第30話 しまづの休日 としひさ編

しまづ家の三男としひさ、頭のキレという点では4兄弟一と噂される切れ者です。

株式会社しまづの専務の地位にいます。

また、しまづの県の中でも有名な酒豪でもありました。


兄のよしひさが酒に弱いということで、宴会の席で兄の代わりにお酒を飲んだり、休日には兄に代わって外回りをして付き合いをこなすマメな人物です。

休日と言っても彼は休むことに興味がないので、家でゆっくりするのはまれでした。


彼はしまづ家では珍しいエリート風を吹かせられる人物でした。

脳筋のしまづが組織として曲がりなりにもまとまっているのは彼が社内をいろいろ見回っているからです。


先ほども述べた通り、彼は宴会に沢山出席して多くの酒を飲み、語りますが、超えてはいけない一線を意識していて、部下たちを常に見張っていました。

しまづの社員も普段は酒好きの脳筋ですが、彼の視線を感じると防衛本能が働き、大人しくなります。


でも、よしひさのように人間が苦手でもなく、よしひろのように羽目を外すことも少ないので、意外としまづの社内では人気と信頼がありました。

とりわけ、彼の直轄の部署では普段の彼の人柄を知っているためとても忠誠心の高い部下が多く、仕事ぶりも部署の空気も張り詰めながらも良い感じでした。


さて、珍しくとしひさが多くの休暇を取りました。

なんでも、京の都に行って歌を学びたいそうです。

社長のよしひさはそれを許可しましたが、目的はどうも違うようです。


前にいえひさが京に行き帰ってきた直後でしたので、何か狙いがあったようです。

まるで忍者かスパイのように彼は京に行き、しばらくしてから帰ってきました。

その足でよしひさと面会し、オダカンパニーとこのえ家との関係や日ノ本のお菓子業界全体の様子を調べ報告しました。


どうも、オダカンパニーが日ノ本のお菓子業界の勢力図を変え、独占するべく動く気配がある!という話でした。

休日を返上してとしひさがもたらした情報はしまづの将来に大きな影響を与えることになります。


ビジネスマンとしひさは今日も休まず働き続けています。


※島津歳久は弟の家久が京に行った後に、歌を学ぶという理由で京に上ったという話があるそうです。

でもそれは表向きの理由で、本命は京での情報収集と織田家とのパイプを強める事だったのではないかとされています。


彼に関する情報は、とある事情からわざと抹消される場合が多く資料が少ないです。

しかし、彼はとても人望があり、義久からも強い信頼と大きな責任を与えられていたことは確かなようです。


祖父の忠良(日新斎)から「始終の利害を察するの智計並びなく」という評価をされ、豊臣秀吉との戦いを最も避けようとした人物でした。

今でも地元での人望は厚く、また西郷さんをはじめ多くの幕末の薩摩藩士に尊敬される存在とされています。


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