告白作文

「なんていうか言葉にしにくいんだけど……あいつは好きを匂わせてくるんだ。好きでもないのに、連絡先を聞いてきたり、ボディタッチをしてきたり、アイコンタクトもそうだな。あとは他の取り巻きを使うって手も使ってる。例えば取り巻きに〇〇君のこと神楽坂さんが好きって言ってたよって言わせてその気にさせて振るとかな」俺は言う。


「なるほど、好きにさせてふる。それが君たちは気に入らない訳だ」ミウは言った。

「そうだ! そうなんだよ!」俺はミウに同意してもらったので嬉しくなって答える。


「要するにだ! あいつはハチミツをつけながら森に入るみたいなことをやってるんだ。甘い香りに誘われて虫が寄ってくる。それをあいつはキモーーいwとか被害者ヅラしてんだぞ。許せねぇよ」俺は言う。我ながらいい例えだ。


「なるほどなぁ」ナオヤは言う。


「それでどんな報復を考えてるんだね」


「どんな報復って……まぁ好きにさせてこっぴどく振るって感じだな」俺は言った。ミウはプルプルと首を振った。


「いや、あの神楽坂が人を好きになるとは思えないがな」ミウはそう言う。するとキーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴った。


「おっ! 時間だな。楽しかったぞ。ミウ。ナオヤ」俺はそう言って教室に戻った。


教室では体育教師がもう教室に来ていた。この体育教師も神楽坂の手下のような感じだった。


「よしっ! みんな席につけ! これから理事長の孫である神楽坂唯様からありがたい提案があった」体育教師は言った。この体育教師……まぁ典型的な体育会系の脳で上の立場の人間には弱く、下の立場の人間にはめっぽう強い。要するに人間のクズだった。


なぜ、こんな尊敬も出来ない人間のクズに命令されるのか分からないが……どうやら学校とはそういう場所らしい。強いやつが弱いやつを虐げて、その弱いやつが更に弱いやつ虐げる。それを延々と繰り返していく。


つまり、俺もこの教師の立場になったら生徒相手に散々ハラスメントを行える権利を得られるというわけだ。最悪だ。


「貴様らには今から作文を書いてもらう。しかし、ただの作文ではない。これは恋文だ。クラスの誰でもいい。好きな人に思いの丈を伝えろ。もちろん当学院ではLGBTにも配慮しているぞ! 男から男 女から女 への恋文もオッケーだ」体育教師は言う。


「これが配慮なのか……」クラスメートがボソボソという。

「意味不明だな……」違うクラスメートが言う。


「今なにか言ったか!」体育教師は怒鳴る。

静まり返る教室。


「当学院の理事長の娘の唯様に対する恋文に優秀なものがあったら唯様はその人間と恋人になるかも知れないとのことだ。みんな励めよ!」と体育教師が言う。


クソッ! アカハラ教師め。全部録音録画してSNSで晒してやるからな……俺はそう思いながら作文……恋文を書く。


もちろん唯宛だ。


『始めまして。神楽坂唯様。私特進科の朱雀樹と申します。単刀直入に言います。あなたのことが嫌いです! 正直僕は始めて出会ってからあなたのことが嫌いでした。なぜなら……あなたが美しすぎるから……! あなたといると自分が醜い存在のように思えて、だからあなたのことが嫌いなのです。』


よし! 書き出しはこれでオッケーだ。典型的な落として上げる文章だな。女子ってこういうのに弱いんだよな。DQNっぽいのがちょっと人助けしただけで


「あっ! あの人絶対良い人!」って言うもんな。いや、DQNはDQNよ? 君アホなの? って思うけど騙される奴は多いからな。


肉食獣がちょっと草食動物を助けただけで感謝するみたいなもんだよな。腹が減ったら速攻草食動物は食われるだけなのに。俺はそんなことを思いながら作文を続ける。


『だから苦しいのです。実は僕学校でも女の子からモテモテで……実は毎日のように告白されているのです。それでもあなたの横顔を見るたびに他の子と付き合うのが申し訳なく思って……だから今は一人なのです。あなたのことを思うと胸が苦しくなります』


よし! ここで希少性アピールな。人は誰からも求められてない人間に魅力を感じない。まぁ俺は本当に色んな女子から告白されてるからな。これを利用しない手はない。


『ですから言わせてください。僕はあなたのことが好きなのです! 好きで好きで仕方ないのです! 付き合ってください!』


よし! これで完了だ。最後はなんと言っても力押しだな。やっぱ女は強引な奴に弱いからな。俺は作文をもう一度見直して添削した。


「よしっ! 提出しろ!」体育教師が言う。俺は作文を提出した。


「これで恋文の相手に作文が届くからな。ここまでしてやらないと今の子どもたちはまともに恋愛も出来ないからな」と体育教師はそう言って教室を後にした。


「おい、お前誰宛に書いたんだよ」

「言えるわけねーだろ。お前こそ誰に書いたんだよ」

口々に学生たちで話をしている。


作文の授業が終わったあと俺たちはシシオのとこに集まっていた。

「なぁお前誰の名前かいた?」シシオがトウマに聞く。

「いや、それ俺に聞く? 言わなくていいでしょ」トウマははぐらかした。


「え? お前隠すの? 俺らの中に隠し事は無しでしょ」シシオが言う。

「じゃあ俺が先に言うからお前ら言えよ」とトウマが言う。俺たちは苦笑いした。


「俺はサクラの名前を書いた」シシオは言う。

えええええええ!!! っと俺たちはリアクションをとる。

「えっ? サクラってお前さっき殴られてたじゃん」ネズオが可笑しそうに言う。


「良いんだよ。俺は気が強い女が好きなんだ。で、ネコマルは誰の名前を書いたんだ」シシオは急にネコマルに話題を振った。


「えっ? 俺は……木苺ちゃん」とネコマルは恥ずかしそうに言った。

ええええええ!!!! っと俺も流石に驚いた。


「いや! お前さ! 全然面識ねーだろ! 話したこともねーじゃねぇか!」トウマが言う。

「いや、なんかいいなぁって思ってて」ネコマルが言う。


「いや、お前ロリコンだろ。木苺ちゃんって完全見た目小学生じゃねーか!」シシオが言う。それを聞いて俺たちは爆笑する。


「いや、ちげーってロリコンじゃねぇーって」ネコマルが言う。いつもの会話だ。

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