第12話 建て増し
モンド一家をはじめとする失職者の受け入れによって、領地にも一気に人口が増えた。
数えてみると総勢53人である。
それに伴って、まず住居をなんとかしなければならなかった。
最初に作った屋敷はそれなりに広いとは言え、この人数ではさすがに
と言うわけで第一の拠点にもっと家を建てていった。
コンコンコンコン……
城壁内の広さは100歩×100歩。
スペース的にはまだまだ余裕がある。
屋敷の回りに、予備も含めて平屋の住宅を10個。
それから、公衆浴場、ホール、事務所を次々に建てていく。
また、モンドを第一の拠点の『拠点長』に立てて、事務所で来訪者への応対を任せることにする。
第一の拠点は、隣の領地との
俺が作業に出ている間に人が来たとき、彼を中心に対応してもらって取り次ぎをこなしてもらう。
「私には過ぎた大役かと思いますが……一生懸命やらせていただきます」
「うん、よろしくね」
次に、彼らのうちから血気の盛んそうな男を10名選び、狩猟部隊を結成した。
このままでは肉の確保のためだけで、セーラがいっぱいいっぱいだからな。
もちろん彼らはまだ弱いのでレベリングしてやらなきゃだけど。
一方で、女性たちには炊事、洗濯などの家事を任せ、戦闘には従事させないことにした。
セーラのように中には戦う女性がいてもいいけど、大部分の女性は腕力の関係などで戦闘に向いていないことが多いしね。
また、全体の16名ほどはまだ子供なのでコイツらには遊んでいてもらえばいい。
なんたって、子供は遊ぶのが仕事だからな。
それから第二の拠点。
第二の拠点である『農業地』へは三家族、男女25名を“植民”することにする。
そこで農業地の回りの壁を少し拡張し、こちらにも10戸ばかし家を建てておいた。
農作業をする家族たちの『母屋』ってわけだ。
「こ、こんなところに農地があるなんて」
「バイローム地方は不毛の荒野と聞いていたけれど……」
「水もすげえ綺麗だぞ!?」
農業組25名を農業地へ連れて行くと、みんな口を開けて驚いた。
「お前たちにはここで作物を育ててもらう。肉ばっかじゃ栄養が偏るからな。よろしく頼むぜ」
俺はそう言って、唖然とする彼らへ麻袋を8つ手渡した。
芋、小麦、大豆、にんじん、キャベツ、綿花、胡椒、リンゴ……
袋にはそれらの種が詰まっている。
一袋一袋の種は少量だ。
これは帝都でそろえて来たものだけれど、カネがなかったので種の種類をそろえるので精一杯だったのである。
「はあ、しかし我々には農業の経験はありませんで……」
「大丈夫。この農地は肥度80%だからすぐに育つよ。ほら」
そう言って俺は小麦の種を
そして、数分待たせると、そこには小さな双葉がいくつかポン!ポン!っと弾けるように咲いた。
「わっ、なんだこりゃ!」
「こんなに早く芽を出すなんて……魔法みてえだ!」
と人々は驚くが、その通り魔法である。
普通、どんなに肥えた土地でも自然では肥度5%あれば上等な方。
肥度80%は『土魔法』でなければなしえない業だ。
まあ、旧リーネ帝国は『パンがなければ輸入すればいいじゃない』というスローガンで農業研究の予算も削り続けて来たから、この『肥度80%の土』も帝都の人々からは見向きもされなかったのだけど……
でも俺が、俺の領地で俺の領民に食わせるとすれば、その力はそのまま役に立ってくれるはずだ。
これだけの土ならば素人がやってもすぐに作物が収穫できて、野菜や穀物も食えるようになるだろう。
「いきなり1000歩×1000歩の農地全部使う必要はない。まずは育ったら収穫よりも種を増やすことを考えてみてくれ」
「かしこまりました」
俺はそう頼んで、また第一の拠点へ戻っていった。
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