第4話 幼馴染

中学の時、何部に入ろうか迷ったが、結局どこにも入部せずに、

帰宅部になってしまった

科学部があったら入部したかったが、あいにく入学した中学には無かったんだ

自分で部を立ち上げるだけの情熱もなかった


そういえば中学3年、高校受験が迫る夏休み前

ちょっとしたいじめにあった

最初は普通に無視されて、まあいいかって放っておいたら

どんどんエスカレートして、ペンケースが無くなったり、

トイレに閉じ込められたり、階段から突き落とされたり…

クラスメイト全員に無視される中、たった一人だけ、変わらない奴がいた

幼馴染の林葉 崇だ

普通に話したり笑ったりしていたが

やっぱり、崇までが、いじめの標的にされて、どうしていいのかわからなくなった

けど、崇のペンケースがなくなった時だった

隠した奴の胸倉をつかんで教室中に響く大声であいつが言ったんだ

「八つ当たりすんな!受験が辛いのはみんな同じだろう!」

教室は静まりかえった

俺の方をガッツリ見て

「おまえも、嫌なことは嫌だってはっきり言えよ!」

教室中を見回しながら

「無視すんな!」

ペンケースを盗んだ奴をまじかで睨んで

「それからてめー!また同じことしたら、殴るからな!」

そう言い放って、教室を出て行った

俺も反省したけど、クラスの奴らも思うところがあったみたいだ

全員からの無視はなくなったし、まあ八つ当たりが減ったって感じかな

個人を恨んでとか、そんなんじゃないんだ

どこか漠然とした不安とか、憤りとか、そういうもやもやを

どうやって発散すればいいのか、わからなくて暴走してしまったりする

そんな時期だったと思う

その後も、ちょっとした、いじめはあったが、みんなどんどん忙しくなって

それどころではなくなったんだろう

受験が、間近に迫っていた


そういえば、この前も居酒屋に誘ってくれた

報告した覚えはないから、どこかで聴きつけたんだな

心配してくれたんだ…

目の奥が熱くなる

両親が他界したときも、ずっと傍にいてくれた…

あいつ本当にいいやつなんだよな

こみ上げる何かをごまかすように

奢ってはくれないが…

また今度、一緒に飲みに行こう

今度は感謝を込めて俺から誘おう


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