浜辺の風
浜辺の家から
2人が出た 物音で カイト は目覚めていた。
どうして自分はこんな小さな物音で目が覚めてしまうのだろう
すぐ横の
小さなクロスは うさぎ小屋を手伝って深く寝ているし
その向こうに眠る
マリーンは 毎朝 体を揺すらないと 起きない家の
眠り姫だ
いつも よく眠るマリーンの顔を思い出して 口が ほころんだ
何度、揺すっても起きない マリーンが可愛い
マリーンのことを 考えると楽しいと、思うカイト
貝殻に どんな字を書こうか
大きな貝殻ならマリーンの絵と 自分の字を両方 描ける
マリーンと一緒に 一つのものを作る
共作することが なんだか嬉しい
マリーンが寝返って、顔をこちらに向けた
長いまつげが ここからでも見える
しかし 隠してあった であろう布地のことを
物怖じもしないで
母に聞き出そうとする マリーンには、呆れてしまう。
あの布地は?、、、なんだろう
2歳の時の記憶など 覚えていないカイト
朝靄の 浜辺の風は
リンとリュウはの、2人を包んでいた
リンは漂着した 岩のどこに 目印をつけようか迷っていた
リンの 右足のふくらはぎには まだ あのときの傷跡が残っているのを
リュウは愛しく見た。
リンが、リュウの横に座った
育児を離れ ゆっくりと 2人きりに なったことなどが ない
久しぶりの 二人きりの時間に、お互いに 気がついた
リュウが 横に座るリンの右足のふくらはぎの傷を
ゴツゴツした手でなぞった
「やっぱり残ってしまったね]
「ほとんど分からないわよ
毎日 薬を付けてくれたおかげよ」
「言ってもいいかな?」
「何を?」
「あの時の 薬をつけていた 君の、、足は
去年 猟で仕留めた鹿の足の、、
筋肉の ようだったんだ 」
「もう!!」とリンの、足に触れていたリュウの大きな硬い手を振り払った
「そう云うあなたの この手だって馬の前足のようよ」
と言い返した
「じゃ 私たちは 馬と、鹿かい?」
「えー 馬鹿っていうこと」
「ハハハッ 当たってるかもしれない」
「フッフッフッ ほんと 遠からずね」
と リュウに ばかねっと、優しく肩をぶつけ
横で 美しく微笑んだリン
リュウが 思わずリンの腰を 引き寄せた
「笑ってる君を 抱く方が好きだ 」と、、
浜辺の 風の中 2人は お互いの手を体に回した
「冷たくて 鹿のように硬い 筋肉質の体の君を 最初に抱いたときは、
私の体も凍りそうだった
今は、もう鹿じゃない、、」
「あなたの体は 相変わらず馬のようよ
馬を駆る姿は 見惚れるけれど」
「それだけ?」と、茶化して聞いてきた
こういう あどけないリュウも 好きだ
二人の会話を 楽しんでいる
茶化されたから 正直に、言えた
「あなたの目が好きよ」
「目?ひょっとしてまつ毛の先が
男のくせに上に カールしている所かい
クロスも この頃 似てきて クロスは君じゃなく 私 似だ」
思いも しないでできた 自分たち2人の子供
「クロスもだけれど、
あなたの目に わたしがいる のが好きなの
あなたは いつも 精一杯 私達を 幸せに、しようと考えてる
その真っ直ぐな 目が好きよ」
「君だって、
いつも一生懸命で 人の期待以上の ものを返してきてくれる
こんなに きれいな君が、、」
わたしを理解してくれてると思う
ゴツゴツしていても しなやかなリュウの手が
リンの髪をかきあげて
顔を近づけて きた
リンの頬に 涙が一筋流れた。
涙の流れた まぶたに リュウは 優しく口づけした。
リンのまぶたや まつ毛の、先まで
リュウの唇が動き
リンのまつげの先の 神経にまで リュウの優しい唇の 暖かさを感じる
ゆっくり リンのまぶたを温めて リン目からの体から 力が抜けて
耳タブを 軽くゆるく噛む
りんの目や耳を楽しむように 暖かく時間をかけてから
力の抜けきって、体が柔らかくなって
唇も甘く開ききって 我慢できなくなって もう待ちきれないでいるリンに
リュウの唇が まぶたと耳と顎を なぞってから やっと重なる
リュウは いつも焦らないで、ゆっくり リンの気持ちに接する
わたしの 体や心の 動きを 見ながら
こんなに 優しく 自分に接してくれる人が 居ることも 知らなかったリン
大切にされていることを感じ リュウの情に 感謝し 答えたいと思う
人の情に、対しても
人の期待にも それ以上のことを 返してしまう女。
人に命令されたり 指示されること
上の人に利用されて まっとうな 後ろ指さされない生活
みんなの中で、勝ち残ること それが自分の 役目だった
わたしの幸せを 考えてくれる人が 他人でいただろうか
リュウは 貴重な真っ直ぐな人 なのがわかる
この人に この浜辺で 巡り会えて、良かったと つくづく思う
リュウが 納得するように ギュッとリンを 抱きしめて
リンの涙を 手で拭ってから
「今日の大鷲は、結構 私は、本気だったのに
君に負けると思わなかった、、」
よほど 悔しかったのか リンの耳元で 深い声でつぶやいた
「フフフッ」と リュウの体の中で リンは本当に嬉しそうに 得意げに笑った
「タグの前で、、、悔しいなぁ」
「タグさんって、いつも、本当に 準備断端よね
去年も そうだけれど タグさんが 教えてくれる場所とか、
情報に間違いが ないっていうか、
思ってる以上に、すごく優秀なのに
それを表に出さないって 」
「誉ものだよね 」
「いつからの お友達なの?」
「もう、、とても長くなるよ、、彼とは、」
一瞬リュウが 遠い目をした
のを リンも見逃さなかった
もう すっかり浜辺も 朝の日差しで、明るくなっていた
「カイトが、、 タグ家のシバに背が 追い抜かれそうだよな」
っと思い出したように
リンの顔を覗き込んだ
「じゃ 羊や山羊の乳を もっとカイトに飲ませなくっちゃね」
すぐに相手の要求を 理解する リンの感の良さ
自分のほしい返事が すぐに来る心地よさ
「よろしく頼むよ わたしの 奥さん」
帰ろうとする リンを 引き止めて また抱きしめた
本当に きれいだ、、君は、、
今までに一番 情熱的に 口づけをした
いつもと 違う 激しいリュウだ
リンにもリュウの心の、情熱が伝わリ それに答えた
リュウは 1日中でも 1年中リンを 抱いていても飽きないと思う
その時その時の
リンの 自分を抱いてくれる 手の ぬくもり一つ
リュウの 背中に回す リンの 優しい手の動き
自分に 甘える仕草 リンのすべて
頭の先から つま先まで みんな覚えてる
自分の優しさを与えたら それ以上のリンの優しさが いつも返ってくる
リンを抱く暖かさ
リンを抱いて 自分に力が 湧くことも 知っている。
自分の環境に耐えられないとき、
自分の心を癒やしてくれるのは リンだ。
自分が頑張れるのは リンが そばに いるから
このままリンを いつまでも抱きしめていたい
こんなにリンが愛しい
こんなに人を愛せる自分が、、いたなんて
今が、信じられない
もう12年以上経つ
2,3年のつもりが、、10年以上
このまま迎えは、来ないのか、、
いつまで続くか わからない
今のリンとの幸せを リュウは 噛み締めた。
リンを 離したくない
カイトを育て上げたあと カイトと離れて
いつか リンのそばに 又 戻れるか
リンの言う通り
自分の目には、 いつも、リンしか写ってなくて
体にも心にも
リンしか、いないのではと思うリュウ。
お互いの 瞳の中に
愛し合う2人が はっきり 映っていた
浜辺の風が 舞った。
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