第30話 自作ゴーレム(2)
採掘した思考石によって自作したゴーレム。
そいつは緩慢な動きでゆっくりと動き始めた。
ゴゴゴゴ……
「おお、動いたぞ!」
小柄で土管のようにずんぐりとしており、単純な目がキョロっとして俺の方を見つめている。
「ゴ?……ゴゴ??」
意識が生じたばかりだからだろうか。
何やら不思議そうに首をかしげていた。
「俺がお前の主人だぞ。わかるか?」
「ゴ?」
わかったか、わからないか微妙な感じだったが、少なくとも敵意は無いようだ。
まあ、純度を99.999%にした思考石で作られているので大丈夫だろう。
「せっかくだから名前をつけてやろう。ええと……」
俺は自作ゴーレムを前にして顎に手を当てて考える。
わかりやすいのがいいよな。
「ゴーレムだからゴーとか? あるいはレムとか?」
「ゴ……」
自作ゴーレムは低く唸る。
なんかしっくりこないようだ。
「わりと好みがうるさいんだなぁ。あとはじゃあ……小さいからチビとか?」
「ゴ、ゴ♪ ゴ♪」
チビは嬉しそうに軽く跳ねる。
それがいいのかよ。
「よし、お前の名前は『チビ』だ」
そう言って丸い頭をなでてやると、自作ゴーレムは軽く揺れて喜んだ。
◇
「よし、チビ。お前には採掘を手伝ってもらうからな」
「ゴー!」
そう言うとチビは両手を上げて元気よく答えた。
採掘を手伝ってもらうには道具が必要だ。
俺は鉄と木でつるはしを作ってチビに持たせてやる。
「ゴ? ゴゴ?」
「ほら、こうやって岩に向かって振っていくんだよ」
やり方がわからない様子なので、見本をみせてやる。
コッ……ッ…………コッ
すると、チビはたどたどしくも『鉄のつるはし』を振るいだす。
「よしよし。あとは慣れだからな。とりあえずこの区画はお前に任せるぞ」
「ゴ!」
そう頼むと、チビは力強く返事した。
とは言え、最初はほんの少しずつしか採掘できない。
まあ、あのたどたどしい手つきじゃしょうがないよな。
俺が5-B、6-A、6-Bと掘っている間、チビはまだ5-Aの10分の1も掘削できていなかった。
コッ……ポコッ……コッ
しかし、最初よりはずっと上手く掘れている。
「よしよし、その調子だぞチビ」
「ゴー♪」
時たまそう声をかけてやりながら、俺は俺で採掘を続けた。
ポコッ、ポコッ、ポコッ……
こうして俺の採掘は順調に行き、8-Bブロックまで採掘が完了する。
「主道を伸ばすか」
俺はそうつぶやいて、一番大きな
これで、区画は16-Bブロックまで延長された格好だ。
で、ちょうどその時。
「ゴー!」
チビがやってきて、両手を上げる。
どうやら5-Aの採掘が終わったようだ。
「よしよし、えらいぞ。じゃあ次は……この9-Bブロックを頼むよ」
そう言うと、チビは張り切ったようにつるはしをかかげて再び掘削についた。
ポコッ、コッ……ポコッ…コッ
見るとずいぶんと手際がよくなっている。
「飲み込みが早いんだな」
学習能力は人間以上かもしれない。
それから俺が9-A、10-A、10-Bと採掘していくと、また俺のところにチビがやってきた。
「どうした? もう終わったのか?」
しかしチビは石の首を振り、手を差し出した。
その手には鉱石が
〇ミスリル 6
「これ、お前が見つけたのか?」
チビはこくりとうなずいた。
ミスリル。
防具を作ったあと一向に見つからなかった待望の鉱石だ。
「よし! これでミスリル・ソードを作れるぞ!」
そう叫んで、俺はさっそく工作BOXを開いた。
しかし……
ちょっと待てよ。
「これだけあれば、『ミスリルのつるはし』を作ることができるな」
もちろん俺は黄金のつるはしがあるので必要ないのだけれど、チビのつるはしをミスリルにしてやったらもっと作業が進むんじゃないか?
でも、つるはしを作るのにはミスリルが3は必要だ。
するとまたミスリルソードが作れなくなってしまう。
「うーん」
俺は悩んだあげく、再び工作BOXを開く。
チチチチチ……
「……チビ。これ使ってみ?」
「ゴ?」
そして、チビへ新しいつるはしを手渡した。
そう。
結局、ミスリルは『つるはし』にしたのである。
すると案の定、剣を作るだけのミスリルは残らなくなってしまった。
あーあ、ミスリルソードはまたおあずけか……
「ゴ……ゴゴー♪」
でも、チビが『ミスリルのつるはし』を嬉しそうに振るうのを見ると、これでよかったなと思った。
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