなしに会場は膨大な熱気に包まれたままです。

次回はこの熱気についてまとめて説明します。


※参照、機動戦士ガンダムの敵役であるギレン・ザビの弟ガルマ・ザビに対する追悼演説をもとにとしひさがしまづ向けに改定したのが今回の演説です。

詳しくは次回説明します。


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