第13話 大きな流れ
「学部が同じだったし、選ぶ授業も似ていてね
一緒に行動することが多くて…食事もスタバも一緒だった
大学3年になって就職活動が始まって、やっぱり同じ会社を受けていたなあ」
父の学生時代なんて想像できないな
「同じ会社に内定したときは本当に嬉しかったよ」
俺というより、どこか遠くを見ながら続く話を聞くうちに、父がまだ生きているような錯覚に陥る
「部署は別だったが、交流はずっと続いていてね…あれは…勤め始めて2・3年ぐらいの時だったかな…突然、結婚するからって君のお母さんを紹介されたんだ」
母の若いときの写真を最近アルバムで見たが、まるで別人…全然ピンと来ない
「女性の好みも一緒だったから、隠してたって、笑いながら言われて、驚いたよ
でも、それで良かったよ…お母さん、とても素敵な人だったから、あいつの結婚相手じゃなかったら好きになっていたと思う」
父にそんな一面があったことや、母をそんな風に言ってくれることに、感謝せずにはいられなかった
「二人の結婚式のすぐあと、わたしも結婚したんだけどね」
まじか…付き合っていた人はいたんだな!笑
「わたしは家族ぐるみの付き合いを望んだんだが、あいつは余計な摩擦を避けたいと言って譲らなかったから、君もわたしのことをよく知らないよね」
「そうでもないです!父は自分には、かけがえのない親友が居るって一度だけ話してくれたことがありました…あなたのことですよね」
言葉に詰まり、黙り込んでしまったその人を、感謝の気持ちで見守りながら
自分も鼻をすすった
「すまん…なかなか割り切ることが難しくてね」
自分も悲しみと混乱から抜けられず、随分苦しんだけれど、同じような苦しみをずっと抱えていた人もいたんだと初めて知った
「思い出から抜けられなくて困っていたんだ…やっと決心がつきそうだ…君に会えたのは本当に幸運だった…ありがとう…何をしていても思ってしまう…あいつが居ればなあって、わたしも、もうそろそろ一歩を踏み出さないとね」
冷めてしまったコーヒーをゆっくり口にしてお互いに一息ついた
「すこしばかりしゃべり過ぎたね…ところで、ずっと気になっていたんだが、どうしてこんな所にいたんだい?住んでるところからは近いのかな」
今まであった、いろいろを掻い摘んで話すと、頷きながらしっかりと聞いてくれた
そして、一番聞きたかった言葉を口にした
「あの、父はどんな仕事をしていたんですか?」
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