第31話 ミニチュア鉄道


 地下採掘現場の区画化と自作ゴーレムのチビのおかげもあって、洞窟ダンジョン下部の採掘は順調に進んでいた。


 一方、第三の拠点では領民たちによって続々と製鉄が成されている。


〇鉄 578930


 鉄:700000まで達したらおおよそ第一の拠点から第三の拠点までのレールが敷ける計算。


 あとちょっとだな。


 それから、レールの上を走る機関部についてもミニチュアバージョンが完成していた。



 コトコトコト……



 庭にぐるりと敷いたミニチュアのレールに、1/10サイズの機関部がスムーズに走っている。


「わあ! なにこれ?」


「すごい動いてるよおー!」


「領主さま! これ何なんですか??」


 そこへ、領地の娘たちがやってきてそんなふうに騒ぎ始めた。


 いつもご飯をおすそわけしてくれる4人組の女の子たちである。


 俺はタバコへ火をつけながら振り返ると、「鉄道の試作だよ」と教えてやった。


「えー! この領地に鉄道ができるんですか?」


「すごーい!!」


 むやみに驚く子たちだなあと思ったが、鉄道は超最先端技術。


 旧リーネ帝国全土でも一本しか通っていないシロモノだ。


 驚くのも無理はないか。


「ゴゴゴー♪」


 ちなみに、このミニチュア鉄道の上にはチビを乗せていた。


 なかなか快適そうだ。


「チビちゃん楽しそうだね」


「いいなぁー」


 女の子たちはもの欲しそうに指をくわえて言う。


「あのサイズだと人間はちょっと無理だと思うぞ」


「「「えー……」」」


「ふふっ。本物サイズの鉄道ができたら、いくらでも乗れるさ。それまでの辛抱だよ」


 女の子たちは「そーかあ」と唇を尖らせていた。




 ところで。


 鉄道の機関部には試作段階から一つの問題があった。


 それは『石炭を燃やした蒸気で回転させるタービンの動力』を『車輪』へ伝える構造が、俺には頭に思い浮かべることができなかったということである。


 頭に思い浮かべることができなければ、工作BOXであっても作ることはできない。


 領民の中に歯車などの機械工学を専門にしていたヤツもいないし。


 結局それはうまくいかなかったんだよなぁ。


 じゃあどうして動いているのかって言うと、燃料を石炭ではなく『魔石』で代用することによって解決したのだった。


 石炭をエネルギーとすると、どうしてもタービンを回してから、その動力をシャーシへ伝えるという構造が必要になってくる。


 しかし、魔石を使えばその魔力エネルギーによって直で車輪を回すことができるのだ。


 もっとも、魔力エネルギーを『回転』のエネルギーへと変換するためには『クリスタル』を用いて魔力演算を施さなければならないが、魔法学校を首席で卒業している俺にとってはこちらの方が容易たやすく、また、クリスタルもすでに産出している。


 このような事情で、ミニチュア鉄道は完成したワケだ。


 あとはコイツのデカいのを作ればいい。



「そう言えば、材木がもっと必要だな」


 で、ここまで来て俺はそのことに気づいた。


 鉄ばかりに意識が行っていたけれども、車両やレールの枕木には材木を使うことになる。


 手持ちの木材では明らかに足りない。


 そこで俺は一日使って、第三の拠点の隣に小さな『植林場』を作った。


 要領は農業地を作ったのと同じく、まず工作BOXで土を肥度80%に編集する。


 そこへ、荒野にポツリポツリと生えている痩せた木を移植するのだ。


「うん、こんなもんだろう」


 それから第三の拠点の女性陣を集めて、木の世話をお願いすることにした。


「任せてください!」


「水やりとかをすればいいんですよね?」


 水は湖で回収したものをインベントリに残していたので、小さなため池を作り、これを利用してもらうことにする。


「ああ。あとこの肥度80%の土は雑草なんかもよく生えるから。スマンけど草取りも頼む。大変だったら製鉄組のヤロウどもを引っ張ってきてもいい」


「わかりました」


「でも、こんな荒野で緑がいっぱいになればさぞ心が洗われるでしょうね」


「……そうだな」


 俺は植林場に植えばかりの木々を見つめてそうつぶやいた。


 こいつが育ったらいよいよ鉄道を敷く。


 あの高架に沿って、第一の拠点と第三の拠点を繋ぐのだ。

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