第21話  上京裏話

しまづの使節団が帰国したころ、都のある場所で会合が開かれていました。

「しまづとオダとの会見は成功したようでおじゃるな」

「父上、そのようでございます」


公家言葉を使っているのはこのえさきひさ、そして受け答えしたのはこのえのぶただです。

なお、ここから先は面倒なので公家言葉は香りつけ程度の表現でお送りします。


「しまづはわれらの子のようなもの、オダの野蛮人やその配下の猿などの好き勝手にはさせぬわいな」

「父上とりあえずはノブナガの勘気に触れなかっただけでも上々でございましょう」


このえ家は日ノ本お菓子道連盟の会長と専務理事であり、日ノ本のお菓子界をまとめる立場にいました。

例えるなら、全国高校野球の朝〇新聞や毎〇新聞みたいなものです。


その権威は絶大でしたが、近ごろオダカンパニーがマーケットシェアをモリモリ拡大していたために何かと気苦労が絶えませんでした。


本来、全国のお菓子業界を競わせ、毎年二回、独自のルールで各お菓子会社を競わせる「全国お菓子道大会」の元締めである彼らは中立の立場でいなければならないのですが、近年あまりにもオダカンパニーが強く、発言権も強くなることでこの「全国お菓子道大会」の存在意義も問われている状況でした。


ゆえに、オダカンパニーの過度な独占を避けつつ、彼らの機嫌を損ねないように日々努力していました。

既に京の都周辺はオダカンパニーの固い勢力下にあり、このえ家も圧迫を受けていました。


そこで、元々はこのえ家に縁のある辺境のしまづの勢力にも京周辺の事情を知ってもらい、力をつけて欲しいという願いをメッセージに託してしまづ商事に伝えたのです。


もちろん、ネコにつられてしまづに過分な便宜をはかったのも事実ですが・・・。

つまり、このえ家としてはオダカンパニーに恨まれないようにしながら、彼らの力を削ぎ、バランスの取れたお菓子業界の勢力図を守りたいということでした。


そして、しまづの脳筋ではない首脳部もそのことを十分理解していて、その上で何も知らないいえひさたちを都に送り出したのでした。

そんなことも知らず、いえひさたちは修学旅行と工場見学をするような体でオダカンパニーに乗り込んだのでした。


さて、いえひさたちがしまづの県に帰ってきたようです。

次回はそこから話をスタートさせましょう。


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