第13話 レベリング


 第一の拠点に戻ると、まず狩猟部隊10名のレベリングの様子をうかがう。


 狩猟部隊には健康そうな男子を選んだものの、それぞれ戦闘レベルは1だからな。


 ただし、経験値回収タワーは建造者が俺である以上『罠を仕掛けた者』も俺なので、その経験値を他人へ譲渡することはできない。


 他の方法を取る必要がある。


 そこで、モンスター・ハウスをこのように一部改修して利用していたのだった。



【上空図】


※■=落とし穴


□□□□□□□□□

□モンスター  □

□   ハウス □

□□H□H□H□□

□■■■■■■■□

□■■■■■■■□

□  射撃場  □   

□□□□□□□□□



 モンスターハウスで発生したモンスターが部屋から出ると、そこは落とし穴。


 落とし穴はモンスターがダメージを受けつつも死亡してしまわない程度の高さに掘ってある。


 領民たちは射撃場で弓を持ち、穴に落ちたモンスターをそれぞれ撃っていくというシステムだ。


 ヒュン、ヒュン、ヒュン……


「もっと引き付けて! 慌てて放ってはダメよ!!」


 射撃場に来ると、狩猟部隊に選抜した10名をセーラが厳しく指導していた。


「よう、セーラ。ただいま」


「あ、シェイド! おかえりなさい」


「みんなの調子はどうだ?」


「そうね。みんなおおよそレベル6にはなってきたところよ」


「レベル6か。ずいぶん頑張ったんだな……」


 そこで、もう落とし穴を埋めてしまうことにした。


 落とし穴でのダメージがあると、罠を仕掛けた俺へ経験値が回ってしまう。


 レベル6あればHPも40はあるので攻撃を喰らっても即死ということはあるまい。


 だったら、モンスターハウスから湧きでたモンスターを直接倒す方が効率もいいしね。


「接近戦も覚えた方がいいよな。ほら、これやるよ」


 俺は工作BOXで『銅の剣』を10本作って、狩猟部隊に与えた。


「わー、剣だ!」


「カッコイイ」


「ありがとうございます。領主様!」


 剣は彼らにとても評判がよかった。


 まあ、剣でモンスターを倒すのはやっぱり男のロマンだもんね。


「じゃあ、私はこの男性ひとたちに剣を教えてから行くわ。先に帰っていて」


「そうか、頼んだよ」


 セーラに彼らの指導を任せて、俺は屋敷へ戻った。



 ◇



 屋敷に戻ると、モンドの次女であるノンノ(19)が出迎えてくれた。


「おかえりなさいませ。領主様」


 パツンと切りそろえた黒髪の前髪に、聡明そうな黒い瞳。


 白い頬に泣きホクロ。


 若いながらも父以上に落ち着いたところがあり、彼女には屋敷のメイドとしての役割を与えている。


「ただいま。留守中問題なかった?」


「……問題ございません。しかしお客様がいらっしゃいましたので」


 ノンノは抑揚のない声で答えた。


 美人だが、無表情な女性である。


「客か。失業者の受け入れについてはモンドに一任しているはずだけど、それ以外?」


「はい……。父では対応致しかねたようで、客室でお待ちいただいております」


 と言うので、俺はノンノに案内してもらい、客の対応に向かうことにした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る