時の風
うわーっ! うわーっ! と
浜辺の家に、タグが
入ってきて
布団な中で 体を起こしてる女が、目に入り
驚いて声を上げた。
そして、女の美しい顔を 見て つばを飲み込み
うわーっ、、と、もう一度 驚きの声が出た
よく助かったなぁ、、
信じっれない
あと1時間でもあの雨の中にいたら
冷たくなって、2度と目がさめなかったよ、、
さすがリュウさん
奇跡を起こす人だなぁ
一人で喋って 一人で感心して言葉にした。
良かったな、リュウさん
助けたかいがあって
と 嫁の乳と
具の多い握り飯を出した
近所の住むタグさん
タグさんの協力が なかったら
一人じゃ助けられなかった、、
女に紹介したが
女は静かに頭を下げて
目で感謝を伝えた
まだ、ここに来て 女の声を
発したことはなく ずっと、無言のままである
体のほうが 大丈夫なら
もう、、明日からは、嫁の乳は
いらないな
声は聞こえても 二人は何も返事しなかった
まぁ みんな
訳ありだから、、
気にしないで 元気になるまで、いれば良いさね
リュウさんだって一人で
2才児 見てるしな
フッフッ
と 自分も含め 感慨深く 言葉を選んだ
えーっと
それじゃ 俺は、、
あっ そうだ
うちの嫁も、そのうち顔を出すよ
リュウさん一人だからって
来るの、遠慮していたみたいだから
又な
帰る タグを見送りがてら
家の外で
明日も できたら の乳は頼むよ と囁いた
タグとリュウは顔を見合わせた
女が 赤子の母親でないのは
様子を見れば リュウにもわかる
乳を飲ませようとしない
子供を、産んだの母親なら自然と乳は出る
子供を産んで 育てる機能は女だけについている
男は子供を育てようとしても 赤ん坊の乳は出ない
タグはリュウの肩を ぽんと、叩いて すべて了承した
風が男の 顔に当たり
くるりと家とは違う方向に歩き
馬に乗った
ヒヒーン
馬も嬉しそうに ひと泣きして
背中のリュウを迎え入れた
カイトがいて 1年8ヶ月の間 子育て優先で
ほとんど一人で馬に乗ることはなかった
思いっきり 馬と一緒に、走りを 味わう
馬と一緒に 風を切る快感
2年ぶりになる
自分の今の与えられた運命 カイトの将来
いろんな時が流れ
時の風を
感じずにいられない。
子供のカイトのことなど 何も考えなくて
よかった2年前
そして海から 助けてしまった二人のこと
また あと何ヶ月かは 赤子が 動けるようになるまでの 間のこと
そんな 考えを 振り切って
ただ馬と 一緒に 風を切り 走った。
馬に乗り一人で走り出した男を
窓から見ていた女
馬の操り方の上手さ
風の中を 見惚れるような男の走りを
遠く見えなくなるまで 見ていた。
小さな子供が、又
女の手を 握った
「僕は カイト。
なんて名前なの?
ここに いる?」
まだ舌っ足らずの 2歳の子供が必死に 尋ねてきた
今度は 女の手を 両手で 握り
静かに おねだりするように
女の手を ゆっくり 左右に振った
女の名前を どうしても知りたいのだろう
「私は、、
リン、、」
あの子は、、と赤子を指差した
「あの子は、、」
本当の名前を言うべきか迷った、、女
カイト、、、あの子は、、なんて名前が良い?
自分の名前を呼ばれて嬉しそうに、、カイトは
うーんとね
「リンと、、マ リーン、、」
「マ リーン、、 マリーン
生まれたばかりで名前が欲しかったの
マリーンと呼ぼうかしら」
カイトが嬉しそうに
女の手を ブルンブルンと大きくふった
「リンの手は とても
柔らかいね
お父さんの手と 随分違う」
ふと
リュウが自分に回していた ゴツゴツした筋肉質の手を思い出した
この子は、カイトは こんなに小さいのに
色んなことに気がつく 子供だわ、、
警戒心で、声も出なかった自分
このカイトが
自分から進んで
私達のことを 見ていて 考えて
溶いてくれた気がした
「僕たち、仲良く、、なれる?」
えっ、、2歳の子が言うことだろうか、、、
「お父さんが、海で引き返そうとしたの
止めたの 僕なんだ
僕、お父さんに 助けてと、頼んだんだ、、
だからお父さん、、ずーっと 」
「ありがとう、、本当にありがとう、、カイト」
この子が 命の恩人なんだわ、、
この賢そうな子の意志が、、私達を助けてくれた
1時間 見つけるのが遅ければ 死んでいた私達を、、
私達の 命を 救ったこの子に
自分のできることを しようと、、
女は、深く 心に決めた
馬の鳴き声が、外で聞こえた。
家のドアが開いた
女は、
「おかえりなさい」と
警戒心が溶き
顔を上げ
温かい気持ちで、男を、しっかり見て言えた。
未だ仁王立ちの男に
「リンといいます。
助けてくださって ありがとうございます。
元気になるまで、当分
お世話に、なっても いいですか。」
と 男に頭を下げた。
「行くところが 無ければ
こんなところで良ければ、、僕たちは いいよ」
カイトが喜んで男に抱きついた
そのカイトの頭をなでながら
「このカイトが、毎日心配して
君たちを 助けてって お願いされていたから」
「どうしてだか 君たちはカイトの お気に入りのようだ」
「よろしく お願いいたします。」
しっかりとした挨拶は どこで習ったのか
まだ年齢は 20 3 4位の リン と名乗る。
名前と同じ 凛とした 若い女
訳ありの 母子ではない 産まれたての赤子 マリーン
リュウと、カイト
浜辺の 小さな家に
4人の 生活が 始まった。
リンは育児のことを 何も知らなかった
男のリュウに、何もかも見て教わり
その 必死な健気さに リュウも 諦めながら 納得するしかなかった
3ヶ月後に マリーンの夜泣きが始まり 手を焼く二人
二人で子供二人の世話を、助け合いながら
タグや嫁も、時々来て、微笑ましそうに 世話を見てくれた。
夏は水遊び 秋は収穫 寒い冬には寄り添って
春には 近くで桜が咲き誇り
牛の乳を飲み 遊び
毎日鶏の卵を取りに行く カイトも お手伝い
1年が過ぎた頃には
本当の 仲の良い親子4人のような 生活に なっていった
2度めの夏に
リンのお腹が 大きくなり
リュウとの子供が
3度めの初夏に 5月に産まれた。
クロスと名付け
2歳ずつ離れた子どもたち
リュウとリンの、子育ての忙しさ
その中でも
リュウは、
カイトに文字を教え 本を読ませ
学問にも手は抜かなかった
マリーンに
クロスは、甘えっぱなし
タグの子供の
シバとエルの
5人は、
自然の中で 仲良く遊んだ
5年すぎ
父親たちの海での漁にも
船ででかけ
7年すぎ
子どもたちは、魚釣りの競争をし
遊びでも、走りでも
馬に乗ることもできるように
成長していった
10年が過ぎたとき
毎年行っていた 海辺に近い夏祭りに 興味を示し
子どもたちは、 自分たちも
遊びながら 何か出来ないかと 思うようになった
親たちに、自分たちで贈り物を しないと
マリーンが 兄のカイトたちに、声をかけた
いつも 自分達のために 働いている
大好きなカッコいい父と 自慢の綺麗な母に
ねぇ、カイト兄さん なにか あの夏祭りで
私達が 作ったもの 売らない。
長いまつげのマリーンが、じっと カイトの顔を覗いた
時々マリーンの瞳に 吸い寄せられるときが カイトにあった
いつもカイトに寄り添って、離れなかったマリーン
腕の細さや、肩の小ささ 自分の腕にマリーンの腕が絡まるとき
カイトは目をつむり 誰にも知られないように 息を整えた
カイトが、目を開けたとき
タグの息子の
シバの目が あう時がある
カイトは7月7日産まれで
わずか1日早い生まれの 7月6日産まれの、シバ
いつも二人の親たちから 1日早い カイトのお兄さん
そういう風に シバは 呼ばれていた
そんなで いつもカイトが 近所のリーダーで
サブリーダーの役目を シバが 担っていた。
二人は、飛び抜けて この周りで、目立つ存在になっていた。
背格好も 兄弟のように、似ているし
カイトは少し骨太で 骨格が、硬く 情が熱く 深そうなのに 対し
シバは 髪も茶色く すっきり顔の、イケメンである
カイトの父親のリュウが、無口で、職人型
タグが おしゃべりな融通の聞く、気の回る人間に、育てられたシバとの
差が、性格に出ているのもしれない
ねぁ カイト兄さん と、またマリーンが
いつものように、甘えてきた
それを見た シバの妹のエルが、
もう兄弟でくっつかないで と邪魔をしてきた
カイトを真ん中に
いつものことが、始まったと諦め顔のシバ
助けろよっと カイトがシバを 突っつく。
マリーンが エルに気を使って カイトの腕を離した
「わかった。 私が言い出しっぺだから
貝のネックレスや 貝細工を作る」
「手伝える人だけ手伝ってね
解散 解散」
真剣なのは自分だけだと 気がついたマリーン。
一人でもやるんだからっ
家に戻って 夏のお祭りに、なにか良い材料が無いかなと
家探しする
父も母も みんな でかけていた
小さな家で、何もないのは わかっている
家の隅に、床の木が、少し上がってるのに気がついた
もう古いのかなと 治そうとしたのに
1枚の床の木材が かたむいて取れてしまった
やばいっ 壊しちゃう
剥がれた
1枚の床の40CMの、木の下に
とても大切なように 何かが 布で
包まれている。
その布も見たことのないような 綺麗な布地
そして その綺麗な布地の中には
キラリと光る
金銀の刺繍のある、、見事な、、
ここに、隠してあったのかしら?
誰が、、
これは、私が、見てはいけないものかしら
ふっと、後ろを向くと
カイトが、心配そうにマリーンを見ていた。
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