第28話 採掘現場の区画化(2)


 一方。


 第一の拠点では人口も400人を超え、各ポジションで働く人々も増えていた。


 中でも狩猟部隊の人気は高く、総勢150名を超えている。


 なんと言っても仕事を与えてくれる上に、モンスターハウスでレベルを上げて強くなれるのだ。


 男たちにとっては魅力のある仕事であろう。


「それじゃあ、レベル6以上の人で実戦的な狩りへでかけましょう」


 その上、狩猟部隊の教育係は白パンツのようなお尻をぷりぷりさせながら厳しくビシバシ指導してくれるので、男たちは(ちょっと新たな境地を開発されながらも)高いモチベーションをもって修行に当たっていた。


「よおおし、行くぜええ!!」


「セーラ様! 見ていてください」


 みんながセーラに褒められようとして(あるいは叱られようとして)、溌剌と狩りへ出る。


 わっせ、わっせ……


 どこか不純な動機に思われるかもしれないが、事実、狩猟部隊の成長はめざましく、中にはレベル10に達する者もあった。


「みんな頑張っているわね。この土地で新しい人生を切り開こうと必死なのだわ……」


 セーラ自身は、自分のお尻が男たちのリビドーをあおっていることなどまったく理解していないので、そんなふうに思った。


「私も負けていられない。もっと強くならなくちゃ!」


 そう言ってセーラはお尻をきゅっとさせながら金の弓を引き絞り、魔物へ向かって矢を放つ。


 矢は、一矢たりとも的を外さず、次々と魔物を捉えていった。


 そう。


 こうした狩猟部隊への教育は彼女自身の強さも高めていたのである。


 そもそもこの地へ来る前はレベル78で伸び悩んでおり、一時はマスター職に退き前線を離れたこともあったが、最近の狩りによってそのレベルも83にまで上昇していた。


「みんな、怪我はない?」


「はい!」


「ビンビンしております!」


 さらに、人に教えるということは、自らの技術を一から見直すということでもある。


 セーラは自分の肉体に、レベル以上の戦闘能力の高まりを感じていた。


「シェイドのおかげね」


 そんなふうにつぶやくが、しかし、その当人は第三の拠点へ出てからもう一月も帰って来ない。


 セーラは眼鏡を正しながら青い瞳で荒野を見つめると、切なげなため息をつく。


「シェイド、いつ帰ってくるのかしら……」


 風が吹き、白アーマーに形の張りつめた乳房をぷるんと揺らした。



 ◇ ◆ ◇



 俺はダンジョン最奥のフロアを大きな立方体の空間へと掘削し終えていた。


 だが、この空間をそのまま広げていくようなやり方では危険が伴う。


 地下内部であまり空洞を大きくしてしまうと洞窟そのものが崩落してしまう可能性があるからだ。


 急に岩が降ってきて、生き埋めなんかになったらマジ怖いしな。


 そこで、このフロアの空洞を拠点として、そこから坑道を掘って区画していくことにする。


 大きな空洞をみき


 そこからブランチのように掘削していくというわけである。




【採掘現場・区画図】


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■ フロア

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 こんな感じに。


 ようするに地下迷宮ダンジョンを延長していくってイメージだな。


 ただし、採掘が目的なので“迷宮”にする必要はない。


 むしろ整理して区画したいので、坑道もそこらへんわかりやすく工夫をこらす。


 具体的に言うと道を街のようにするということだ。


 もちろん、この地下空間に街を築くというわけではないよ。


 街っていうのは、大きな道があって、そこから中くらいの道が伸びて、細い路地まで繋がっているだろ?


 だからどんなに奥にある小さな家でも『住所』ってのを振ることができる。


 坑道もそのようにするのだ。


 ポコッ、ポコッ、ポコッ……


 俺はまず、最奥のフロアから一番大きな幅の道を掘った。


 これを『主道』と名付ける。


 採掘現場を延長するときはこの道を奥に伸ばす感じにすればよい。


「とりあえずはこんな長さでいいかな」


 俺はそうつぶやいて主道の掘削を止めた。


 だいたい300歩くらいの長さである。


 そこから上図のように細い坑道、『副道』を掘っていった。


 すると、主道と副道に区切られたブロックが順々に出来上がるので、端から『1-A』『1-B』『2-A』『2-B』『3-A』……とラベリングしていく。


「よし、できた!」



【区画ブロック・位置図】

――――――――――――――――――――

 1-A  2-A  3-A  4-A  5-A……


 1-B  2-B  3-B  4-B  5-B……

――――――――――――――――――――



 位置としてはこんな感じ。


 こうして1ブロックずつ鉱石の有無を確認していくというワケだ。


「よしよし、どれくらい埋まっているかな」


 俺はそんなふうに手もみしながら、まず『1-A』から採掘を始めるのだった。

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