第22話 いえひさたちの帰郷

いえひさたちしまづの使節が無事しまづの県に帰ってきました。

彼らが上京している間、しまづの県ではいろんな噂が飛び交っていました。

何しろ田舎なので少ない正確な情報と想像力豊かな噂話が羽のように飛び交っていました。


例えば、京にはオダという魔王がいて、気に入らない田舎もんがいると拷問して殺すとか、みつひでとかいう頭の良い腹心が田舎もんをねちねち論破して再起不能にするだのといった物騒な噂がまことしやかに流れていました。


正直、脳筋ではないしまづの首脳陣も情報が少ないのでかな~り心配はしていたようです。

それが、ある日皆元気に帰ってきたということで、しまづの県は喜びの声で大騒ぎ!

田舎独特の祭り状態になりました。


よしひさがいえひさたちに「よく帰ってきた!」と声をかければ、よしひろととしひさはいえひさたちを抱きしめたり、肩を叩いたりして喜びを表していました。

一通り、喜びを表すと、今度は宴会です。


しまづの県では何かあると宴会が催されます。

皆が酒を飲み、歌い、踊り、もてなすのが日常風景でした。

ただ、例外もあります。


しまづの偉い人にお酒をふるまおうとしたら、丁重にお断りの返事がきました。

なぜかというと、しまづ首脳陣の内、先代や先々代の主は坊さんになっているために、宗教上の理由からお酒や肉などの食べ物、また男女のアレなお付き合いなどが制限されていることもありました。


また、今の当主であるよしひさもそうですが、中にはお酒に弱い者も極少数ながら存在します。

ただ、しまづの県の住人は圧倒的にお酒好きでお酒に強い者が多いので他の地域と比べて宴会の多さは際立っていると言えるでしょう。


宴会が多いと言っても遊んでへべれけになっているわけではありません。

大事な話をするときにも宴会中の時は珍しくありません。

しまづの副社長よしひろは息子のひさやすやただつねに「宴会中と言えど酒には十分気をつけるように」とくどいくらい手紙や口頭で注意しています。


そういうわけでしまづの県の宴会は真剣勝負の場でもあります。

ただし、全員がそういうわけではなく、よしひろの忠告も空しく酒で失敗する者も多かったようです。


次回はいえひさたちが宴会の席で旅行の様子や京での様子を紹介する話をします。


※島津家の資料を扱った本の中にはやたら宴会や酒の話が多く出てきます。

今回紹介した島津義弘が息子たちにお酒について注意する内容の手紙を複数書いていたり、島津家老中の上井覚兼 (うわい かくけん)の日記でも頻繁に宴会が登場します。


また彼の日記を見ると身分の高い者だけではなく、領民や女性もお酒を飲む話は普通に紹介されているので薩摩では当たり前の風景なのかもしれません。




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