夏祭り
夏祭り
村を上げて みんな楽しみにしている
夏祭りの季節がやってきた。
大勢の人が集まる
マリーンが 一番はしゃいでいた
母が 射止めた大鷲
矢を抜き 父が傷の手当てをした
父にかかれば どんな 傷も直してしまう
そう思うマリーン
矢に射ぬかれて 死んだと思った大鷲が
少しずつ 元気になっていった
矢を抜いた 傷の膿を 手際よく拭いて薬を塗るリュウ
そんなリュウの手先が しなやかで、マリーンは好きだ
膿が 出なくなった頃から薬を塗るのはマリーンの仕事になった
大鷲は最初は 薬を塗らしてくれなかったが
何日か 経つとマリーンにも 慣れてきた
鋭かった大鷲の目つきが、徐々に落ち着いてきた
去年も 鹿を自分のミスで 柵から逃してしまい
みんなで てんやわんやの 大慌てで 捕まえた
今年も 失敗しないように マリーンの世話の 後は
カイトが ちゃんと確認する役目を、父から頼まれていた
海で 拾ってきた 大きな貝殻に
一つはリ ンから もらったウサギ
もう一つには 小さな雀の絵を 書いたマリーン
うさぎには 綺麗な母から 貰ったので 美しいという字
小さな雀には クロスを思いつくから 小さいという字を
書かされたカイト
小さな貝には 器用に穴を開けて 紐で結び 腕輪や 首輪を作った
そして 一番時間をかけて
薄く細い木で、センスの 形を作り
母の、リンに もらった あの淡い透明な生地を 張った。
リンは マリーンが使う扇子に しなさいと
扇子1枚分の 布地をくれた
小さいけれどマリーンは大喜びで
やはり よほど あの布地が 欲しかったらしい
大好きな母に もらった布地で 作った扇子
マリーンの 大のお気に入りのようだった
何度も 体の前で広げて、みんなに見せびらかした
扇子の布地がキラキラ光り、マリーンによく似合う
夏祭りの朝は 支度から大変で
去年も 鹿を入れた 檻かごに 今年は大鷲が
大きな羽を バサバサと羽ばたかせていた
檻かごは 馬の シュー カイの 2頭が引く 荷車に載せた
40分くらいかかる 村への道のりを
遊んだり はしゃいだりしてる
何をしても 楽しい歳頃 なのだろう
子供たち3人を 温かく見守る リュウとリン
「今年の 村大走り に 僕も出ても良い?」とクロスが聞いてきた
18歳以下の 男の子たちが
夏祭りの 始まるところを スタートに
神社を 通り越し 村を治める 大きな屋敷の
村長様に 1番 最初にタッチした人に
毎年 褒美が出る
村の 若い男たちの、競い合う 晴れ舞台に、なっていた
去年 カイトは2位で
その かっこいい姿や 褒美が クロスは羨ましかったようだ
「じゃ1回目は 怪我のないように 走るのよ」
とリュウの反対が なさそうなのを見て リンが、言った
「最年少かもね
だったら、、 」真剣そうなクロスの顔を見て 言葉を止めた
「だったら?何だよマリーン」
「だったら、だったら 出場するだけ、、勇気あるわよ クロス!」
「 僕、ビリにならないからな 絶対」
「ビリにならなけりゃ わたしが代わりに クロスに、なにか褒美を あげるわ」
「ほんとマリーン ほんとにだよ!」
事あるごとにマリーンに抱きついてじゃれる クロス
じゃれてる2人に カイトも 抱きついてきた
「じゃ 僕が 1番になったら 褒美は何?」
「えーっ」 と顔を見合わせる クロスとマリーン
カイトの、力は知っている 2人、
自分で一番という言葉を出したので 驚く2人
「今年は 1番になる自信が あるの?カイト兄さん!」
「でも あの ほら去年のトップの 背の高いのっぽさん すごい足幅だよ」
「村で大人も 抜いて1番 背が高いんじゃなーい」と、マリーン
「お父さんの方が高いよ!」 すかさずクロスも負けず嫌いだ
「お父さんは村の人じゃないもん 浜辺の人よ!」
好き勝手に大声で 喋る子供達
「今年は村が勝つか 浜辺が勝つか か?」クロスが 言った
「もちろん浜辺よ!」
マリーンの一声で 3人のハイタッチ
最高潮に はしゃぐ 子どもたち。
5人が、村のにぎやかな所についた。
夏祭りの
出店の 場所取りは もう始まっていた
去年と同じような場所に 馬の荷車に積んだ 大鷲の檻かごを降ろし
竹竿に 布を付けただけで天井になるのを広げた
マリーンは その下に小さな箱を おいて貝細工を並べた
大鷲は すぐに人だかりが来て
買い主が来て 値段の交渉に入った
去年の鹿もすぐ売れて、
リュウは、この夏祭りで 珍しいものを売ることで
評判が立ってるのかもしれない
少し買い主のところで 相談に行ってくるよ
荷車に大鷲を載せて、馬を引いていった
母も、なにか食べ物を買ってくると
言って 一緒に歩いていった
横に 少し遅れて タグさん一家も来て
集まって、おしゃべりをしている
みんな 大勢で集まるのは 久しぶりで 楽しんでいる
男たちは メインイベントの大走り の話題で盛り上がってそう
貝細工も ひとつふたつと売れて
お店番に 上機嫌のマリーン
扇子を広げて ゆっくり 扇いだ
「お嬢ちゃん きれいな扇子 だね」
とマリーンの前に 一人の 恰幅のやさそうな おじさんが立っていた
「えーっ でしょ」
扇子を褒められて 内心ヤッター気分
「淡いけれど黄色やピンクの色が 出るのきれいでしょ」
「本当に薄いけれど 小さい お嬢ちゃんにも その色がわかるんだね」
扇子を 得意げに見せて 店番をしている 可愛い女の子に目を細めた
「そうよ 大変な思いしてもらったんだから」
「誰に?」
「 、、、どうしてそんなこと聞くの?おじさんは。」
深い目の奥 長いまつげを、瞬きしながら
言葉を選んで聞く 女の子に、興味が湧いた
賢そうな子だ 教えても平気だろうと
「だって その めずらしい布地は、、この国のものじゃ無いよ」
「この国?この村のじゃ ないの?」
「だから 今は、とても この国じゃ 希少価値の品物だよ
おじさんも 久しぶりに見たよ
幾らだい その扇子は?」
「ざんね~ん、おじさん これ売り物じゃないの」
明るい声で 返事する
「こっちの貝細工買って」
「ホーッ、よく見ると 可愛いね
これも良く出来てるよ」
「うさぎも 雀も
お嬢ちゃんが作ったのかい? 」
「うん。」
マリーンの瞳が きらめいたのを 見てとる
「よし! わかった ここにあるの みんな買ってあげるよ
この おじさんがね。」
「きゃーっ。本当!嬉しい
初めての お店の 商売 大成功だわ!!」
はしゃぐ声に
カイトとクロスと シバが マリーンの そばに来た
「来年も ここで出すと 良いよ
おじさんが 買ってあげるから」
「この きれいな字は、このカイト兄さんが書いたのよ」
「ホーっ 」とカイトの顔と、貝殻の、字を見比べる
「この書いてある値段の 倍で買ってあげるよ」
「良いわよ この値段で」
「お嬢ちゃんは 正直者だね
じゃ これは ご褒美のお小遣いだ 」
と、余分にお金を出して
「来年も もっと品物 作っておいでよ」
と、ちょっと扇子に目をやり 名残おしそうに 去っていった
あの、おじさんの おかげで一瞬に 売れてしまった。
得意げな顔を しているところに
リュウとリンが 馬だけを引いて 戻ってきた
無事に大鷲の商談は 済んだようだ
「どのへんで、どのように捕まえたか 興味を持たれて
商談に時間が かかってしまった」 と
一刻の間に マリーンが、必死に並べていたの品物が 無いのに気がつく
「全部 売れたのよ ちょっと目利きの おじさんぽくって
来年も買ってくれるって」
興奮冷めやらないマリーンが いつもより 高い声で言った
「忙しくてマリーンの品物まで ゆっくり見てなかったが
そんなに うまくできていたかい」 とリンに聞いた
「だから 貝細工も かご作りも マリーンは器用なのよ とても」
「鹿を逃がす 困ったお嬢さんだとしか、、思い当たらないが」
父の 茶化し方に みんながクスクス笑う
上機嫌のマリーンも、父のこういう
みんなを 楽しくさせるところが 大好きだ
大走りの 時間まで お祭りの お店の見物になった。
カイト兄さんが 1番とったら 何を贈ろうかなと
目星をつけるマリーン
人が多いし、大走りに出て 息子たちは 父や母と はぐれるだろうから
はぐれても 会えなかったときは 最後には
出店の所に、来るようにと リュウが念を押した。
リンが マリーンの手を 離れないように きつく握った。
ゴールの大屋敷の周りになると みんなが集まり すごい人だかり
去年は、リュウは、クロスを肩車してたのを思い出した。
高かったから カイトの走る姿が 見れたのだ。
マリーンは それ どころでなくて
リンの体に しゃがみ ついていた だけだった
「ねぇ お父さん 今年は わたしを肩車してね」
と、父に ねだった。
ドンドンドーン と、出場者は、スタート地点に集まる太鼓が鳴った
カイトとクロスと別れ
シューには マリーンが 前で リュウと乗って
カイにはリンが 一人で乗った。
2頭の馬のおかげで 出発地点も ゴールも 見れる。
花火の合図で 30人くらいの若者たちが スタートした
カイトも いいスタートに見えたが やはり のっぽさん が目立つ
出店の人だかりの中 人を避けて 走る難しさ
去年は 多分 前を行く のっぽの、味方らしい人か、
カイトを勝たせたくない誰かに 足を 出され
何度も 邪魔をされた カイト
人に邪魔されないように 近づかないように 避けて走るカイト
いい調子だな と、カイトの走りを確認して
次は ゴールの大屋敷に馬を走らせる
リュウは、馬をつないで
ニコリとマリーンに笑って 手招きをした
「キャーッ ここから もう肩車をしてくれるの お父さん」
「商売上手な 大切なお嬢さんを 迷子にさせられないからね」
「しっかり捕まるんだよ」
「うん。お父さんの速さ知ってるから 大丈夫よ」
「馬のシューと同じくらいの 速さだもの」
父の肩に捕まり しっかり首に手を回した
「お父さんの首 シューと同じ硬さだよ」
久しぶりに 父に抱きつき嬉しい マリーン
ずーっと 一番下のクロスに、譲っていた父の背中
マリーンの気持ちが わかったのか
背負ってる片手を離して その手で マリーンの頭を 撫ぜてくれた
大屋敷の門を誰が一番最初に入るか
見渡せる場所を 人混みの中 確保して
ワーッ わーっと 歓声が起こった頃に
マリーンを肩に載せた
「見えるかい?」
「うん」
すごく高い
さっき見た のっぽさんより
クロスが言うように
浜辺でも 村でも やはり リュウが 一番背が高い
「あっ トップが 来たわ」
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