南家の 光る眼

南家の お城の中




マリーンの顔を見る ミア姫の 兄 ミツキの、目が光る




「誰だ この娘は?」




「チームに引き入れた カイトの妹よ」


「どこかで 見た事あるぞ」




「大会で私に勝った 藍色チームの女の子よ」


「おーっ あの馬の上で 片足を上げた娘か」




「気に入った!


働かせるところが 決まらなければ 私の侍女 そばで家来にしてもいいぞ」




「よしてよ お兄様の侍女にしたら


周りの女が黙ってないでしょ、試合に出れなくなるわ」




「どうせ お前の 練習試合だろ 本大会には ミアが出るんだろう」




「とにかく 


お兄様は 私の領域に 入ってこないで 


戻ってよ ややこしくなるわ」




マリーンを、見ながら 残念そうに 戻っていく ミツキ






邪魔者が消えて




「妹の あなたは、洗濯の係でも、やれば良いわ 」




カイトが、不満のように


「あの妹は 絵がうまいんですよ 絵の関係の 仕事はないですか 」




「タイジさんの、地方の文芸堂で 品物を置いてもらってるんです」


「南部にも 文芸堂の本家があるわ」




「お兄さん あれ」マリーンが、指をさす


「あれって?」


また 今日は僕には 見えないやつかな と諦め気味のカイト




マリーンが あれっと 指した方向に 


「つい最近も 城 に出入りしている 文芸堂から買ったのよ」


と・貝細工を 手に取るミア姫




その貝細工に 見覚えがある、、




「掘り出し物だからって」


「掘り出し物?これがーー?」




「そうよ 大鷲の羽の一つ一つの羽まで 細かく書かれていて


この小さい貝がらの中に


ここまでの 細かい作品は あまり見ないって」




「お城の絵師も 太鼓判押してたわ」




マリーンと母リンの 共作のあの貝細工である




「その上側の貝には、鳥って文字でしょ」




「どうして知ってるの?」




「それは、マリーンが絵を書いて 僕が字の方を 担当した貝細工です」


「うそでしょ?信じられない」


まさかと思いながら




「じゃー ここに なにか 書いてみなさいよ」と紙を渡す




マリーンは、さっさと 描く手を 進める




マリーンが 何を描いてるか すぐに分かった




まさか 見えると 言っていたけれど


ここまで あの島影が見えているとは 思わなかった


 高い そびえ立つ 岩の山 


山肌の険しさまで分かるような




海面の方は 霧が立ち込めていて ぼやけ


それでも島の みどりの森が見える






今まで ミア姫も、見たことのないような 荒々しい山と 海の景色


雄大で 繊細で 幻想的な 絵である




「何よ これ、、どこの島よ?」ミア姫が 驚きながら聞く




「確か名前は か、、、み、、」神の島 誰も見えない 行ったことのない幻の島の名前




今さっきカイトが あの海岸で 誰にも見えないことを  言うと


マリーンは 変に 思われるから 


僕にだけ マリーンが 見えること 言いな




と注意を受けた、、




「か、、か、、ぜ の 島、、」




「風の島?」




「わたしが 今、名付けた島ですが」




「想像で、ここまでの、風景が描けるの」




マリーンの顔を 見直す ミア姫


いつも 城 の一流品を見て 品定めは 分かる




ため息を付いてから


「分かったわ、お城の絵師に 見てもらって


 あなたが、配属してもらえるか 聞いてあげるわ」




「よろしく おねがいします。」




「明日の午前中から 練習よ 


馬小屋に行けば 分かるようにしておく


部屋を案内してあげて」と家来に言う






前と同じような 二間続きの部屋




やっと 落ち着く2人


「水仕事なら4,5日で 我慢できないだろ?


お母さんに、いつも嫌いって、騒いでたものな」




分かってくれてるカイト


「エッへ」 と言って また お布団近づける マリーン




「明日から ここのお城での 生活始まるんだね」




クーッ




 「えっ、もう眠ったの?」


やること やったあとは 集中力 切れるんだ




無防備なマリーンの寝顔 かわいい




「ふっふつ」 マリーンの顔を 見ると 口がほころぶ




「守らなくっちゃ 僕が ここでのマリーンを」


乱れた 髪を なぜて、治す


マリーンの髪から 手が離れない カイトの手




自分の横で 安心しきって ぐっすり眠るマリーンの


おでこに キスして


マリーンの まつ毛に 自分の唇を そっと合わせる




あっ、、本当に 1本 1本 マリーンのまつ毛を 


唇の、感触で、ゆっくり 数えられそう と思う




うちの眠り姫は きっと 一度眠れば 起きないかもしれない




家のもの 誰もいなくて


 2人きりの、夜の 静かな部屋


自分の心臓の音だけ ドキリドキリと 大きく聞こえてる


脈打つ 血の熱さに


カイトは 自分の体が、止められなくなった




眠るマリーンの 耳を 猫のように 軽く気づかないように 甘噛してみた




マリーンの かわいい唇が 少し開いた気がした




その唇を 優しく 手で 触ってみた




自分の指先が、その唇の 柔らかさを 感じた




マリーンの 唇から カイトの目が離れない






もう一度 マリーンの髪を 何度も なぜるように触りながら




たとえ妹の唇でも 


きっと 僕一人の気持ちで 奪うものではない と、自制した。






カイトも眠りに 落ちた。







お布団の中で くっついて眠っている 2人




マリーンの手が カイトの首に 無意識に まとわりついてきた時


カイトの動きで 目がさめたマリーン




「二人っきりで 心細かった?」と聞いてみたカイト




「ううん 大丈夫 きっと」そっと目を あけて カイトの様子を見て


「でも、一度だけ ギュッとして良い?」マリーンが 兄に甘えた




「うん 良いよ」


マリーンが ゆっくり体を カイトに 近づけてきた


たまらず カイトは きつくマリーンの 体を 両手で抱いた




自分の胸板で マリーンの 柔らかい体を 受け止め




自分の手を、回して マリーンの 背中から 肩を 抱いた


自分の体に、マリーンが くっついて ピタリと収まってる。


自分の体と 同体のように。




マリーンは、カイトの 厚い胸板を、初めて 知った




引き締まった背中に 手を回すと やっと 自分の右手と左手が


 後ろで繋げられた やはり広い背中だなぁ 


カイトの背中の大きさを手で 計る




気がつくと


 自分の胸は、カイトの胸と、お腹まで カイトと触れ合ってる


足は、


カイトの足に くっつけても 良いかな、と様子を見て


カイトの太ももに 自分の足を ちょっと 動かして つけてみる




すぐに カイトも 足を くっつけてきて 


マリーンの足首に、カイトのふくらはぎが からんで 


両足まで しっかり 挟まれた。




もう身動き ひとつできない マリーンは、


カイトに 足先まで 全身包まれた






自分の両肩に カイトの手が届いていて


カイトの手の長さ を知る




女の自分の手の長さと 男の手の長さの違い


たくましい男の人の匂い 


自分の手で カイトを ギュッと 抱きしめてみる




それに答えて それ以上に 男の力で きつく抱きしめてきた


お互いの気持が お互いの体に 反応して、優しく 同じように 伝わる




カイトに 力を込めて 抱きしめられて 目を 閉じる マリーン


体中の力が 抜けて 


自分の体が 溶けて 無くなりそう




マリーンを溶かして 


自分の体の中に 入れて 自分と 一緒に してみたいと思うカイト




時も止まりそう




「なんだか こうしてると 安らいで もう一度 眠れそう、、」




朝の 太陽の光が 布団の中の 2人を 暖かく包む


いつまでも ずっと、このままで、いたい、、


柔らかい、夢のよう   


な、ふたりの 気持ちいい 朝




朝、、けっこう もう日が高い






「あっ、今日の朝から 練習って 言ってたっけ?」


「きやーっ やばーい」 と飛び起きる マリーン


急に 現実に戻る




バタバタする 2人




家来の人に 練習場まで 案内して もらうと




 ミア姫の、冷たい目が 光っていた。




それ以上に


 その後ろの


憎しみ 怒りが こもった 選手たちの目が


カイトとマリーンに 向けられていた。


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